提供:週刊実話

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 山中を合わせ日本は現役ボクシング世界王者数が7人。一時は現役世界王者皆無にまで落ち込んだ日本ボクシング界において、王者数だけは最盛期を彷彿させるが、それでも国内の盛り上がりは昭和のそれに遠く及ばない。この閉塞状態打破を山中に期待する声もある。山中の試合にはそれだけの魅力がある。

 −−これほどの世界チャンピオンが数多く君臨しているのに、日本のボクシング人気はピークに達していません。現役王者としてこの現状をどう捉えていますか?
 「一番の要因は、昔と違って面白い番組が他にもたくさんあるからでしょう。他のチャンピオンにしても、決して面白くない試合をしてるとは思いません。ボクシング界を盛り上げる一人でいたいから、統一戦の話もしました。でも結局、自分たちにできるのはいい試合をすることだけです」

 −−先日のタイトル戦は各方面から「いい試合だった」と絶賛されています。
 「いい試合というのは、まずいい相手、強い相手がいての話です。そのうえで観客が喜ぶ試合運びをする。そういう意味でいうと、自分の試合はまだまだ納得できていません。もうちょっと攻撃的にならないと」

 −−頂点に立つ王者とは、つまりあとは失うだけの立場です。試合の魅力より、勝ちを取りにいってしまうことはないですか?
 「そこなんですよ。最近は公開裁定というものがありまして、4Rと8Rの終了後にポイントが発表されるんです。するとどうしてもポイントの計算をしてしまうんですよ。自然と(笑)。ラウンド中なのに自分の中で天使と悪魔みたいなものがいろいろ言い合ってるんです。そこもまた戦いなんです(笑)。負ければすべてを失いますし、つまらない試合をすればもっと失うかもしれないじゃないですか」

 −−いつもスマートに戦っているように見えましたが、いろいろな葛藤があるんですね。それでも最終的には素晴らしい試合をしています。
 「自分としては、見ているお客さんたちが元気になるような試合をしたいと思ってます。『面白い試合だったよ』も嬉しいんですが『自分も頑張ろうと思ったよ』とか『勇気をもらったよ』って言われたときが凄く嬉しかった。だからこれからも見ている人が元気になるようないい試合をしていきたいですね」

山中慎介(やまなか・しんすけ)
 19821982年10月11日、滋賀県湖南市生まれ。南京都高校時代からボクシングを始め、専修大学ボクシング部を経て20062006年にプロデビュー。'10年6月、日本バンタム級王者安田幹男を7回TKOで下し王座を獲得。'11年11月にはクリスチャン・エスキベル(メキシコ)とのWBC世界バンタム級王座決定戦で勝利。その後は最強挑戦者たちを次々と下し、現在は3度の防衛に成功している。昨年4月に結婚。身長171センチ。リーチ173センチ。戦績20戦18勝(13KO)2分け。

撮影/小森勇人