パソコンメーカー編

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パソコンメーカー編

■ 単価下落で各社は苦境。競争環境も激化する中、各社は「パソコンならではの利点」を訴求

IT専門調査会社であるIDC Japanによると、2012年の「国内クライアントPC出荷台数」は、対前年比で0.6パーセント減の1558万台だった。10年以降の出荷台数は1500万台を上回る水準で推移しており、一見、市場は堅調のように見える。しかし、現状は決して楽観できるものではない。

 

1つ目の懸念材料は、単価の下落だ。電子情報技術産業協会(JEITA)によると、07年度におけるパソコン1台あたりの平均価格は12万1986円。ところが、12年度には7万1758円となった。単価はわずか5年間で4割以上下がったわけで、価格競争は非常に激しい。その分、総売上額も下落しているのだ。2つ目の懸念材料が、タブレットPCやスマートフォンに市場が奪われていること。タブレットPCは、低価格で持ち運びやすい点などが受けて順調に売り上げを拡大している。そうした中、ノートパソコンからタブレットPCに乗り換えるユーザーが少なくない。3つ目の懸念材料が、中国・台湾メーカーの日本進出。レノボ(中国)、エイサー(台湾)、エイスース(台湾)といったメーカーが、低価格な商品を展開して日本市場に浸透しつつある。その結果、富士通、東芝、ソニーといった国内メーカーは厳しい戦いを強いられているのが現状だ。そして4つ目の懸念材料が、新規参入企業の登場。特に、OS(基本ソフト)の「Windows」を作っているマイクロソフトが独自開発した「Surface」に対しては、警戒する声が大きい。基本的な構造はタブレットPCだが、一部のモデルにはキーボードが付属したものもあり、ノートパソコンのように使うことが可能。国内メーカーにとって脅威となる可能性もある。

 

一方、各メーカーが期待をしているのが、Windowsを巡る動きである。まずは、01年に発表された「WindowsXP」のメーカーサポートが、14年4月に終了する予定。「WindowsXP」は多くのパソコンに組み込まれているため、大きな買い換え需要が発生する可能性があるだろう。一方、12年10月に発売された「Windows8」にも注目が必要。タッチパネルに本格対応するなど、ユーザーインターフェイスが大幅に変更され、多くの消費者を引きつけるのではないかと期待されている。ところが、スマートフォン、タブレットPCの生産が伸びて、世界的にタッチパネルの需要が急増。品薄に陥ったことで、Windows8発売直後にタッチパネル搭載パソコンの生産数は伸び悩み。その結果、現在のところは市場をけん引するほどの売れ行きは得られていない。

 

現在、パソコンはスマートフォンやタブレットPCに押されている状況だ。しかし、画像処理や動画の編集、大きなデータの計算処理といった負荷の大きな作業は、高性能なパソコンの方が向いている。そこで、家庭市場では「パソコンでしかできないこと」をいかに提案するかが、成長の鍵を握りそうだ。また、ビジネス市場への取り組みも急務。IDC Japanによると、12年における家庭向けクライアントPC市場は754万台で、対前年比で6.5パーセント減。これに対し、ビジネス市場は804万台で、対前年比5.5パーセント増と好調だった。こうした動きを受け、パナソニックがマイクロソフトと提携し、企業向けのタブレット端末を開発すると発表するなど、業務用端末の開発を急ぐ動きも目に付いている。

 

■ 押さえておこう <パソコンメーカー志望者が知っておきたいキーワード>

クライアント
コンピュータシステムの中で中心的な役割を果たすのが「サーバー」。これに対し、サーバーから提供されたサービスを利用するコンピュータを「クライアント」と呼ぶ。
タブレット端末
コンピュータ製品の一つ。平板(タブレット)型でキーボードがなく、タッチパネルによって操作する。アップル社の「iPad」が代表的な存在。
NUC
Next Unit of Computingの略。12年にインテルが公表した、マザーボード(主要な電子回路を載せた基板)の規格で、小型パソコンなどに利用が想定されている。
クラウドコンピューティング
ユーザーが手元にハードウェア・ソフトウェア・データなどを保有せず、ネットワークを経由して利用すること。単に「クラウド」と呼ばれることも多い。ネットワークを「雲」に見立てて、このように呼ばれる。

■ 要チェックニュース! <新規参入関連の話題が活発に>

・日本マイクロソフトが、米マイクロソフト開発の多機能端末「Surface RT」を日本で発売すると発表。薄型で軽いPC用のOSである「Windows RT」を搭載しており、タブレットPCだけでなくノートパソコンのようにも使える点が特徴。どの程度の人気を集めるか注目されている。(2013年3月1日)

 

・半導体商社の菱洋エレクトロが、同社初の自社ブランドパソコン(ロジテックINAソリューションズと共同開発)を発表。オフィスの狭い机でも置けるよう、幅約5センチメートル、奥行き約11センチメートル、高さ約15センチメートルという小型サイズ。(2013年3月1日)

■ つながりの深い業界 <スマートフォンとの競合がさらに激化か>

携帯電話メーカー
スマホ、タブレットPCとの競争が激化。一方、パソコンとスマホの連携も模索されている

半導体メーカー
CPUやメモリーといった部品の性能向上・小型化がパソコンの高性能化に直結する

デジタル家電
テレビ内蔵型パソコンが液晶テレビの市場を浸食。一方、タッチパネルの生産では協力も

 


■ この業界の指南役

日本総合研究所 研究員 粟田 輝氏

 

慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了。専門は経営・事業戦略、各種戦略策定・実行支援や事業性評価。幅広い業界・規模の企業を対象としている。最近では、今後さらなる発展が期待されるブラジル市場に注目し活動中。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか