iPodからiPhoneまで、アップル復活の舞台裏を知る「唯一の日本人経営者」が、アップル退社後に初めて語る「これからの世界」での働き方。「実績」や「有言実行」で成り立つ世界のビジネスでは、頑張ったけど目標達成できなかったというのは通じない。では、世界の「当たり前」とは何か?

「コミットしたこと」は死んでもやり通す

 私の仕事上のポリシーは「決めたことは死んでもやり通す」です。当たり前のことのように思えるかもしれませんが、決して当たり前ではありません。周りを見渡してみてください。部署で立てた売上目標から、個人レベルのプロジェクトまで、決めたことでも途中のさまざまな困難から座礁してしまうのは日常茶飯事です。

 そもそも、日本企業の場合、最初からできもしない目標を立てたり、時には上から数字が降りてきて、よくわからないままコミットさせられ、達成できなくても「頑張りましたが、数字はクリアできませんでした」で終わることがほとんどです。

 これからの世界で戦うみなさんは、まずこのぬるま湯の状態から脱するようにしてください。日本の外資系企業をはじめ、世界のグローバル企業では、こういう目標達成の管理はあり得ません。目標を立てるとは、それを必ず実現することが前提であり、もし目標が納得いかないのであれば、納得いくまで上司とゴリゴリとやり合う必要があるのです。

 アップル時代は、この目標数字の握り合いが本当に大変でした。私はセールス部門のバイスプレジデントでしたが、プロダクト側のトップと目標数字について丸3日間、毎回ゴリゴリとやり合うのが常でした。

 プロダクト側は各ファンクションの性能データから他社データもすべて握っており、この製品であれば必ず10万台は売れると主張します。営業側も根拠を出して7万台と交渉するのですが、お互い一歩も引きません。互いに目の色を変えてやり合い、正当な理由をぶつけあって目標数字を決めていくのです。

 そして、一度コミットした目標は、死んでも達成することが求められます。これまで達成できずに消えていった人を何度も見てきました。ビジネスにおいて「死」とはクビを意味しますが、常にクビを覚悟で自らに負荷をかけていくことは守りに入ることがないので、やることが小さくならない。圧倒的な成長と実績を生んでいきます。

 シビアな世界だと思いますが、世界はproven track record(実績)で回っています。学歴、性別、年齢、国籍などは一切関係ありません。会社の人事データベースにも、これらの項目が入っていないのは、それよりもあなたがどういうことを成し遂げてきたのか、その積み重ねの結果に興味があるからです。実績をつくっていくには、コミットした目標を成し遂げていくことが絶対条件となるのです。
 
 さらにこの実績づくりには、「有言実行」の繰り返しが必要です。アメリカのビジネス界は、results driven(結果重視)なので、先にこれを成し遂げますと宣言してから達成することこそが評価に値するのです。
 
 日本人は往々にして「不言実行」を好みますが、世界でそれは通用しません。ビジネスでは、自分の都合でコロコロとコミットメントを変えることはできません。10分、1000円の散髪を売りにしている散髪屋さんが、突然料金を吊り上げることも、散髪に10分以上かけるわけにもいかないのと同じです。

 何かしらの製品やサービスをお届けしますと宣言したら、そのとおりにお届けすることがビジネスでのコミットメントです。この有言実行スタイルはかなりの負担を強いられることになりますが、自分に負荷をかけるというのは、その後の原動力となる大きな自信を手にできます。ビジネスでは、この自信なくして前進は決してできません。

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