朝夕の通勤時間帯。主要道路は「KING of ROAD」のジープニーに占領される【撮影/志賀和民】

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フィリピン在住17年。元・フィリピン退職庁(PRA)ジャパンデスクで、現在は「退職者のためのなんでも相談所」を運営する志賀さんのところには、毎日たくさんの相談者が訪れる。今回は、タクシー降車時に起こしてしまった接触事故での、警官たちとの交渉トラブル。お金は払える人から請求すればいいというのが、フィリピン流のようで……。

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警官から「被害者にさっさと金を払っておしまいにしろ」と言われ……

 打ち合わせを終えて別れた直後のBさんから電話があった。エルミタのホテル前でタクシーから降りようとドアを開けたところ、後ろから来た車がドアにぶつかって、大きく傷をつけてしまった。警察に通報したところ、やってきた警官から「被害者にさっさと金を払っておしまいにしろ」と言われているという。

 私の相棒のジェーンに事情を説明した後、現場に駆けつけると、2人の警官と被害者(これもたまたま警官だった)に囲まれたBさんが、「被害者の車の修理に1万5000ペソ(約3万8000円)、タクシーの修理に1万ペソ(約2万5000円)、合計2万5000ペソ(約6万3000円)を支払え」と、よってたかって責められている。

 被害者の車にはたしかに大きな傷がある。そこでまず誰に責任があるのかを明らかにして、ポリスレポートを作成してもらい、それに基づいて後日示談で話をつけようと主張した。しかし警官たちは「そんなことをしても時間の無駄だ」ととりあわない。フィリピーノの相棒が来るからと話しても、いったいいつまで待たせる気かと、執拗に支払いを迫る。

 そうこうしているうちに、ジェーンが国家警察の幹部の旦那を伴ってやってきた。これでもう安心だ。それまで強気一辺倒だった警官が、国家警察の幹部を見たとたんに、ニコニコ顔で「なんとかお金を払ってもらえませんか」という態度に豹変した。

「乗客が不用意にドアを開けて後続車に損害を与えたのはタクシードライバーの注意義務の怠慢で、責任の大半はドライバーにある。したがって乗客に支払い義務はない」というのが話し合いの結論だった。しかし被害者の警官は、「Bさんが支払いの意志を示している」と主張した。

 Bさんとしては、パスポートで名前を控えられている以上、後でトラブルになっても困る。「ドライバーに金がないなら、この場を収めるには自分が出すしかない」という。「それならいくら支払う用意があるのか」と訊くと、1万ペソとのことだった。

 示談となるとジェーンの出番で、被害者の警官はすぐにOKした。だがそうなると、今度はタクシードライバーが黙っていない。「自分の車も傷がついたのだから俺にも払え」といって聞かない。そもそも自分の過失のはずなのだが、「Bさんが支払ったということは自分の過失を認めたのだから、タクシーの損害に対しても賠償しろ」というのだ。

 ジェーンは腹を立てて、「そんなことをいうなら1万ペソの話はなかったことにする」と、被害者の警官からお金を取り上げてしまった。

 そこで慌てたのが警官たちだ。ドライバーを逮捕したところで一銭の得にもならないし、国家警察の幹部を前でごたごたすると顔がつぶれてしまう。けっきょく、ごたくを並べるドライバーをタクシーに押し込んで黙らせ、一件落着となった。Bさんは、1万ペソでけりがついたのでほっとした様子だった。

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