ウーヴェ・ボル監督

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 映画『ハウス・オブ・ザ・デッド』、『ブラッドレイン』シリーズなどでおなじみのドイツ出身のウーヴェ・ボル監督が、新作『アサルト・オン・ウォール・ストリート(原題) / Assault on Wall Street』について語った。

 同作は、現金輸送車の警備員をしながら、がん治療後の妻を支えるジム(ドミニク・パーセル)は経済破綻の影響で、株式仲介人のアドバイスによって投資していた貯蓄を失った。そして妻の健康保険が払えなくなり、徐々に生活の全てが狂い始めた矢先、自分が金融機関に利用されていたことを知り、その復讐(ふくしゅう)を果たしに金融機関に乗り込んでいくというアクション系ドラマ作品。主演は、テレビドラマ「プリズン・ブレイク」のドミニク・パーセルが挑戦し、監督はハリウッド製作に嫌気がさして、独自のスタイルを確立しようとするウーヴェ・ボル。ウーヴェ監督の作品は、批評家の間で酷評されることが頻繁で、彼はそんな批評家とよく対立することでも有名だ。

 まず、製作経緯は「2008年のリーマンショックで、(アメリカ国内で)600〜700万人が影響を受けて、さらにそのうち4,000〜5,000人が自殺したというある統計を見たんだ。だが実際に、アメリカの映画で描かれている金融関係を題材にした映画は、映画『ウォール・ストリート』、『マージン・コール』などのように、ほとんどは株式仲介人を描いたとんでもない犯罪者ばかりだ。そこで、正直な一般の男性が金融関係によって被害にあった映画を描くことにした」と明かした。

 製作過程で、アメリカで起きた“ウォール街を占拠せよ”の影響は「ニューヨークだけでなく国内外で、個人個人のバックグラウンドに関係なく、それぞれの国で経済界や政界に対して抗議することに意味合いがあると思う。特に政府や金融機関の、リーマンショック後の政策や対応の仕方に不満を持つことが大事なんだ」と語った。

 そんな一般的な見解を持つウーヴェ監督だが、彼の作品が批評家の間でよく批判される対象となることについては「これまでさんざん批評家の間でこき下ろされてきたから、今ではそれほど傷つかないが、個人的にはいつも自分にとってベストな作品を手掛けてきたつもりだ。大概の批評家や一般の人々は、個人的な見解を持って批判するが、その批判の理由を明確にせずに批判することが多いと思う」と自身の作品の批評に関しては、落ち着いた言葉を残した。

 だが、ハリウッドには不満があるようだ。「僕がハリウッドで批判されているのは、ハリウッドのほとんどの俳優は特に教養があるわけでもなく、政治的意識も低いが、例えば有名俳優がある政治映画に関わると、その役が彼のイメージとなり、まるでその俳優が信頼の置ける人物として扱われることがあって、僕がそれを真実ではないと批判するからだ。さらに僕はハリウッドの映画人とは違った目的を持っていて、それがハリウッドの連中とは上手くいかないケースに繋がっていると思う」と語り、ハリウッド作品ではない本作でも金融機関のキャラクターを相手に武器で攻撃することはできないと製作資金の提供者から言われたそうだ。

 映画は、主人公ジムに対する金融機関の事務的で表面的な対応や、富裕層だけが救われている設定などが、興味深く描かれていて、アクションとドラマが上手く融合されている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)