医薬品メーカー編

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医薬品メーカー編

■ 外資系企業との競争が激化。他社との共同開発や開発業務の外注などで創薬の効率化・加速を図る

厚生労働省の「薬事工業生産動態統計調査」によると、2011年における国内の医薬品生産金額は、対前年比で3.1パーセント増の6兆9874億円。これは、アメリカに次ぐ世界第2位の市場規模だ。そして、02年(6兆1448億円)に比べると13.7パーセント増。高齢化による医療費拡大などが寄与し、生産高は右肩上がりの傾向を示している。ただし、政府は増え続ける医療費を抑えるために薬価のマイナス改定を行っており、医薬品業界にとっては成長の足かせとなっている。また、ファイザー(アメリカ)、ノバルティス(スイス)といった外資系企業が、日本における投資進出を強化。国内市場での競争は激しくなる一方だ。なお、医師の処方箋が必要な「医療用医薬品」の生産割合は年々上がっており、市場の9割程度を占める。一方、ドラッグストアや薬局などで処方箋なしで売られる「一般用医薬品(大衆薬、OTC薬とも呼ばれる)」の比率は1割程度だ。

 

ここ数年、各メーカーは相次いで主力商品の特許切れを迎えている(いわゆる「2010年問題」)。そこで、各社は売り上げ減を防ぐために、効果的で副作用の少ない新薬を生み出そうと懸命だ。ところが、1つの新薬を開発するには、数百億円規模の研究開発費と、安全性試験や審査なども含めて10年以上の開発期間が必要。年5兆円前後の売り上げを誇るファイザーやノバルティスに比べ、武田薬品工業(12年3月期連結売り上げ1兆5089億円)をはじめとする国内メーカーは資金力に劣っており、開発面で先を越されているのが現状だ。また、近年ではメディカルニーズが充足しつつあり、画期的な新薬を開発しづらい構造にある。

 

こうした状況に対応し、各社は開発の効率化やコスト削減に向けた取り組みを進めている。例えば、12年11月、中外製薬と日本製薬は、「非ホジキンリンパ腫」の治療薬を共同開発・共同販売する契約を締結。このように、複数社で共同開発や併売を行ってリスクを抑える試みは、今後増えていきそうだ。また、開発業務の一部をCRO、CMO(ともに下記キーワード記事参照)に委託し、コスト削減・品質向上を図るケースも目立っている。

 

国際競争力の強化も重要な課題。すでに大手メーカーの大半は、海外での売上比率が4割を超えている状況だが、円安基調を追い風に、今後はさらにグローバル化が進むだろう。

 

そこでクローズアップされているのが、新薬を発売する際に、国・地域ごとに生じる「ドラッグ・ラグ」の解消だ。ICHレギュレーション(日米欧3極医薬品規制調和国際会議が定めた、医薬品申請の国際的な統一化を目指す規約)により、新薬承認審査の基準が国際的に統一された。そのため、世界各地で同時並行的に新薬開発を進め、素早くグローバル展開できるよう各社は努力を重ねている。

 

業界再編の動きは一段落。05年に第一三共(三共と第一製薬が合併)、アステラス製薬(山之内製薬と藤沢薬品工業が合併)、大日本住友製薬(大日本製薬が住友製薬を吸収合併)が、07年には田辺三菱製薬(田辺製薬と三菱ウェルファーマが合併)が誕生したが、以降は国内で大規模な業界再編は起きていない。ただし、海外企業を買収する動きは引き続き活発。11年、武田薬品工業が欧州や新興国での販路拡大を目指し、スイス製薬大手のナイコメッドを約1兆円で買収したのは、大きな話題を呼んだ。また、受託製造やマーケティングなどの機能を持つ海外企業を買収するケースも、依然として多い。

 

■ 押さえておこう <医薬品メーカー志望者が知っておきたいキーワード>

2010年問題
1990年以降に市場に投入された大型医薬品(ブロックバスターと呼ばれる)が、2010年前後、相次いで特許切れを迎えたことを指す。安価な後発医薬品に売り上げを奪われてしまうため、各医薬品メーカーの収益に大きな影響を及ぼす。
後発医薬品
ジェネリック医薬品、ゾロ薬とも呼ばれる。特許期間が終了した医薬品を、他社が製造・販売するもの。研究開発費がかからないため、一般の医薬品より3〜8割程度安い。日本政府は医療費抑制を目指して積極的に普及を進めている。
アンメットメディカルニーズ
Unmet Medical Needs。有効な治療法が確立されていない医療ニーズのこと。例えば、ガン、関節リウマチなどの免疫疾患、アルツハイマー病といった神経系の難病などが該当する。新薬の開発に成功すれば、大きな利益が期待できる。
CRO
Contract Research Organizationの略。医薬品の開発業務を医薬品メーカーから受託する「医薬品開発業務受託機関」のこと。開発業務をサポートするアウトソーシングサービスとして、存在価値が高まりつつある。
CMO
Contract Manufacturing Organizationの略。治験(医薬品の承認を得るために行う臨床試験)で使用される治験薬を製造する「医薬品製造受託機関」を指す。医薬品ごとに適切なCMOを利用することで、コスト削減・品質向上などが見込める。

■ 要チェックニュース! <海外企業の買収に注目しよう>

・味の素が、アメリカのバイオ医薬品開発・製造受託会社のアルテア・テクノロジーズを買収すると発表。
バイオ医薬品の製造に必要な技術を持つアルテア社を傘下に収めることで、バイオ先端医療分野での事業強化を目指している。(2013年3月6日)

 

・武田薬品工業が、痛風の新薬で知られるアメリカの製薬会社URLファーマを買収すると発表。武田薬品工業は、11年にもスイスのナイコメッド、米国の創薬ベンチャーであるインテリキンを買収するなど、海外企業のM&Aを積極的に進めている。(2012年4月12日)

■ つながりの深い業界 <CROと協力する機会はさらに増えそう>

CRO

医薬品の開発を委託するCROは、今後さらに関係が深まりそうだ

ドラッグストア

一般用医薬品の販売チャネルとして密接な関係がある

医薬品卸

薬局・病院との仲介役を果たす医薬品卸は、欠かせないパートナー

 


■ この業界の指南役

日本総合研究所 マネージャー 奥田宗臣氏

 

早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。ヘルスケア・医療関連ビジネス分野における民間企業の事業戦略策定・実行支援などに従事。近年は、医薬品・医療機器メーカーの新興国市場を中心に、マーケティング戦略立案支援、営業力強化のコンサルティングを軸にした活動を展開中。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか