ユニクロの柳井正氏の「年収100万円も仕方ない」との発言が波紋を呼んでいます。

 批判の多くは「若者を低賃金で働かせようとしている」というものですが、朝日新聞(4月23日朝刊)に掲載されたインタビューを読むとこれは誤解で、「グローバル化で富が二極化していく以上、仕事を通じて付加価値がつけられないと途上国の労働者と同じ賃金で働くことになる」という、ごく当たり前のことを述べているだけです。同じ話を経済学者や評論家がしても誰もなんとも思わないでしょうから、この反発は発言の内容というより、柳井氏個人に向けられたものに違いありません。

 柳井氏への批判は、記事でも書かれているように、ユニクロが「ブラック企業」で、新卒社員のおよそ半分が3年以内に退社していくということにあるようです。「休職している人のうち42%がうつ病などの精神疾患で、これは店舗勤務の正社員の3%にあたる」とのデータはたしかに衝撃的です。

 しかしこれだけで、ユニクロを典型的な「ブラック」と決めつけることはできません。ほとんどのブラック企業は居酒屋チェーンのようなドメスティックな事業を行なっているのに対して、ユニクロは日本を代表するグローバル企業だからです。

 日本的な雇用慣行では、正社員の解雇が厳しく制限される一方で、社員は会社の理不尽な命令にも服従しなければなりません。「生活の面倒を見てもらっている以上、わがままが許されないのは当たり前」というのが、労働紛争における日本の裁判所の判断です。ブラック企業は、「なにがなんでも正社員になりたい」という若者の願望を利用して、サービス残業などの“奴隷労働”を強要しながら社員を使い捨てることで、アルバイトを最低賃金で雇うよりはるかに安い人件費コストを実現しています(これが“激安居酒屋”が成立する秘密です)。

 それに対してユニクロの成功の要因は、中国の安い労働力を活用して高品質の衣料品を安価に大量に供給したことで、日本の労働者を搾取したからではありません。社員の離職率が高いのは低賃金が理由というより、柳井氏も認めるように、社員に対する要求水準が高いために大半が脱落してしまうからでしょう。この激しい競争に勝ち抜けば「年収1億円」というのですから、リスクとリターンが見合っているといえなくもありません。

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