割り箸はもともと杉の端材を有効活用するeco製品だった

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最近では外食店でも割り箸の使用が減り、洗って再使用する塗り箸の使用が一般的になってきています。マイ箸を持ち歩く人も少なくありません。その背景にあるのはエコロジー意識の浸透。割り箸の使用は森林破壊の元凶という考え方ですが、本当のところはどうなんでしょうか? エコピープルの恒藤克彦さんに聞いてみました。

――そもそも割り箸はいつ頃誕生したものなのでしょう?

「もともと割り箸は、奈良県の吉野で樽(たる)材として使っていた杉の端材を有効活用することから生まれたものなんです。現在でも、国内の割り箸生産量は奈良県が70%を占めています」

奈良県の下市町に伝わる宝永6年(1709年)に書かれた古文書に、「わりばし」に関する記述があるそうで、割り箸の歴史は300年にも及ぶのだとか。実は割り箸は、ゴミとなるだけだった端材を無駄にせず、箸として有効活用するという”ecoの精神”から生まれたものだったんです。

――それがなぜ森林資源を破壊するものとなったんでしょうか?

「話がややこしくなっているのは、年間250億本と言われる日本国内で使用されている割り箸の98%が、海外から輸入されているということが原因なのです。日本では端材や間伐材の有効利用として林業の経済的な商品になっているのですが、中国では木材価格が安いため原木から割り箸を加工しています。それで割り箸が中国の森林破壊の元凶と言われるようになったんですね」

――では、やはり割り箸はecoに反するということなんでしょうか?

「難しい問題ですね。日本の木材消費量に占める割り箸の割合は1%未満。消費量を考えれば、割り箸を使用することが、即、環境に優しくない行為とは言えないと思います。中国で割り箸を生産している人にとっては立派な林業事業ですし、日本においても間伐材や枝打ち材の有効利用は、森林の荒廃を防ぐために大切なことなのです」

――”森林の荒廃を防ぐため”とは?

「間伐とは、成長した木々の枝が互いにぶつかり合い成長の妨げにならないように間引きする作業です。枝打ちとは節(ふし)の少ない建築材を作るための作業のことです。間伐されたり枝打ちされた木が山に放置されたり、あるいは間伐がなされないために荒廃が進んでいる森林もたくさんあるんです」

――なぜ、間伐材が放置されたりするんですか?

「間伐材は割り箸のほか、バイオマス発電の燃料や公園の道路などに使われる木質チップの原料になったり、文房具、ガードレール、道路標識の支柱などに使われたりしていますが、輸送コストの問題で経済的に採算がとりにくいのです。補助金で何とかやっているのが日本の林業の現状なんです」

――eco問題は単純ではないんですね。

「割り箸とマイ箸の関係でもそうですが、自分は何をしようとしているかを考えることが大切だと思います。林業を応援する立場から割り箸を使用するのか、資源を大切にしたいからマイ箸を使うのか、どちらが正解でどちらが不正解ということはないですね。

環境の問題はいろいろな側面を持っているので、その人が何を目的にしているかが大切なんだと思います。無理したり我慢したりするのではなく、楽しく生活していけるecoでないと続けられません。

そんな中で、心がけしだいで誰にでもできることをひとつあげるとすれば、”食べ物は絶対に残さない”こと。無駄に捨てられている食材のあまりの多さに悲しくなります。割り箸かマイ箸かという以前の問題です。

それから、食事の前には『いただきます』を小さな声でもいいから言いたいですね。『いただきます』は『あなたの命をいただきます』ということ。私たち人間は命あるものしか食べることができないのですから」

profile

恒藤克彦(つねふじかつひこ)

株式会社エコレカ研究所代表、環境プランニング学会事務局長。環境問題に関して幅広い知識を有し、製造業における環境配慮活動を実践している。環境プランナーER、公害防止管理者(主任・大気1種・水質1種)、エコアクション21審査人。