名古屋・レトロ銭湯巡礼行 和風編

写真拡大

前回は中京圏銭湯の特色などをご紹介しました。
今回はその中の名古屋市内で実際に見て、入浴してきた銭湯をご紹介したいと思います。

名古屋市は中部地方の大都市であり、横浜市、大阪市についで人口の多い都市であります。
そんな都市でありますから、やはり数多くの銭湯があり、愛知県公衆浴場業生活衛生同業組合のwebサイトを見ますと95軒の銭湯が営業されているようです。
そんな名古屋市は歴史のある都市でもありますので、やはりレトロな銭湯も結構残っていたりします。
しかし時代の流れと言いましょうか、ご多分に漏れず他の地域と同様にその数も減り続けている現状です。
そんな中から今回は見どころの多い、どちらかというと和風なレトロ銭湯をご紹介しようと思います(一部、隣接市の銭湯と銭湯遺跡もご紹介します)。

(1)道徳温泉

名古屋市の南側、名鉄常滑線の道徳駅から徒歩8分くらいの住宅地に建つ民家風一軒家銭湯。
建物は昭和28年築、地方銭湯サイズというか少し小ぶりの建物です。
入口の目隠し板と左右の男女入口に掛かる暖簾がなんとも良い風情です。

中に入ると右手が番台、タタキの下足箱は中部銭湯独特のデザイン物中抜きの跳ね上げ式金属蓋となっています。
脱衣場から浴室への間には、これまた中部圏銭湯独特のタイル張り緩衝地帯がしっかりあり、タイル張りの腰〜肩の高さの少し高めの壁が設けられています。
浴室は中央の浴槽と奥壁の薬湯の電気風呂とジェット付きの浅浴槽のレイアウト。
奥壁には小品なれど熱帯魚の図柄のタイル絵が浴室を飾っています。
カラン列は湯のみのカランが並ぶ古いタイプ(一部水のカランもあり)。
レトロな感じを残しつつもキレイに改装されており、白いタイルが明るく手入れの行き届いた使いやすい銭湯でした。


道徳温泉
名古屋市南区道徳新町1-8
営業時間 16:00〜23:00
定 休 日 日曜日祝日
道を挟んだ向かい側に駐車場あり。


(2) 敷島湯

名鉄常滑線道徳駅の南西側、徒歩にて10分くらいの住宅地に建つ銭湯。
ここはなんというか、激渋銭湯です。
名古屋在住の友人も「何度か前を通っているが営業していると思わなかった」といっていました。


古色蒼然とした建物は昭和25年築(創業は昭和10年、現在の建物は再建)。
なんとなく煤けた木造モルタルのファッサードには敷島湯の屋号。
入口のすりガラスには「敷嶋湯」と書かれています。
入口横左手には外トイレ?がありますが利用できるのかは不明。
とにかく外観からスゴイ迫力でグイグイきます(笑)

屋号入りの引き戸を開けて入ると左手に独立した受付というかフロントがあります。
これは近年見られるレトロ銭湯のフロント化改装したものではなく、建てられた当時からこの様に造られた特徴的な構造です。
受付で料金を支払い右手の入口を入ると男湯脱衣場。
時間帯のせいか窓からの外光のみの薄暗い脱衣場は全て木造の超レトロな空間、これが戦後築かと思わせるような木造の茶色い世界が広がります。
なんというか古い学校の木造校舎の教室内のような雰囲気がありました。
下足箱はやはり肉抜きされた金属蓋の物。
ロッカーは壁側に造り付けの木造、これも中部圏では時たま見かける特徴的な蓋にガラスが嵌っているロッカーでした。
そしてここの脱衣場浴室間の緩衝地帯は男女境壁側寄りに石灯篭や岩を配した池(水は無し)の庭園風となっています(前回の中京圏銭湯の記事に写真掲載)。
浴室は亀甲型タイルの貼られた古い床でセンターの丸い浴槽と奥壁側の電気風呂とジェット付き浴槽があります。
カラン列は男女境壁側が青赤の取っ手付きの古いカランが並び、外壁側はさらに古い金属製取っ手のカランが並んでいます。
天井はコンクリートの一部が剥がれて鉄筋がむき出していたり。
脱衣場とは違い明るい浴室ですがなかなかレトロ度合いの高い浴室です。
激渋銭湯好のみの方には是非訪れてもらいたいとおもいます。

敷島湯
名古屋市南区道徳新町4-100
営業時間 15:30〜19:00
定 休 日 土曜日
横に駐車場あり。


(3)萬歳湯


萬歳湯はまんざいゆと読みます。
因みに漢字書きだと同名の屋号が結構ありますが、その多くはばんざいゆです。
萬歳湯は地下鉄桜道り線の浅間町駅を出てすぐ、表通りから1本入った裏路地にあります。
外観は木造モルタルの昔ながらの名古屋銭湯といった趣きです。
入口には屋号の書かれた古い木製看板が掲げられており、その左右それぞれ男湯女湯入口に暖簾が掛かっています。
入口付近にはガムテープで補強されている個所もあったりします。
中に入ると横長のタタキの下足スペースに下足箱、左手の番台の女将に料金を支払って入ります。
脱衣場は奥に細長く外観と同じく昔のままといった趣きです。
ただ男女境壁側に何やら段ボールなどが積まれているのが少し残念。
浴室との境の緩衝地帯の入口上には山と湖に洋館といった図柄のモザイクタイル絵がありました。

