知らないと落ちこぼれる入門書&プロ本【経済・経営】

重要だと思う順にピックアップした。最初の3冊は、何度も読み返すに相応しい名著だ。『資本主義と自由』は、私が大学の経済学部を受けるきっかけとなった1冊であり、今も経済評論の原稿を書く際の発想の多くをここに負っている。フリードマンの著書では、1980年代の米英政権に大きな影響を与えた『選択の自由』も著名だが、若い頃に書いた本書のほうがキレがいい。

『資本主義と自由』ミルトン・フリードマン/日経BP社
自由主義を標榜する経済学者の代表的存在である、著者の切れ味鋭い傑作。「金持ち優先の新自由主義などと非難されるが、所得再分配の仕組みも十分考察していた」。

社長が書いた経営書は、平凡な常識と本人の自慢話を組み合わせたものが大半だが、『ウィニング』は実用的という点で数少ない例外だ。経営者という種族がどれだけわがままで自己正当化が強いかが、隠すことなく表れている。単に感心するのではなく、1ページに1回は、突っ込みを入れるつもりで読んでほしい。

『ウィニング』ジャック・ウェルチ/日本経済新聞社
著者は米GE社を“世界No.1企業”に育て上げ、「20世紀最高の経営者」とも称されている。経営手法から働く人の悩みまでを網羅した実践的なアドバイスが満載。

いわゆる自己啓発の分野は、『経営者の条件』1冊を徹底して読めば十分だろう。一般に自己啓発書は、(1)強く願えば望みは叶う、(2)強みを生かせ、(3)時間をコントロールせよ、(4)アイデアを出すには無意識をうまく使え、の4つのメッセージのうちどれか1つ、あるいは複数が組み合わせてある。同書の場合は、(2)と(3)の主張が明快だ。

『経営者の条件』ピーター・F・ドラッカー/ダイヤモンド社
“経営学の創始者”の古典的名著。「著者の言うエグゼクティブの範囲は知的ビジネスマン全般に及ぶ。『強みを生かせ』『時間をコントロールせよ』というメッセージが明確」。

この3冊に次ぐ必読書が『ウォール街のランダム・ウォーカー』と『フリー』の2冊。前書は、投資について理論・歴史・実践的方法を網羅したいい入門書。結果的に同書が勧めている「インデックスファンドで長期投資」という考え方は悪くない。

『ウォール街のランダム・ウォーカー』
バートン・G・マルキール/日本経済新聞出版社
投資の理論と実践を一般向けに語ったベストセラー。投資理論もさることながら、過去のバブル期の生き生きとした描写が、欧州危機やリーマン・ショックを理解する一助に。

情報がデジタルで流通するようになったことで、ビジネスがどう変わるのか……というテーマが、90年代後半から急浮上してきた。『フリー』はその基本書だ。経済の基本は前出『資本主義と自由』で相当部分は理解できるが、ネットワークのビジネスは、新しい事例と文献で勉強しておきたい。

『フリー』クリス・アンダーソン/日本放送出版協会
基本的なサービスや製品を無料提供するビジネスモデル“フリーミアム”を提唱。ネットワーク化されたデジタルコンテンツのビジネスの最も基本的な性質が書かれた1冊。

次の5冊は、基礎として読んでおいたほうがいいものを、最後の8冊は、テーマごとに選んでみた。読者の興味の対象に合わせて、追加的に読んでみてほしい。

『マンキュー 入門経済学』N・グレゴリー・マンキュー/東洋経済新報社
経済学のテキストの中で、今一番の定番。「経済学の10大原則を冒頭に掲げる構成が秀逸。経済学部を出ていない、出ても勉強していないビジネスマンでも手軽に読める」。

『現代ファイナンス論(第2版)』ツヴィ・ボディほか/ピアソン桐原
ファイナンスの理論と実務をカバーしたテキスト。「前半が“人生を通じた資金配分”といった時間と経済価値、後半がリスク計算。数学面のハードルはそれほど高くない」。

『行動経済学』友野典男/光文社新書
過去20〜30年で急速に発展した行動経済学について、心理学的研究と経済学的な概念との関係をコンパクトにまとめた1冊。「応用可能な概念を押さえておくのに最適」。

『日常の疑問を経済学で考える』ロバート・H・フランク/日本経済新聞出版社
身近な日常の中の謎を、経済学的な発想を使って考える。「本当か? と思うものもないではないが、読み物として面白い。類書に『ヤバい経済学』(東洋経済新報社)が」。

『小倉昌男 経営学』小倉昌男/日経BP社
個人宅配という新市場を開拓したヤマト運輸元社長の経営哲学。「本当に尊敬できる日本の経営者は小倉氏ぐらいだと思う。『ウィニング』の解毒のために併読をお勧めする」

『企業・市場・法』ロナルド・H・コース/東洋経済新報社
1991年にノーベル経済学賞を受賞した米経済学者の、制度・市場・企業等についての考察。「数式なしで厳密な思考を展開。経済学的な発想に興味のある方にお勧め」。

『雇用、利子および貨幣の一般理論(上)(下)』J・M・ケインズ/岩波文庫
マクロ経済学を確立した著者の出発点であり古典。「12章だけ読むべし。投資の意思決定やマーケットについての見解が集中的に出ていて、株やFXを手掛ける人にも刺激的」。

『セイラー教授の行動経済学入門』リチャード・セイラー/ダイヤモンド社
行動経済学の黎明期の、生き生きとした論文をまとめた1冊。「本来1.5倍程度の馬券が2.5倍付く……といった、通常の経済学では説明できない現象=アノマリーを研究」。

『「ネットワーク経済」の法則』カール・シャピロほか/IDGコミュニケーションズ
ネットワーク経済についての、初の本格的な経済分析。「どこに利潤が集まり、どんな競争をしているのか、魔術の類ではないその原理を知っておくうえでのベースになる」。

『国家は破綻する』C・M・ラインハートほか/日経BP社
世界の歴史の中で起きたバブルとその崩壊、国家のデフォルトについての研究。「『破綻しないバブルなどない』ということを、膨大なデータを使って論じている」。

『上級 マクロ経済学』D・ローマー/日本評論社
理論と実証分析を合わせたマクロ経済学の教科書。「難解だが、最近のマクロ経済学がわかる。ちなみにミクロでは『ミクロ経済学』(林貴志著、ミネルヴァ書房)がお勧め」。

『サムスン式仕事の流儀』ムン・ヒョンジン/サンマーク出版
サムスン元管理職が同社の仕事の流儀を伝授。「ごますり社員・モーレツ社員になる方法。日本では教えなくなった処世術を学べるが、だいたい理解したら古本屋へ」。

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経済評論家
楽天証券経済研究所客員研究員
山崎 元

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(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元 構成=西川修一)