複雑で手ごわい税制。しかし、中身を理解すれば節税にもつながる。たとえば扶養親族が1人増えると所得から38万円が控除される扶養控除は、「6親等以内の血族及び3親等以内の姻族」と遠い親戚も含まれ、別居でも扶養に入れられるなど、知られていないことも。

 さらに、親元で暮らしていて家にお金を入れている子や、収入がない親の生活費を援助しているサラリーマンは、社会保険料控除も活用できると元国税調査官で節税に関する著書も多い大村大次郎氏は言う。

 社会保険料控除とは、健康保険や国民年金などの保険料の全額が、所得から控除される制度だ。サラリーマンが親族の社会保険料を支払っている場合も控除の対象になる。たとえば月3万円を食費として母親に仕送りしている場合、それを食費ではなく、母親の社会保険料3万円分に充てれば、全額所得控除ができるという。「お金にひもが付いているわけではないので、社会保険料を払ったことにすれば節税できるのです」(同)。心当たりがある人は、ぜひ来年、確定申告をしてみよう。

 そして特典を楽しみながら節税できるのが、寄付金控除だ。なかでも「ふるさと納税」は、節税アイテムとしてかなり使える。ふるさと納税は、全国の好きな自治体に寄付金を納めると、その金額マイナス2千円を、通常支払っている所得税や住民税から差し引くことができる制度だ。たとえば年収550万円の人がふるさと納税で3万円寄付すると、確定申告で所得税(2800円)、住民税(2万5200円)の計2万8千円が戻ってくる。

 つまり2千円は自己負担になるのだが、その代わり、納税者に豪華な特産品を贈ってくれる自治体が多いのだ。マグロ、カニ、メロンなど、ご当地の名産ギフトがずらりと並ぶ。なかにはオホーツクの流氷をもらえる(北海道紋別市)などの変わり種もあるが、2千円で特産品が手に入ると思えば、かなりお得な制度といえよう。さらにふるさと納税には「節税以上の喜びがある」と『なぜ犬神家の相続税は2割増しなのか』(東洋経済新報社)の著者で、公認会計士・税理士の小澤善哉氏は言う。

「先日、ある市役所にふるさと納税でお金を持っていったら、担当職員が総出で『ありがとうございます』と言ってくれました。税金を払ってお礼を言われることなんて普通はありませんから、節税以上に、気持ちの問題としてもいい制度です」

 また寄付金控除を活用すると、東京マラソンにほぼ確実に出られるという裏ワザもある。今年2月にあった東京マラソンは、抽選倍率10倍超で、大半の人が涙をのんだ。一方、参加料1万円に加え、特定の団体に10万円以上を寄付すると出場できる「チャリティ枠」(先着3千人)というのがある。

 東京マラソンには出たいが、「10万円」とは二の足を踏んでしまう金額だ。だが寄付金控除を使えば、半額近い金額が返ってくる可能性があるのだ。実際にいくら返ってくるかは、寄付先の団体と居住地によって異なる。小澤氏によると、たとえば東京マラソンの指定寄付先の一つである「国連UNHCR協会」への寄付は、所得税、住民税の税額控除が受けられるので、10万2千円を寄付すると、同協会の事務所がある港区民なら5万円が、それ以外の東京都民なら4万4千円が返ってくる。

 次は住宅だ。住宅の税金にも、節税テクニックがいろいろある。これから住宅を買う人が活用したいのが住宅ローン控除だ。ローンを組んで住宅を買った場合、前年末時点のローン残高の1%が、支払っている所得税、住民税から直接控除される。

 今年新居に住み始めた人は、年20万円×10年間の計200万円が控除額の上限だが、今年度の税制改正で、14年4月から17年12月までに入居した人は、上限がその倍に引き上がる。節税の観点からみた住宅の買い時はいつなのだろうか。小澤氏は言う。

「住宅ローン控除の制度改正と消費税の増税が絡み、いつ、どうするのが得なのかは非常にわかりづらくなりました。大ざっぱに言うと、収入が多くローンも高額になる人は消費税8%のときが得、収入が400万〜500万円で3千万円ぐらいのマンションを買う人は、増税前がお得になります」

 住宅ローン控除の最大の裏ワザは、共働きの夫婦なら、控除をダブルで受けられるということだ。たとえば今年新居に入居する夫婦で、夫の住宅ローン残高が4千万円の場合、控除は上限の20万円だ。しかし夫と妻が2千万円ずつローンを借りていれば、それぞれに20万円で、計40万円が返ってくる。

 この方法を使えるのは、住宅ローンを夫婦が別々の名義で契約している場合だ。ただ、夫婦の収入がそれほど多くない、ローン残高が少ないなど、控除を上限まで使いきれない場合、2人で契約してもうまみはない。

 まだ購入する住宅を決めていないのであれば、中古住宅を選ぶと節税につながる可能性がある。中古住宅では、売り主が個人の場合、消費税がかからず、消費税増税の影響も受けないからだ。しかし築年数25年以上(鉄骨鉄筋コンクリート以外なら築20年以上)だと、住宅ローン控除を受けられないことがあるので、築年数には注意したい。

 一方、既に持ち家に住んでいる人にも、節税のチャンスがある。住宅ローン控除は、リフォームでも活用できるのだ。工事費用が100万円超、返済期間が10年以上のローンを組む、などの条件があるため、「リフォームをするならまとめて同時期にするのがいい」(小澤氏)という。

 最後に、とっておきのタイミングで使える裏ワザを紹介しよう。まずは結婚編から。大村氏によると、税務署員の間では「結婚するなら年末にしろ」という言葉があるという。これは、配偶者(所得が38万円以下)がいる場合に38万円が所得から控除される、配偶者控除の制度に由来する。

「配偶者控除は1年間のうちどのくらい結婚生活をしていたかに関係なく、12月31日時点に配偶者がいるかどうかで決まります。税務上は、年末に結婚していればその年の配偶者控除が受けられるので、メリットがあるのです」(大村氏)

週刊朝日 2013年5月24日号