図1:企業と消費者の関係が変わった!

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■クチコミを数値化できる時代が来た!

商品やサービス、コンテンツの大ヒットのカギを握るクチコミ。ブログやSNSが普及し、ツイッターやフェイスブックなど新しいソーシャルメディアが台頭してきた今日、クチコミは質、量ともに拡大し、その伝達スピードも飛躍的に高まっている。

アナログの時代、クチコミという捉えどころのない微細なコミュニケーションの集積がどれだけヒットや販売促進に結びついたかを実証する術はなかった。しかしネット社会の到来によって、ブログやツイッターの書き込みや過去ログから、クチコミを実態として捉えることができるようになった。

そこにマーケティングの新しい手法を見出そうとする取り組みが始まっている。エンターテインメント業界のヒットメーカーと物理学者という異色の組み合わせによる共著『大ヒットの方程式』では、ソーシャルメディアのクチコミ効果を数式化して、ブログ書き込みの数や推移からヒット現象を説明する。

数々のヒットコンテンツを手がけてきた元プロデューサーで現大学院教授の吉田就彦氏が経験則から紡ぎ上げたヒット理論と、物理学者の石井晃氏が専門とする物理学がスパークして生まれた「ヒット現象の数理モデル」とは何か。そして数理科学が解き明かすクチコミ効果の正体とは?

■流行、ヒットを数字で捉えると

ソーシャルメディア・マーケティングのバイブル『グランズウェル』では、第一の戦略を「傾聴戦略」といっています。つまりブログ、ツイッター、フェイスブックに書かれた自社の話に耳を傾けるということです。昔はお金をかけて調査していた情報がいまはネット検索すればタダで手に入るのですから、やらない手はない。というより、傾聴戦略を取らない企業は、規模に関係なくたちゆかない時代になっています。

ネットにはいい意見と悪い意見が混在していて、それを見ていれば自社を巡って何が起きているのかがわかる。トラブルのタネを早期発見できる場合もあるし、「この製品のストロベリー味があったら最高」などという声から商品開発のヒントを得られることもあります。

図1で示したように、かつては企業が商品を消費者に押し付ける一方的な関係でした。これが双方向の関係に変化したところまでは一般に理解されていますが、SNS時代、実態は図1の下図のようになっています。ソーシャルメディアでつながった消費者が情報を発信し合い、企業の与り知らないところで商品の価値やブランドイメージが形成されていく。

インターネットマーケティングに携わって20年以上が経ちますが、ひと昔前は「ネットの情報なんてワン・オブ・ゼム。書いているのは偏った人たちだから意味がない」と批判する人が大勢いました。しかしいま、ブログなどのCGM(コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア=消費者がつくるメディア)は消費者に大きな影響を与えています。アメリカでは商品カテゴリーごとにアルファブロガー(影響力のあるブログ著者)がいて、その言動によって消費が動くほどです。

マーケティングの目的はクチコミを起こすことといっても過言ではありません。ただ、かつては「人の噂も75日」といわれ、噂は一定期間続くものと考えられていました。いまでは図2が示すように、企業側が話題を提供しても1つのネタをもとに消費者がブログに書き込む量は、その話題が提供された2日後には減少してしまいます。クチコミを起こしたところで、それをいかに持続させヒットに結びつけられるかが問題なのです。

CGMの1つであるブログを分析することでクチコミを可視化し、マーケティングに活かすことはできないか――。そう考えて研究を始めました。そして石井晃教授との共同研究で「ヒット現象の数理モデル」が生まれ、ヒットづくりの考え方や、その原則を数式化するところまで辿り着きました。

クチコミの盛り上がり方を含めてヒットが起きるまでの道筋を数字で導き出すことができれば、効果的な広告・宣伝のタイミングを知り、費用を見積もることが可能となります。

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ヒットコンテンツ研究所社長 吉田就彦
1957年生まれ。早稲田大学理工学部卒。キャニオンレコード(現ポニーキャニオン)に入社し、「だんご3兄弟」等数々のヒットを手がける。デジタルガレージ副社長を経て現職。デジタルハリウッド大学院教授、コンテンツ学会理事等も兼務。

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(吉田就彦 構成=小川 剛 撮影=市来朋久)