浴室は男女境壁側に浴槽がならんでおり、手前から深浴槽、浅浴槽、岩を配した凝った造りの電気風呂浴槽となっています。
浅湯と電気風呂の間には1メートルはあるかと思う大きな陶製の鯉があり、かなり特徴的。
奥壁側には遠景に峰を望む湖に白鳥といった図柄の大きなモザイクタイル絵が見事です。
カラン列は外壁側に並ぶ片側仕様となっていました。
街中の小型の銭湯ですがなかなか見どころの多い銭湯でした。

萬歳湯
名古屋市西区浅間2-12-26
営業時間 16:00〜22:00
定 休 日 毎週 水曜日


(4)仁川湯


屋号は「ふたがわゆ」と読みます。
名古屋市からちょっとだけ出ちゃうのですが、庄内川を越えてすぐの旧街道・美濃路の趣きある街道沿いにある銭湯です。
住所的には清州市になります。
名鉄本線の二ツ圦という駅から北へ歩き、旧街道筋へ出たら右に行くとすぐに到着です。
町屋風の建物は街道から少し下がって建っていて目立ちません。

暖簾をくぐり中に入るとタイル床の下足スペース、下足箱は例の肉抜き金属蓋の下足箱。
左手には年季の入った番台に女将さんがおられます。
脱衣場は右手外壁側に愛知県定番の格子柄スリガラス張り蓋のロッカーがならんでいます。
左手男女境壁は鏡になっており、長いベンチが置かれています。

浴室境の緩衝地帯は白とグレー系のタイル張りで明るい感じです。

外壁側が流し、男女境壁側にはタイル張りの水路様の構造物と台に小便小僧の像があり、過去には水が流されていたようなのですが現在は観葉植物が飾られていました。
左手の男女境壁下部には小さな扉があり、地元在住の知人に聞くと「子供の頃はあり扉から男湯女湯を行き来していた」との事でした。
緩衝地帯のアーチ型の扉をくぐり浴室へ。


浴室もレトロな雰囲気満点。
奥壁側には座ジェット浴槽、電気風呂、薬湯浴槽がならんでおり、浴室中央にも隅切りした長方形の主浴槽が鎮座しています。
カラン列は主浴槽より脱衣場寄りの左右の壁側にある青赤の樹脂取っ手の古い物が並んでいます。
そして浴室の男女境壁下部にも金属製小扉があり、おそらく昔は子供が行き来していたと思われます。
そして、さらにレアなレトロ物件が!
壁の少し高い位置に女湯側から男湯側に向かって下がるよう斜めに空いた横長の小さな穴があります。
これは石鹸受け渡し穴で、穴の横にも同様の説明が書かれています。
※因みに角度に絶妙の工夫があり男湯から女湯は見えません(笑)。
現在は100円均一で売られている石鹸も昔は今より高価なものでしたし、子供を伴っての家族での銭湯通いも日常の光景でした。
浴室や緩衝地帯の小扉とともに石鹸受け渡し穴もそんな時代の遺物といえましょう。

同湯は美濃路の古い街道筋、ひとつ先の駅で降りて街道を散策しつつ到着するのもオススメです。
銭湯裏手はすぐに庄内川の土手。
湯上りの夕涼みにも良い場所です。

仁川湯
清須市西枇杷島町南二ツ杁35
営業時間 15:30〜21:00  
定 休 日 火曜日
前に若干駐車スペースあり


さて、ここからは現在は営業していないけれど建物の残る銭湯・いわゆる銭湯遺跡の物件のご紹介になります。

廓湯(くるわゆ)跡


名古屋駅の西側、かつては中村遊廓(戦後は名楽園)の領域内に建つ銭湯跡。
立派な唐破風の入口上には「上州 草津温泉」と右から書かれた古い扁額が今も掲げられています(一番上のタイトル写真)。
これは昔、交通機関が発達していなかった頃にはよく遠隔地の温泉場の名前を掲げた看板が掛かっていた銭湯も多かったそうです(湯の花などを投入した湯を提供していた所もあったとか)。
屋号は元の遊廓内の銭湯なので廓湯。
2007年に廃業してしまいましたが浴室には裸婦のモザイクタイル絵があったそうです。
近所の人が色々な歴史と共に裏手の桜が見事だから、と教えてくれました。
因みにこのあたりもすっかり衰退してしまったようで、旧妓楼建築のまま特別養護老人ホームになってしまっている所もあったりして、中には過去も現在もお世話になっているひともいるのではと思ってしまいました(笑)
しかし都市部の街中でこの様な立派な銭湯建築が廃業後も残っているのは珍しいです。

廓湯跡
名古屋市中村区名楽町2-10


三越湯跡


名古屋駅から東へ、名駅北三丁目交差点角にある昭和6年築の元銭湯三越湯跡。
建物は居酒屋に転用されていて外観等よく残されています。
夜になると暖簾が掛かる入口の雰囲気は銭湯そのものといった感じ。
銭湯の古い建築物は廃業するとすぐに解体されてしまう事がほとんどですが、立派なレトロ建築物などはいつもモッタイナイと思っておりました(当然だが古い物は新しく造れないしね)。
こんな形で活用されるのはとってもいいですね。

三越湯跡
名古屋市中村区名駅3-17-28


愛知県の銭湯は軒数も多く、特徴的な良い銭湯も多く営業しています。
街中の地域でも駐車場があったりして外来者も訪問しやすいと思います。
今回はどちらかというとレトロで和風な外観の銭湯をご紹介してみました。
しかしもっと多数の銭湯に入っておりとても紹介しきれません。
なので次回はどちらかというと洋風建築な銭湯をご紹介してみたいと思います。