「今のご時世、ミクシィとかフェイスブックやってない人の方が絶対モテますよね。見たくないですよね、そういうの」

「うん、私、好きな人がブログやってるだけでもやだ。えらそうに映画とか本の感想書いてると思っただけで鳥肌がたつ」

「そうなんですよ!だからこれは逆もまた真なりだと思ってですね、わたし絶対加瀬亮とか西島秀俊とか松田翔太のコミュニティ入るのやめようと思って! ていうか、これからは退会ですよ、退会! ソーシャルネットワークに縛られない自由な女を目指しますよ私は!」

 これは、作家・松田青子さんによる初めての単行本『スタッキング可能』に出てくるオフィスでの昼休みの女性社員の会話。一つの価値観として、こういった考え方に頷ける人も多いのではないでしょうか。

 私たちの生活のなかには、Twitter、Facebook、LINE、mixiと現在様々なSNSが存在します。朝起きて、Facebookを確認、移動中にTwitterで発信、友人とのやりとりはLINEを使って、mixiのコミュニティで情報を集める、そして、家に帰ってからまたパソコンに向かい......。

 ふと思い返してみると、私たちはかなり多くの時間をSNSに費やしていると言えます。ある一定の距離を保って利用しているなら良いですが、発信に対してのリアクションが無いことに落ち込む人も多く、なかには、SNS上の相手の行動を追いかける「ネットストーキング」に勤しむ、LINEの「既読」が不安や焦りにつながるなど、SNSの世界に依存してしまう人もいます。

 本作は、日本社会への皮肉に満ちた表題作「スタッキング可能」や「もうすぐ結婚する女」を収録した初の単行本。1979年生まれと、まだ若い世代の書き手による毒の効いた一冊です。書評家の豊崎由美さん、作家の長嶋有さん、柴崎友香さんなどが絶賛する本作を通して、この時代を少し斜めから眺めるのも良いのかもしれません。



『スタッキング可能』
 著者:松田 青子
 出版社:河出書房新社
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