ベに手荒い祝福をするドンファンもまた日本ツアーから米国に飛び立った(Photo by Tom Pennington Getty Images)

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 バイロン・ネルソン選手権を制し、米ツアー初優勝を飾ったべ・サンムン。その勝ちっぷりは見事だった。
遼、今季ベスト10位タイフィニッシュ!ベ・サンムンが初優勝
 最終日の前半、強風の中で次々に4バーディを奪った勢い。池につかまった9番のダブルボギーや、短いパーパットを外した15番のボギーを「あれは(その先で集中するための)薬だった」と言ってのける強心臓。最終ホールのティに立つときは「2打差があったから……」と、すでに心に余裕。そのすべてが、米ツアー2年目の26歳とは思えないほど堂々としていて、見事だった。
 今大会を初日から3日目までリードし続けていたのはキーガン・ブラッドリーだった。ブラッドリーは2年前のこの大会で、優勝を目前にしていた今田竜二を上回り、米ツアー初優勝を挙げた。TPCフォーシーズンズは言うまでもなく彼にとって相性も印象もいいコースのはず。最終日を首位で迎えたブラッドリーがこのまま優勝すれば、この大会で4日間首位を守り続けての完全優勝は1980年のトム・ワトソン以来の快挙になるのだと米メディアは色めき立っていた。
 それゆえ、今日の優勝争いの序盤で続々とバーディーを奪ったべが単独首位に立つと、米メディアはあからさまにトーンダウン。だが、15番でバーディーパットを沈めたブラッドリーとボギーを喫したべが首位に並ぶと、米メディアは再び活気づいた。
 しかし、プレッシャーがかかる上がり3ホールのプレーぶりは、べのほうがブラッドリーより上だった。べが「今日の僕はラッキーだった」と振り返ったように、逆に言えば16番のバーディーパットがカップに蹴られたブラッドリーには少しばかり運が無かったのかもしれない。
 けれど、運も実力のうちだ。運が無ければ勝てないし、それ以前に我慢のプレーと好プレーができなければ勝てない。べとブラッドリーの明暗を分けたものは、そこだ。いくら米国人選手贔屓の米メディアでも、その差を素直に認めざるを得なかった。
 だからこそ、米国期待の若手で過去チャンプで完全優勝がかかっていたブラッドリーを負かした“憎き外国人”とはいえ、ウイニングパットを沈めて万歳ポーズを取ったべに人々も米メディアも心から温かい拍手を送ったのだと思う。
 韓国の血を引く選手の米ツアー優勝はK・J・チョイ(崔京周)、Y・E・ヤン、ケビン・ナ、ジョン・ハーに次ぐ史上5人目。韓国籍では3人目。べは日頃からチョイを兄のように慕っており、近いうちにロサンゼルスのアパートを引き払って、チョイが住むこのテキサス州ダラスに引っ越す予定だった。
 そのダラスで初優勝を挙げたため、優勝会見では「ダラスは、いいところだなあ」と言って米メディアを笑わせていたが、その反面、初優勝を挙げたこの日がチョイの誕生日であることはまったく知らず、「えっ?そうなの?」と驚き、「ハッピー・バースデー、KJ」と会見の壇上で慌てて小声で囁いて、再び周囲を笑いに包んだ。
 慕い慕われの関係はあれど、気持ちの上では同等か、それ以上。必要以上の上下関係やベタベタした気の遣い合いはせず、ある意味、ドライで、一人一人が自分をしっかり確立しながら切磋琢磨している。それが米ツアーにおける韓国人選手たちの成功の秘訣のように思えた。
 不調だった昨秋はずいぶん気落ちしていたべだが、あれから半年が経過した今、米ツアー2年目で初優勝。「僕も、もうちょっとだと思う」と語った石川遼は、米ツアーメンバーとなってもうすぐ半年を迎える今週、初のトップ10入りを果たした。
 今の石川は今季序盤の石川とは違う。勢いのまま「来週こそは優勝」などと言うのではなく、「予選を通ることがいかに重要か。予選を通っていれば、ここまでは巻き返せるという参考になったことに、順位以上に手ごたえを感じる」と神妙に語った。
 べも石川も短期間で大きな成長を遂げている。日本から飛び立った2人の若者の未来は、だからこそ期待できる。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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