なんでもネガティブに考えてしまう −超訳「人間キリスト」の言葉【7】

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聖書は古の書物ではなく、私たちの生活にも優れた示唆を与えてくれる……。大ベストセラー『超訳 ニーチェの言葉』の著者が、職場や家庭でのビジネスマンの尽きぬ悩みに、独自解釈した聖書の言葉で応える。

「疲れた」と思っていても「疲れた」と口に出さなければ、言ったときよりも疲労は少ないものだ。「もう駄目だ」と思っても口に出さなければ案外頑張れる。口に出すことで肉体が反応してしまうのだ。

ネガティブに考えるクセがあっても、なるべくそれは口にしない。逆にポジティブなことを口にするように心がける。頭の中で思うよりも、口にすることのほうが、人生を動かす力になりやすい。口にすればするほど、ハッキリと人生を決める力は強くなる。

右の言葉は旧約聖書「格言の書」の一節。格言の書は紀元前5〜4世紀頃、あるいは紀元前3世紀頃に編纂されたともいわれ、信仰厚い生活を送るための宗教的格言集である。格言の前半分くらいはダビデの息子で栄華を極めたソロモン王の言葉とされている。

聖書は言葉を非常に重んじている。イエスの最初の弟子ヨハネが書いたとされる新約聖書の「ヨハネによる福音書」は「初めにみ言葉があった」という有名な書き出しで始まる。

「……み言葉は神と共にあった。み言葉は神であった。み言葉は初めに神と共にあった。すべてのものは、み言葉によってできた。できたもので、み言葉によらずできたものは1つもなかった。み言葉の内に光があった。この命は人間の光であった。光は闇の中で輝いている。闇は光に打ち勝たなかった」(ヨハネによる福音書 第1章)

この一文を論理的に解釈するのは難しい。それが書ければ一冊の哲学書になるだろう。ただ「聖書にそう書いてある」としか言えない。言葉は万物の源であり、創造の最大のエネルギー源なのだ、と。

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聖書の言葉

愚かな者は、じっくりと考える
ことをしない。自分の感情的な
思いを言いふらすばかりだ。
彼らは知恵はない。彼らは、
人の言うことをよく
聞きもしないで返事をする。
愚かな者の言うことは、
争い、不和、悲しみ、苦しみを
呼び寄せる。彼らは怠け、
結局は滅びを招く。
人生は、自分が何をどう言うか
によって支配されるものだ。
人生の果実とは、
自分の唇が育ててきたものだ。

格言の書 第18章

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■迷うことが多い。この世は生きにくいとつくづく思う

「ヤコブの手紙」は新約聖書に収められた15通の手紙の1つ。ヤコブ(バルバロ訳ではヤコボ)はエルサレムの初代司教で、西暦50年頃に主にキリスト教に改宗したユダヤ人に向けてこの手紙を書いたとされている。

「迷う者にはいつも2つの心がある」とヤコブが戒めているように、どっちつかずの「2つの心」というのは聖書の中ではいつも否定されている。イエスか、ノーか、どちらかにせよ、と迫ってくる。

たとえば新約聖書の「ヨハネの黙示録」にも、「あなたは冷たくもなく熱くもないが、私はむしろあなたが冷たいかそれとも熱くあることを望む」(第3章)とある。熱くもなく、冷たくもなく、「生温い」のは絶対によくないというのだ。

欧米では酒を飲みながらでも互いの主張をぶつけて、反対意見も言い合う。それで喧嘩になることはない。ところが日本人はその場その場の状況や、周囲の顔色を見て自分の態度を決める場合が多い。空気を大事にするといえば聞こえはいいが、要はどっちつかずなのである。互いの顔色を見ながら話すから、そつのない同調意見ばかりで議論が進む。

聖書文化で育った欧米人には、旗幟不鮮明な日本人のそうした態度は気持ちが悪い。

「迷う人はいずれ落ちてしまう」(旧約聖書 格言の書 28章)という言葉もある。

細い道でもまっすぐに歩けば、目的地に達することができる。あれやこれやと手をつけても全うしなければ、何事も成就できないし、目的地にたどりつけない。生き方も同じだ。苦しくても、困難があっても、逃げずに貫けば、大きな報酬と満足が得られる。

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聖書の言葉

迷う者は、あたかも波のようだ。
吹きくる風に翻弄され、
そのつど巻き上げられる
海の波にも似ている。
そんな者は神から
何かをもらえるのではないかと
期待するな。なぜならば、
迷う者にはいつも
2つの心があるからだ。
そしてまた彼の生活は
節操に欠けたものだからだ。

ヤコボの手紙 第1章

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※フェデリコ・バルバロ訳『聖書』に準拠

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作家 白取春彦
青森県青森市生まれ。ベルリン自由大学で哲学・宗教・文学を学ぶ。哲学と宗教に関する解説書の明快さには定評がある。著書に『超訳聖書の言葉』『超訳 ニーチェの言葉』『この一冊で「聖書」がわかる!』などがある。

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(作家 白取春彦 構成=小川 剛 撮影=平地 勲、小原孝博)