“モラトリアム法”失効/09年12月、中小企業金融円滑化法が国会を通過した際の亀井静香金融担当相(当時)。別名“亀井法”。(PANA=写真)

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おカネの流れは企業の血流だ。スムーズに、かつ絶やすことのないように、日々額に汗し続ける経営者が今、知っておいて損はないキーワード!

■中小企業金融円滑化法:失効しても、銀行の貸し出し姿勢に変化なし

中小企業の経営者たちの間で現在、関心が高いのが、中小企業金融円滑化法(中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律)が13年3月末に失効することだ。

同法は09年12月、その1年以上前に起きたリーマン・ショック後の中小企業の資金繰り悪化対策として施行された。中小企業や住宅ローンの借り手が金融機関に返済負担の軽減を申し入れた際に、できる限り貸し付け条件の変更等に応じるよう努力義務を課した時限立法である。

今現在、金融機関から返済の猶予を受けている企業経営者には、「法律がなくなったら、すぐに返済を求められるのではないか。そうなったら資金繰りがつかなくなる」という不安が強い。

また健全企業の間にも、「法律の失効で倒産が増え、銀行の自己資本比率が下がり、貸出先選別の動きが強まるのではないか」という懸念がある。

しかし実際には、銀行はこうした法律ができる以前から、経営の苦しい企業に対しては返済猶予などの申し入れに応じてきた。経営不振企業の中でも、経営改善計画書を作成し、真剣に事業再生を図っている相手については、法律が失効したからといって見捨てるようなことはしないと考えられる。

経営改善の目処が立たないまま、法律によって延命しているだけの“ゾンビ企業”については、法律失効を機に淘汰される可能性はあるが、そうした貸付先については銀行もすでに不良債権扱いとし、倒産に備えて貸倒引当金も計上している。

銀行経営に対する失効の影響はほとんどなく、銀行の貸し出し姿勢が大きく変化することもないと見られる。

■情報開示:決算書だけでは融資の可否決まらぬ

11年に発覚したオリンパス事件では、90年代のバブル崩壊で多額の損失を出したオリンパス経営陣が、20年近くにわたり粉飾決算を続けていたことが、世間から強い非難を浴びた。

法制審議会による会社法の改正作業においても、こうした問題をいかに防いでいくかという企業統治のあり方が議論の対象となった。

企業の信用を守るうえで大切なのが、不都合な事実も隠さずオープンにする、情報開示の姿勢である。これは融資にも当てはまる。

中小企業の場合、銀行から融資を断られることを恐れるあまり、本当は赤字決算なのに数字を取り繕って黒字に見せかけたり、債務超過となっている事実を隠蔽しようと、資産性のないものを資産として計上したり、といった粉飾決算を行う例が後を絶たない。

銀行員は「決算書の粉飾を見抜けるようになったら一人前」とも言われ、粉飾には慣れている。融資審査のために提出された決算書の内容は細部までチェックされ、粉飾された決算書のほとんどはそこで見抜かれて、銀行側の不信の原因となってしまう。

単年度の決算が赤字となった場合も、貸借対照表で債務超過に転落した場合も、その原因を経営者がしっかり認識し、どう対処するかという戦略を立てていれば、融資打ち切りにはつながらない。むしろ都合の悪い事実を正直に開示する姿勢に好感を持ち、それが金融面でのバックアップに結びつくことも多い。ほとんどの経営者が「融資の可否は決算書だけで決まる」と思い込んでいるが、そうではないことを知っておくべきだろう。

■ビジネス・マッチング:融資拡大を“餌”に銀行から情報引き出す

企業に顧客や取引先、あるいは売り上げにつながるような情報を紹介することをビジネス・マッチングと呼ぶ。

最近ではこれを主業務とし、有償で各種の紹介を行う企業も現れているが、金融機関にとっても、ビジネス・マッチングは収益拡大のための有力な武器となる。

銀行は、融資の利息を収入源としており、1つの企業が受ける融資の総額はおおむね、その企業の売上高に比例する。従って、銀行の融資担当者が考えるべきことは、融資先の売り上げに貢献することである。

そのためには、多数の取引先を持つ銀行の情報力を活用し、融資先に顧客となりそうな企業や、利益を生みそうな物件を紹介するといったビジネス・マッチングを行うことが効果的だ。

