内税表示で初の税率アップ/最初のアップは吸収できても、“二段目”後に同じ価格を維持できるか(写真は89年の消費税導入直後)。(PANA=写真)

写真拡大

おカネの流れは企業の血流だ。スムーズに、かつ絶やすことのないように、日々額に汗し続ける経営者が今、知っておいて損はないキーワード!

■消費増税:小売各社が再び値付け問題に直面

13年8月10日、消費増税法(消費税率引き上げ法を含む社会保障と税の一体改革に関連する法律)が、参議院本会議で可決・成立した。これで、現在5%の税率が2014年4月1日から8%に、15年10月1日から10%に、それぞれアップすることになる。

1989年の消費税導入時、97年の税率アップ時には、いずれも駆け込み需要が発生している。今回は経済への悪影響を緩和するために2段階に分けて上げられることになっており、駆け込み需要という意味ではこれまでより弱くはなりそうだが、住宅、家具など高額商品では一時的な需要増が予想される。在庫の積み増しを図って機会損失を防ぐとともに、増税後の反動減の時期に不要な在庫を抱えないよう売り切ることが大切だ。

税率アップで生じるのが、値付け問題である。

消費税は04年に外税表示(税抜き価格の表示)から内税表示(税込み価格の表示)に変わったが、ユニクロで知られるファーストリテイリングなどはあえて価格表示の変更を行わず、衣料品を中心に表示価格維持=実質5%の価格ダウンという流れが生まれた。

今回は内税表示が義務づけられてから初めての消費税率アップとなる。内閣府や公正取引委員会では、税率変更に従って価格を変更することを奨励しているが、実際にどのように値付けをするかは経営判断だ。

3%程度の税率アップであれば、現行価格を維持する小売企業も多いと見られるが、2段目の増税でも同じ価格を維持できるかどうかは不明だ。各企業がどのような価格戦略を採るかが注目されている。

■相続税の課税対象拡大:不動産ビジネスの追い風になりそう

「税と社会保障の一体改革」では、相続税見直しが予定されている。

相続税ではこれまで「5000万円+1000万円×法定相続人」の基礎控除が認められていたが、これを「3000万円+600万円×法定相続人」に大きく減額。また相続税の最高税率は50%から55%に引き上げられ、さらに死亡保険金の非課税対象も縮小されることとされていた。これにより、相続時の課税対象は一気に増えることになる。

実際には、一体改革じたいが先送りされてしまったものの、今後、相続税が増税される方向で改定されることは、既定路線と言っていい。

相続対策は、税理士やファイナンシャル・プランナーなどさまざまな業種で重要なビジネスとなっているが、この相続税見直しにより、一層の活発化が予想される。

典型的な相続対策が不動産取得である。現金は全額が相続税の対象となるが、不動産価格の計算には路線価が用いられ、実勢の取引価格より低めの評価となる。更地よりも賃貸住宅などの建物が立っていると、相続税評価額としてはさらに低くなるため、借金をして自宅をビルやアパートに建て替えるという相続対策が、バブル期の都心部などで広く行われた。

一方で不動産以外の金融資産がほとんどない状態で相続税が課税されると、納税資金を工面するために、不動産が売却されることが多くなる。課税対象が増えるほど、売買される土地も増えるわけで、不動産ビジネスにはどちらの意味でも追い風となりそうだ。

■収益認識基準の変更:売上高の算出法変更で企業の「格」が大変動

世界各国の会計基準の統一をめざす国際財務報告基準(IFRS)は、すでに多くの国で導入されている。

米国での導入が遅れていることもあって、日本でも本格導入が当初の予定よりも遅れ気味となっているが、個々の会計基準については順次、IFRSに合わせて改定(コンバージェンス)されつつある。

その一環として「収益認識の基準の変更」が検討中であり、13年に新会計基準が公表されることになった。

新基準で従来と大きく変わるのが、売上高の計算方法の変更だ。

たとえば、商社が商品を仕入れて転売するとき、現行基準では転売した商品の総額がそのまま売上高となっている。しかし新基準では、右から左に転売するような場合は代理人(エージェント)的活動とみなして、総売上高ではなく手数料相当分、すなわち売上額から仕入額を差し引いた金額を、売上高として計上する。さらに売上高には、間接税相当分は含めない。

