ユニクロ、東レ、アップル等、「世界の工場」として繁栄を支えた先進国の一流企業の多くが、中国から引き揚げ、東南アジアなどへ生産拠点をシフトさせる動きを加速している。

 なぜメーカーは一斉に中国から東南アジアにシフトしようとしているのか。大手監査法人の上海事務所で日系企業部代表を務め、現在、コンサルタント会社「アウトバウンド・マネジメント」を経営する税理士の日上(ひかみ)正之氏は次のように指摘する。

「中国沿岸地域の労働者の賃金は毎年前年比2桁上昇し、この5年間で2倍に高騰した。内陸地域にも同様の現象が起きるのは時間の問題だろう。これではアパレルなど低賃金が前提の労働集約型産業はやっていけない。ベトナムの賃金は中国の半分、ミャンマーは5分の1だ。中国には両国より進んだインフラがあり、サプライチェーンが確立しているが、それでも労務コストを負担できない企業は中国を出て行くしかない」

 さらに繁忙期に労働者が集まらなくなってきたこともメーカーの中国離れを加速させている。賃金の上昇や生活レベルの向上により、いわゆる3K職場が若者に敬遠される傾向が強まっているという。

「内陸部の経済振興策により地方も豊かになり、わざわざ沿岸部へ働きに出る必要もないという若者が増えてきた。労働集約型産業の工場では、これまで内陸部から無限に供給される労働者を繁忙期に大量に使ってきたが、そうしたことができにくくなっている」(日上氏)

 日系企業特有のリスクも一因だ。日中間の政治問題が労使関係に影を落としがちだからだ。労働者側が歴史問題などを持ち出して強く出れば、理不尽な要求でも企業側が呑まされてしまうことが少なくない。日上氏によれば、反日デモをきっかけに撤退や東南アジアなどへの移転を模索する動きが目立っているという。

※SAPIO2013年6月号