海外企業による日本買収は再び増加基調に

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■まずは万国共通のマナーを身につける

グローバルに事業展開しているわが社では、2009年にドイツの大手工作機械メーカーであるギルデマイスター社と業務・資本提携し、11年9月よりドイツの販売網も統合しました。これにより両社合わせて約1万人の従業員のうち7000人は外国人となりました。海外支社のトップはアメリカ人が、マーケティングのトップは女性のオーストリア人が務めており、外国人上司の下で働く日本人社員も珍しくありません。

こうした現象はわが社に限らず、多くの日本企業で起こっています。英語が苦手で純然たる日本企業に入社したと思ったのに、その会社がいつの間にか外資に買収されて外国人上司の下で働かなければならなくなったとか、青天の霹靂でまさかの海外勤務を命じられてしまい、いきなり上司が外国人になってしまったというケースが急増してきているようです。

外国人上司の下で働くとなると、まず外国語の心配をする人が多いと思いますが、それ以前に大事なことはひとりのビジネスパーソンとして基本的なマナーを身につけておくこと。たとえばエレベーターを降りたりドアを開けたりする際にはレディファーストを徹底すること、ビジネスの場にふさわしい服装をすること、パスタを食べるときには音を立てて食べないなど、どの国の人に見られても恥ずかしくない万国共通のTPOを心得ておくことは大前提でしょう。

そのうえで、上司となる人の国についての歴史や文化について知識を得ておくことも当然のことです。本だけでなく、映画や音楽などあらゆる情報を入手しておけば、その上司の取る言動や考え方も比較的受け入れやすくなるというものでしょう。歴史認識や政治問題はわざわざ話題にしないまでも、知識として理解しておくことは必要です。

また、その国ならではの独特のビジネス慣習というものもありますので、それは詳しい人を探して聞いておいたほうがいいですね。たとえば、日本やアメリカならば関係ある部署の担当者には全員にCCをつけてメールを送信するのが一般的ですが、ドイツでは通常、メールでも何でも1対1で対応するのが習慣のようです。

季節ごとの贈り物や接待などの習慣はアメリカやドイツにもあります。いずれも比較的フラットな社会ですから、階級社会のイギリスやインド、中国人などと比べればつきあいはしやすいほうだといえます。

ただしドイツ人は幼い頃からの教育もあって、会議などの際に理詰めで攻めてくることが多く、相手の逃げ場を奪うような話し方をしてくる傾向があります。そういう意味で、理詰め攻勢に慣れていない日本人にとって、ドイツ人の上司がいちばん厳しい存在といえるかもしれません。ただし、ドイツでは比較的雇用が守られており、簡単に解雇はできない労働環境にあります。そういう意味では、逆に比較的フランクに話しやすいアメリカ人上司のほうが、ある日突然リストラを行ったり、高いパフォーマンスを求めてきたりするのでシビアだという言い方もできるでしょう。

最低限の言語として英語は必要ですが、わが社のような工作機械メーカーなら、この業界で働く人独特の性格やタイプというのがあり、国籍や言語を超えて、わかりあえると感じることはよくあります。ですから、もしそのような状況に置かれたら、来るものは拒まずの精神で果敢に臨んでみてはいかがでしょう。

外国人を上司に持つというせっかくの機会なのですから、その国の人を思いっきり好きになってやろうというくらいの気持ちで腹を据えてみてください。

もちろん、それぞれ国民性はありますが、それにピッタリ該当する人ばかりではありませんので、ステレオタイプで一方的に判断するのは危険でしょう。まず、あなた自身が日本人として自分の芯をしっかり持ち、必要なら勇気を持ってノーといえる覚悟がときには必要だということも忘れないでください。

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森精機製作所社長
森 雅彦
1961年、奈良県生まれ。京都大学工学部卒業後、伊藤忠商事を経て、37歳で森精機社長就任。

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(森精機製作所社長 森 雅彦 構成=中島 恵)