この計算方法だと、商社はもちろん、委託販売が中心の百貨店の売上高なども激減してしまう。12年3月期の決算報告で、先行してIFRS新基準を導入した日本たばこ産業(JT)では、旧基準では6兆8000億円あった連結売上高が、2兆円強にまで減っている。これは売り上げの大部分を占めるたばこの売上高のうち、販売価格の6割を占めるたばこ税相当分が計算外となったことによる。

利益の計算には変更はないものの、売上高は企業の社会的評価の1つの基準になっており、いわば企業としての「格」が大変動するわけで、その影響は小さくない。

■グリーン投資税制の改正:先行業者だけ得をする10カ月の限定措置

太陽光発電や風力発電由来の電力を固定価格で買い取ることを定めた再生可能エネルギー特別措置法が成立した。

意外に知られていないのが、同法成立と同時に、再生可能エネルギーへの投資を税制面で優遇する、いわゆるグリーン投資減税が改正されたことだ。

この新グリーン投資減税の内容は驚くべきものだ。中小企業者に限り、設備取得価額の7%分の税額が控除されるとともに、期間中に太陽光発電および風力発電の設備を取得した事業者に対し、設備投資の全額を即時、償却対象とすることを認めたのだ。

仮に、本業の年間利益が1億円の企業が1億円の太陽光発電システムを購入して発電ビジネスに参入すれば、利益は計算上ゼロとされ、法人税を払う必要がなくなってしまう。

そうやって償却を済ませたうえで、購入した太陽光発電システムで発電した電気を固定額で売れば、その分がまるまる儲けになるのだ。

もう1つの驚きは、この新制度が「12年5月29日から13年3月31日まで」という、わずか10カ月の期間限定措置であることだ。ソーラー発電所の建設にはまず土地の手当てが必要だが、ここまで短いと、制度の恩恵に与れるのは、現時点でその手当てを終えている企業に限られてしまう。

このような期限を設ければ、発電事業に参入計画を持っていた企業は10カ月の間に一斉に設備の購入に走り、製造メーカーは供給が間に合わない事態に陥りかねない。得をするのは先行していた一部の発電業者のみ、息長く発電設備をつくり続けねばならない関連メーカーにとっては迷惑千万という、実に不可思議な新制度なのである。

■ノマドの増加:新規開業者の4人に1人が「50歳以上」

専用のオフィスを持たない、あるいは他の事業者と共有する個人の小規模事業者、いわゆるノマドが増えている。

ノマドを始める契機は、勤めていた会社を辞めて事業を始める場合と、本業とは別にサイドビジネスとして行っている場合の2つがある。統計数字上にはっきりと表れたわけではないが、シェアオフィスの需要が伸びていることが、その増加の証左となろう。

ノマドの典型例は、新古書店で書籍を仕入れ、アマゾンやヤフーのオークションで転売する、あるいはスマートフォン用のアプリの製作、オンラインゲーム用の有料アイテムの転売といったインターネット関連ビジネスだ。クラウド・コンピューティングの普及によってサーバーを自前で購入する必要がなくなり、初期投資のハードルが劇的に下がったことも含めて、起業環境が大きく変わりつつあることがノマドの増加を後押ししている。

ネット関連以外でも、主婦やシニア層など、これまではあまり見られなかった新しいタイプの起業家が増えている。日本政策金融公庫の調査(11年8月)によると、新規開業者に占める50歳以上の人の比率は、91年度には9人に1人にすぎなかったが、10年には4人に1人に達したという。

主婦や単身女性が、女性ならではの視点を活かして起業するケースも目立つ。そうした事例の1つに、駅に貼られている「乗り換え便利マップ」を開発したナビットがある。創業者の福井泰代氏が、駅でベビーカーを引きながら考えついたものとされている。

今後は、こうした小規模事業者を狙った新しいビジネスやサービスも生まれてきそうだ。シェアオフィスのほか、たとえば確定申告のための簡便な申告スキームの提供なども考えられる。

(公認会計士 岩谷誠治、銀行取引対策コンサルタント 渕本吉貴 構成=久保田正志 写真=PANA、PIXTA)