[其ノ三 投信ファンダ編]中長期運用の長寿ファンドが人気
投資信託を購入するときは、中長期にわたっての保有が大前提。その基本中の基本を踏襲したファンドの残高が増加中です。


5〜6年にわたって運用されている日本株投信が活況

オプション内蔵型など新タイプの投信が次々と誕生する一方、5〜10年と中長期にわたって運用されている?長寿ファンド〞も昨年の夏以降ジワリと人気を集めています。

高分配型投信の台頭ですっかり忘れられていましたが、そもそも投信は中長期投資を前提とした金融商品です。来年1月からは日本版ISA(少額投資非課税制度)のスタートが予定されているほか、2001年10月に導入された日本版401k(確定拠出年金)のさらなる拡充にも期待が高まります。そんな中、長期にわたって安定した成績を維持するファンドが注目されるのはごく自然な流れともいえるでしょう。

昨年以降、資金流入が増えた長寿ファンドの中でも、昨年以降の「野村新興国債券投信Aコース(毎月分配型)」への流入額は突出した伸びです。これは、米ドル建て新興国債券に投資しながらも日本円でヘッジし、為替リスクを低減させるという、ミドルリスクの運用方針が見直されたためとみられます。



かつて2000年代半ばまでの新興国債券投信は、現地通貨建てではなく、「野村新興国債券投信」のような米ドル建て債券を組み入れたものが主流でした。後にブラジルなどの新興国国債が格上げされると、米ドル建てよりも高いリターンを期待できるとして現地通貨建て債券に人気がシフトしましたが、リーマン・ショック後に再び状況は一変。為替変動リスクを軽減するための為替ヘッジに注目が集まり、2010年ごろから米ドル建ての新興国債券が見直されました。「野村新興国債券投信」の人気再燃には、こうした背景があります。

また、株式に特化したタイプでは「JPMザ・ジャパン」の台頭が目立ちました。同ファンドは、通貨選択型などの仕組みを用いていない、シンプルな日本株投信です。個別企業の入念な調査分析によって銘柄を選定するというボトムアップアプローチが功を奏し、中長期にわたって良好な運用成績を収めています。足元ではアベノミクス効果による日本株人気も手伝って、短期間のうちに資金流入が加速。これにより、一時的な販売停止措置がとられました。一般的に、投信には投資先の市場規模やファンドの運用方針に応じて信託金限度額という上限が設けられています。「JPMザ・ジャパン」を運用するJPモルガン・アセットはこの4月に、1000億円だった同ファンドの信託金限度額を2000億円に引き上げ、販売を再開しました。これまで、新規設定を中心に販売停止措置がとられることはありましたが、設定から年月が経過した日本株投信の販売再開はきわめて珍しいことです。運用成績の向上とともに日本株投信の人気も高まっていることがうかがえます。

長寿ファンドは、マーケットの荒波を幾度も乗り越えて今の姿があります。分配方針や運用会社としての特徴など、過去の運用実績から参考にできる情報もたくさん詰まっているので、参考にしてみてはいかがでしょうか。





【今月の投信師匠】
篠田尚子(SHOKO SHINODA)
トムソン・ロイター・マーケッツ

慶応義塾大学法学部卒業。リッパー・ジャパンに所属するファンドアナリスト。情報量の多さと分析の鋭さは天下一品!



この記事は「WEBネットマネー2013年6月号」に掲載されたものです。