『旅立ちの島唄十五の春』で共演した三吉彩花と小林薫

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『グッモーエビアン!』(12)の娘役で注目された若手女優・三吉彩花が、映画初主演を務めた『旅立ちの島唄 十五の春』(5月18日公開)。スクリーンには、撮影当時15歳だった三吉の、天然水のようにみずみずしい表情が投影されている。父親役を務めたのは、常に味わい深い存在感を発揮する小林薫だ。親子愛を丹念に紡ぎ上げたふたりにインタビューし、撮影秘話を聞いた。

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舞台は、沖縄本島から東に360km離れた、絶海の孤島・南大東島。高校進学のために島を出なければならない15歳の少女・優奈(三吉彩花)の初恋や家族愛、成長物語を、『キトキト!』(07)の吉田康弘監督が丁寧に映し出した。三吉は劇中で三線や島唄にも挑戦している。

撮影当時は、自身もちょうど15歳だったから、かなり役柄にシンクロできたという三吉。「私も主人公と同じく、15歳で親元を離れた直後だったので、すごく共感できたし、自然体で臨めました。方言の演技や三線は初めての挑戦でしたが、色々と学びながら成長していけた感じがします」。

小林は、三吉と最初に対面した時の印象について、「もっと幼い子を想像していたら、外見はもう立派な大人だったから、え?と思いました。第一声は『でかい!』でした(笑)」という。三吉にも小林の印象を聞いた。「今回、小林さんや大竹しのぶさんとご一緒させていただくと聞いた時から、すごく緊張していました。でも、撮影が進めば進むほど、いろんなお話をさせていただいて、すごく優しい方だなと思いました。演技でも学べるところが本当に多くて、今回ご一緒できて良かったです」。

小林は、「でも、あと何年か経ったら大女優になって、俺が声をかけても無視されるんだよ」と苦笑い。三吉は慌てて「そんなことしないですよ!」と全否定。小林は感慨深い表情でこう続けた。「今はスポンジで吸収するみたいに、いろんなことを学んでいます。僕たちも振り返ってみたら、16歳から10代後半にかけて感じたことは、とても大きかったなあと。女優さんとして、今後どんどん皮がむけていくというか、だんだん殻が取れていくというか、本当にそれを見ていて実感させられました」。

三吉は、小林から多くのものを吸収したようだ。「自分の芝居で、セリフを言ってない時の行動や佇まい、目の演技などが、今一番の課題なんです。いろんな監督さんから怒られたり、目だけの演技が全然できないと言われたりもして。でも、今回の現場で、小林さんの演技を見て、こういうことかなあと感じるものがありました。お父さんは家族のなかで、口数が一番少ないんですが、一人でお酒を飲んでいるシーンだけを見ても、実は悲しいのかな?とか、伝わってくるんです。そういうものを現場でも学びましたし、改めてスクリーンで見ても、新鮮に感じました」。

小林は今回、吉田監督と話し合って、引き算を意識して演技をしていったという。「僕も足りないところはいっぱいあるし、どうしたら良いのかという戸惑いはあって当然なんです。実際、それを良しとする監督もいるし、駄目出しする監督もいる。ただ、そういう思いを呼び込んだりするのは、テクニカルな問題じゃない気がします」。

本作でも含蓄のある表情を見せている小林。「人は普通、わかりやすいように生きてはいないんです。感情が見えるようにすると、いかにも見える演技になってしまう。見せないけど見えてくるというか。我々の日常生活だってそうで、ちょっと腹が立っても、怒りの表情は見せないわけで、何でもなく装ったりするでしょ。そういうことがやがて芝居になっていくという感じが、僕はどこかしています。悲しいから泣くのではなく、悲しみを抑えることにより、より悲しく見えることもあるしね。まあ、この仕事をやっていくと、だんだん仕事を好きになったり、やって良かったと思えたりする経験を積んでいくだろうから、どんどん自分自身も変わっていくんじゃないかな」。

真摯な目で、小林から発せられる言葉に聞き入る三吉。小林との共演について「すごく貴重な体験でした」と穏やかな表情で語った彼女の表情が実にまぶしい。『旅立ちの島唄 十五の春』は、ヒロインだけでなく、ベテラン俳優陣との共演によって、女優としての糧を数多く得た、三吉彩花自身の成長物語でもあると思った。【取材・文/山崎伸子】