来日したケイレブ・ランドリー・ジョーンズとブランドン・クローネンバーグ監督写真/岩根愛

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2012年カンヌ映画祭ある視点部門をはじめ、各映画祭で注目を集めた「アンチヴァイラル」は、鬼才デビッド・クローネンバーグの長男ブランドン・クローネンバーグが、気鋭俳優ケイレブ・ランドリー・ジョーンズを主演に迎えた異色サスペンスだ。ふたりにとって初長編作と初主演作となったが、クローネンバーグ監督にとっては「短編から長編を作るジャンプは難しい。それができたことは特別だし、一度長編を作れば(長編作品への)扉が開く」と今後へ導く作品となった。ジョーンズも「夢が実現した作品」だと目を輝かせ、「生まれたての赤ちゃんを抱えるような、何があっても落としてはならないという緊張感があった」。大海へこぎ出したふたりが、映画に抱く理想とは?

自らを侵したウイルスを売るセレブと、物理的なつながりほしさにウイルスを体内に投与する人々。青年注射技師シド(ジョーンズ)は、とあるセレブのウイルスを注射したことから、裏社会で渦巻く陰謀にのみ込まれていく。

クローネンバーグ監督は、手を伸ばせば名匠の映画愛に触れることができる、この上ない環境で育ってきた。無意識のうちに父親の血が作品に流れ込み、「生体に切り込んでいくテクノロジーという視点」「グロテスクながら魅惑的な映像」といった特徴を継承。そこへ、現代社会がはらむセレブリティという現象をテーマとして持ち込み、奇抜な才能を開花させた。

本作では、センセーショナルなストーリーをはじめ、独創的な映像とカメラワークなどアート色が強く打ち出されている。すでに異才を放つふたりだが、思い描く理想の映画とはどのような形なのだろうか。ジョーンズは、「誠実で正直な映画」だとほほ笑む。「誠実というのはどういう意味なのか、また深い問題なんだけれどね(笑)。(映画は)見る人によってさまざまな解釈があると思うんだけど、それぞれが真実のような真心を感じられるような映画であればね。作り手の考えを正直に反映したものでなければならないと思うよ」と胸のうちを明かす。

クローネンバーグ監督は、「アーティスティックに作りたいけれど、ある程度お金がなくてはアーティスティックにできない。映画の成功というものが、中身はもちろんビジネスとしても成り立たなければならないことを考えると、アートとは公的な場で文化的な対話をディスカッションの形で実現することじゃないかと思うんだ。対話によって文化的流れが変わっていけばいいと思うけれど、残念ながらたくさんの人が触れなければディスカッションになることもない。そういう意味では、多くの人に見てほしいね。今後、どんな作品を作りたいと思うかわからないけれど、コントロールを失わなければ大きな作品も作ってみたい」と興味を示す。クローネンバーグ監督とジョーンズ、若いながら映画へ傾ける情熱は並々ならぬものがあった。

「アンチヴァイラル」は、5月25日から全国で公開。

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