お金のこと、きちんと聞けますか、言えますか?(写真はイメージです)

写真拡大

2時間ドラマなんかでは、スクープを嗅ぎまわり、挙句、殺されて山中に埋められたりしがちな「フリーライター」。
実際には事件やスクープを追うフリーランスのライターは、ごくわずかしかいないし、一部の羽振りの良い美容ライターや医療系ライターを除くと、小さな仕事を、地道に、かなりの数こなしている人が圧倒的多数だと思う。
それは地味ながら、幸せな生き方だとも思う。
だが、もし「フリーランスのライターになりたい」と親しい友人や身内が言ったら、勧めない人も多いだろう。特に注意が必要なのは、「お金」にまつわる問題だ。

出版社の場合は、雑誌や書籍が出た翌月、翌々月末などにギャラが振り込まれることが多いため、「お金が入るまで時間がかかる」ことは比較的知られているが、その他に、同業者からよく聞く注意点をご紹介したい。

●「金額」は提示されない場合も多い
○広告系やウェブ系の仕事の場合は、単価を事前に提示され、請求書を発行する場合が多いが、出版社の場合は「金額を詳らかにしない」というヘンな風習がある。
「振り込まれて初めて金額がわかることもけっこうある。その場合、合計額から頁単価を計算してみるしかない」
○明細を発行しない会社もけっこうある。
「同じ出版社内の複数媒体で仕事していたり、同じ雑誌内の複数企画を手掛けていたりすると、どれがいくらかわからず、場合によっては忘れられている仕事もあったりする」

●ときには立て替えた経費のほうが、ギャラよりも高くなる
○「遠方取材の場合、ケチな会社だったり、担当編集者の気がきかなかったりすると、飛行機代や新幹線代、宿泊代などを立て替えさせられることもある。カメラマン分も立て替えさせられたときには、立て替え額が合計10万円にもなって、振り込まれたギャラそのものは2万円だった。しかも、催促するまでギャラも経費精算も忘れられていた……」
○「経費が支払われるのは本や冊子が出た翌月、翌々月だったりすることも。遠方取材が複数件あると、20万〜30万円もの金額を2〜3カ月間立て替えていることもある」

●ルーズな編集者がよく使う「雑用頼んで良い?」「色をつけておく」というフレーズには、注意が必要。
○「打ち合わせに行ったとき、関係ない雑用を頼まれ、データの加工を延々とやらされた。1週間くらいかかる仕事だったが、その後、4カ月経っても何の振り込みもない。金額も聞いていなかったので、確認してみたら、仕事をしたこと自体忘れられていた」
○「マイナー誌なのに、どう考えてもムリそうな大御所タレントばかりをインタビュー候補に挙げてくる編集者。片っ端からかなりの人数に取材依頼をさせられ、すべて断られ、結局、企画自体がボツに。『今回はごめんね。次の仕事で(ギャラに)色つけておくから』と言われたが、どこに何の色がついたか全くわからない」

●振り込み遅れが続いたら、いよいよ注意。
「連載していた月刊誌。振り込みのスパンが1カ月から1カ月半、さらに2カ月に、3カ月に……と、毎月少しずつ遅れていた。定期的に催促はしていたが、全く振り込まれるわけではないので大丈夫だと思っていたら、倒産。10カ月分、計100万円以上を踏み倒された」

ちなみに、上記のようなトラブルは、けっこう「どこにでもある話」だ。
日本人の場合、なぜか「お金の話をする」ことを「みっともない」とか「格好悪い」「失礼なんじゃないか」と思う人が多いが、「プロ」だからこそ、お金の話はきちんとできないといけないと思う。
また、「お金の話をすると、嫌がられて、次の仕事がこないんじゃないか」と不安に思う人もいるが、そんなことで避けるような編集者であれば、付き合わないほうが無難だとも思う。
もちろんそれ以前に、締め切りを厳守することは、「プロ」として当たり前であり、それができないフリーのライターも少なからずいるわけではあるけれど……。
(山田山子)