北海道日本ハムファイターズの二刀流、大谷翔平がいよいよ今日、投の刀を抜く。大谷は対東京ヤクルトスワローズ第2回戦に先発登板する。

 「二刀流・大谷」について、一部では「客寄せパンダ」と囁かれている。事実、栗山英樹ファイターズ監督が16日に大谷の先発登板を予告してから、前売り券の売り上げは急増。1日平均で1,000〜2,000枚で、球団関係者は「前日の時点で2万5,000枚以上売れている。当日券もあるので、3万人は間違いなく行く」と断言している。
 今季、平日のナイトゲームで観衆が3万人を越えるのは、本拠地開幕戦となった4月5日の対福岡ソフトバンクホークス第1回戦以来だ。

 だが、これまでの経営方針を見る限り、ファイターズが大谷を、単なる「客寄せパンダ」にしているとは思えない。

 2006〜2011年に球団社長を務め、現在はアドバイザーの藤井純一氏は、自作の著「監督・選手が変わってもなぜ強い? 北海道日本ハムファイターズの チーム戦略」(光文社新書)で、スポーツビジネスに関する持論を展開しているが、その中でスター選手に依存する経営否定している。

 たしかにスター選手がいれば、その選手見たさに、球場にファンが集まる。球場に人が集まれば、グッズや飲食物も売れる。テレビで放送される機会も増えるし、新たなスポンサーがつくかもしれない。

 だが、スター選手の獲得には、それなりのコストを要する。藤井氏は「スター選手の獲得に10億、年棒に5億かかったとすると、合計で15億円になる。この15億円は臨時支出になるので、回収すべき金額だ」「仮に15億円を試合収入で回収しようとすると、1人平均の入場料が3,000円ならば、50万人の新規入場者が必要になる」と述べている。

 もちろん、大谷はルーキーなので、獲得に15億円もの大金は不要だ。だが、藤井氏は「スター選手を獲得し、入場者数が増えても、スター選手が怪我で休んだり、他の球団に移籍してしまったら、集客は一時的なもので終わってしまう」「スポーツビジネスで大切なのは、一時的なブームによる収入増ではなく、安定的、継続的な収入だ」と続けている。

 ファイターズが「Baseball Operation System」(BOP)と呼ばれるITシステムで、チームを編成していることは有名だ。
 BOPは、自軍を含む12球団の選手ドラフトの対象になるアマチュア選手など、客観的に分析。選手の成績や将来性などを数値化することで、科学的に選手を評価している。
 このBOPで高評価を得たのが、昨年海外FA権を行使し、米サンフランシスコ・ジャイアンツとマイナー契約を結んだ田中賢介であり、読売ジャイアンツで活躍している菅野智之だ。
 またBOPの構築は2005年に始まったが、これ以降ファイターズはリーグ優勝4度日本一1度果たしている。
 藤井氏によると、このBOPでも大谷は高評価を得ている。

 もちろん、BOPで高い評価を得たからとはいえ、その選手がプロで成功するとは限らない。野球は相手があることだし、その相手は百戦錬磨のプロだ。また、選手も人間である以上、機械のようにいつも最高のパフォーマンスができるわけではない。

 はたして大谷の刀は伝家の宝刀か、それともナマクラか。お手並み拝見。