ものごとのポジティブな面にフォーカスする

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▼慶應義塾大学大学院特任准教授 ジョン・キムさんからのアドバイス

ネガティブな感情の萌芽を感じたら、まずその存在をきちんと意識して、自分の中に居場所をつくってやること。私は不安や怒りを感じたら、静かに目を閉じて、「いまネガティブな感情が生まれているんだね。いいよ、しばらくそこにいても」と深呼吸しながら心の中でつぶやくことにしています。すると不思議なことに、不安や怒りのほうから逃げていくのです。ネガティブな感情にとって、優しく受けいれられる環境というのは居心地が悪いものなのでしょう。

想定外の出来事に関しても、同じ気持ちで受け止めるとよいと思います。上司の気まぐれも、じつは向こう側から見ると合理的な判断なのかもしれません。合理性というものは、世界に1つだけのように見えて、じつは人の数だけ存在しています。

さらにいうと、同じ人の中でも時と場合によって無数の合理性がある。そう考えると、まずは相手の気まぐれを受け止めて理解することが先決とわかります。

「とにかく上司がおかしい」と考えるのでは、心の平穏は訪れません。

別のいい方をすると、不可抗力には逆らうなということです。想定外のものには、運命として避けられない不可抗力的なものと、自分の力で回避可能な可抗力的なものがあります。その意味で、上司の気まぐれというのは、まさしく不可抗力の1種です。

気をつけたいのは、不可抗力と可抗力の線引きは変化しうるということです。つまり、自分の統制力を磨いていけば、運命の女神に委ねる部分を減らしていくことはできます。具体的には、感情、理性、言葉、行動。これらの4つを統制する力を磨き、さらにはそれらを統合したとき、人は自信に充ち溢れた独立した存在になるのだと思います。

自分が独立した存在になれば、自分の外のものに対しても寛容になれるだけでなく、人と比べて落ち込む気持ちや、誰かとつながっていなければいけないという不安感からも自由になれます。対外的な関係で不安になるのは、価値の評価軸を自分の外に求めているからです。

いまの世の中には、ツイッターやフェイスブックのように他者とのつながりを容易にするツールが溢れています。ただ、つながりを感じると同時に、孤独を感じている人も多いのではないでしょうか。その孤独を何かで埋めようとすることを、まずはやめること。孤独とは自分と向き合うチャンスです。ある缶コーヒーの広告に「孤独とは、純度の高い自分」というコピーがありました。

自己を持たない羊の群れとしての相互依存は、心を不安定にしていきます。むしろ私たちに必要なのは、群れから離れて1人になることではないかと思います。1人になって自分と向き合い、揺るぎない軸を立てていく以外に、穏やかな心を手に入れる方法はありません。

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慶應義塾大学大学院特任准教授
ジョン・キム
1973年、韓国生まれ。日本に国費留学。英オックスフォード大学客員上席研究員、米ハーバード大学客員研究員を歴任。独自の哲学と生き方論が支持を集める。

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(図版※注:gooリサーチと本誌編集部の共同調査により、「時間とお金」に関するアンケートを、2011年11月15〜17日の期間で実施。個人年収500万円台と1500万円以上のビジネスパーソン計613人の有効回答を得た。)

(慶應義塾大学大学院特任准教授 ジョン・キム 構成=村上 敬 撮影=葛西亜理沙)