住宅ローンという“巨額の借金”を背負う人にとって、金利の上昇が家計を圧迫することは言うまでもない。そもそもアベノミクスによるローン減税策や、黒田バズーカと呼ばれる日銀による大幅な金融緩和は、企業や家計がお金を借りやすくする経済再生のカンフル剤だったはず。

 ところが、大手銀行が適用する5月の住宅ローン金利は、政府や日銀の意に反して、一斉に0.050ポイント引き上げられて1.400%になった。どうして住宅ローン金利は上がったのか。

「銀行は住宅ローンの固定金利を10年物国債の金利に連動する形で決めている。日銀は金融緩和で自ら国債を買い集め、品薄→値段上昇→金利低下というシナリオを描いていたのだが、値上がりを期待して売り抜ける大口投資家が大量に出たため、逆に値段は下がって金利上昇を招いてしまった」(全国紙・経済部記者)

 このまま住宅ローン金利が上昇傾向をたどれば、消費税増税前にマイホームを持ちたいと考えていた人たちの購入意欲もしぼんでしまう。購入前にじっくり家計と相談できるなら、まだいい。0.875%など超低金利の「変動型」ローンを組んで返済中の人にとっては、半年に一度金利が見直されるため、上昇し続ければ借金が膨れ上がることになる。

 とある大手銀行のローン担当者は「急いで変動から固定に借り換えたいという相談が後を絶たない」と話す。事実、住宅金融支援機構の調査によると、昨年まで半数を超えていた変動金利型の利用者が、今年に入ってから半数以下に減少。代わって、金利は高いがリスクが少ない3年、10年など「固定期間選択型」が増えている。

「変動」か「固定」か――。金利上昇の局面で必ず議論の的になってきた選択肢。もちろん、将来のレートは誰にも予測できないが、ひとつ参考指標になるのが物価の上昇率である。住宅ジャーナリストの山下和之氏がいう。

「過去の長期金利と物価上昇率の関係をみると、バブル期からその後の“失われた10年”を含めて、長期金利は物価上昇率を上回る水準で推移してきました。いま、政府・日銀は物価上昇率の目標を2%としているので、例えば5年後に金利が2%以上に上がっても何ら不思議はありません」

 山下氏がこの推測をもとに、「変動金利型」の返済シミュレーションをしてくれた(借入額3000万円の例、35年元利均等・ボーナス返済なしの場合)。

■当初5年間(0.875%)/8万2949円(毎月)/497万6940円(5年間)
■5年後に1%上昇の場合/9万5412円(毎月)/572万4720円(5年間)
■5年後に2%上昇の場合/10万8932円(毎月)/653万5920円(5年間)

 中には、1、2%程度の上昇で右往左往する必要はないという人もいるかもしれない。確かに毎月の返済額は1万円ずつの上乗せだが、たった5年でその金額は100万円に迫る差となっていく。一般のサラリーマンならひと財産であろう。そこまでリスクを被りたくないなら、やはり固定型を選ぶべきなのか。

「例えば、固定期間選択型(10年/1.40%)の場合、当初10年間の毎月返済額は9万392円になります。つまり、5年間に1%程度までの上昇であれば、変動金利型のほうが有利になります。それ以上に上がる可能性があるとみる人なら、早めに10年固定を利用したほうが安心でしょう」(山下氏)

 これからマイホームを購入する予定がある人には、「フラット35」など全期間固定金利型の選択肢も賢明だろう。金利の乱高下に振り回されることなく最長35年間返済額は同じだ。ちなみに5月の金利は1.81%、毎月の返済額は9万6478円。さらに、省エネ・耐震性に優れた住宅購入者の借入金額を一定期間引き下げる「フラット35S」を利用すれば、当初10年間は1.51%で済む。

 ただ、金利上昇リスクは返済期間によっても異なることを忘れてはならない。

「返済期間を短くできれば変動にせよ固定にせよ返済額増額のリスクは小さくなります。30年、35年などの長期返済なら全期間固定金利型を、20年程度にできるなら10年固定、10年程度で完済できるなら変動金利型を選択するのがいいでしょう」(山下氏)

 振り返れば、1990年代前半のバブル期の長期金利は7%台で、民間金融機関の住宅ローン金利も7、8%に達していた。あの頃の急騰は考えにくいとはいえ、金利の大幅な上昇はローン破綻にもつながる。金融機関や不動産会社の都合のいい売り文句に騙されず、自己責任で賢い住宅ローン選びをしたい。