経営者によっては、「出店に有利な物件が出たら教えてくれ。実際に出店したら、その店関係の費用は全額、おたくから借りるから」という具合に、融資拡大をインセンティブとし、戦略的に銀行によるビジネス・マッチングを引き出しているところもある。

こうした“餌”をつけられれば、各銀行の担当者も物件情報を探しだそうと懸命になる。結果として企業は売り上げを増やせるし、銀行は融資額を増やせることになる。

ただし、つきあう銀行の規模は、自社の売上高に合わせて選ぶことだ。メガバンクの都心の支店ともなると、1人の行員が300社以上の取引先を担当するケースもあり、全社を丁寧にフォローする余裕はない。年間の売上高が10億〜20億円程度の企業であれば、新人が付くか、そもそも担当者が付かない場合も。むしろ地方銀行や信用金庫と取引するほうが、親身に相手をしてもらいやすいといえる。

■クラウド・ファンディング:広く浅く出資募るネット版『マネーの虎』

起業の世界で最近、注目されている動きがクラウド・ファンディングである。群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語だ。主にインターネットを利用して、個々が少額でも多くの人数から出資を募り、必要額を調達する仕組みだ。

11年3月の東日本大震災では、多数の「復興ファンド」が立ち上げられた。津波で設備を失った養殖業者のために1口5000円プラス寄付5000円で計1万円を募り、復興が成った暁に商品である海産物などを届ける……といったやり方である。

クラウド・ファンディングは、こうした公益性のある資金集めだけでなく、事業を立ち上げる資金を集めるときにも用いられる。起業を志す人間がネットで事業案をアピールし、賛同した参加者が「1口いくら」で資金を投ずる。起業家への投資は、従来はベンチャーキャピタルをはじめとする金融機関の仕事だった。それを多くの一般個人が担うところが画期的だ。

一般人が自身で立てた事業計画を審判員たちの前でプレゼンし、審判員たちが出資の可否を決めるという往年のTV番組『マネーの虎』が、イメージとして近いのではないか。

クラウド・ファンディングとはやや異なるが、近年の小規模ファンドの増加も目をひく。これは起業家に300万〜500万円程度の、スタートアップのための少額投資を行うファンドだ。

また、アメーバピグを運営するIT系企業サイバーエージェントなどが、ベンチャー企業の資金調達や事業提携のために企業と金融機関を集めたイベントを開催しており、こちらもベンチャー企業にとっての新しい資金調達のスタイルといえる。

■投資詐欺:好調企業の落とし穴は「本業以外」にあり

最近、世上を騒がせているものに未公開株詐欺といわれる詐欺事件がある。

消費者庁では「未公開株や社債の勧誘を巡る消費者トラブルが増加しています」と注意を喚起し、警察庁、金融庁等とともに「新たな手口による詐欺的商法に関する対策チーム」を設置した。被害者の7割は60歳以上の高齢者という。

この種の投資詐欺は、昔から絶えることがない。中小企業の経営者も、しばしばその餌食となっている。

たとえば、本業で成功している会社経営者のもとに、経営コンサルタントを名乗る身元不明の人物が現れ、「フィリピンでエビの養殖を始めるのですが、投資しませんか」といった話を持ちかけてくる。結果、億単位の金を持ち逃げされ、資金繰りに行き詰まり、本業が好調であるにもかかわらず倒産するケースも少なくない。

逆に、興信所などがこれをビジネスチャンスと捉え、「未公開株詐欺・社債詐欺の返金相談受けつけます」として、成功報酬制で相談を受けている例もある。

そもそも経営に問題のない企業が倒産するのは、本業以外に手を出した結果であることがほとんどだ。投資のほかにも、たとえば建築業の経営者が飲食店経営に手を出して失敗する――というのも、よくあるパターンだ。

最近の投資詐欺で目立つのは、フェイスブックなどのソーシャル・ネットワークを利用するものだ。会ったこともない人物が「友達リクエスト」をしてくるのである。

うっかり「承認」すると、それをきっかけに親しげに儲け話を打ち明けてくる。実名登録というフェイスブックの特徴を悪用した手法といえる。

(公認会計士 岩谷誠治、銀行取引対策コンサルタント 渕本吉貴 構成=久保田正志 写真=PANA、PIXTA、AFLO、読売新聞/AFLO=写真)