一握りしかいない1億円プレーヤー。彼らの目線や行動は、どこがどう異なるのか。たとえば、「効率より効果を考える」がその1つ。「手段より目的」といいかえてもいい。とてつもなく稼ぐ人間の共通項を、「学びの習慣」を切り口に探ったところ、意外にもシンプルな「真理」が浮かび上がってきた。

■目的意識をもっているか、価値観は明確か

いつ何時、会社に頼らない生き方を求められても焦らないようにと、語学や資格を身につけておこうと考えるビジネスパーソンは多いようです。従来から人気の英会話やMBAだけでなく、最近は経済成長が著しい中国が話題になることも多いことから、「これからは中国の時代だ」と中国語を習い始める人も増えているといいます。

しかし、語学や資格を身につけたからといって、必ずしもそれで稼げるわけではありません。中国語を勉強しても、ビジネスやプライベートで使わない限り、語学学校や教材への不要な支払いだけがかさむという結果にもなりかねません。風潮に流されて流行りの資格や学歴を欲しがるなど、目的のはっきりしない勉強は何の役にも立ちません。

一方で「稼ぐ人」は、勉強や資格は単なる手段であり、人生や仕事の目的に応じて選ぶものであることをわかっています。自分は何のために勉強するのか、どのような人生を生きたいのかという目的や価値観を明確にしたうえで、自分の強みを伸ばすための勉強に集中するのです。

人生における目的意識の高さは、「人生の残り時間」に対する認識の強さに比例すると私は思っています。

いうまでもなく私たちの人生は無限ではなく、いつかは終わりを迎える有限なものです。そのことを強く認識し、その有限な人生で何をなしたいのかを真剣に考える人だけが、「稼ぐ人」になることができます。

そこで私が部下やセミナーの参加者に勧めているのが、人生の残り時間を意識した「人生企画書シート」をつくることです。自分にはあとどれくらいの時間が残されているのかを確認し、「死ぬ日」から逆算して自分が何をすべきかを考えてみるのです。

たとえば、私は今年で44歳。80歳で死ぬとして、残り時間はあと36年、時間にして約31万5000時間です。こうやって時間単位で出してみると、もはや無駄に時間を費やせないという思いが強くなります。何事もむやみに手を出すのではなく、やるべきことの優先順位とデッドラインを決めて取り組まなくてはならないことにも気づきます。

時間は誰にでも与えられた平等な資源です。それをどのように活用して成果に結びつけるかは、限りある人生への自覚と、目的意識をもてるかどうかで決まるのです。

■継続する力があるか、損切りはできるか

「稼ぐ人」に共通する最も特徴的なことを1つ挙げるとすれば、コツコツと我慢強く継続する力です。こう書くと、「なんだ、そんなことか」と思う読者もいるかもしれませんが、継続することは意外に難しく、また継続できない人は、まずもって成功しません。

なぜ継続する力が大切なのでしょうか。

「稼ぐ人」も「稼げない人」も、社会人になったばかりの頃は同じスタートラインに立ちます。誰も初めから自分が何に向いているのか、自分の強みが何なのかを自覚しているわけではありません。1人前にできることなど何1つない状態ですから、会社から与えられる仕事を愚直にやり続けるしかありません。

ところが、コツコツとやり続けていくと、いずれブレークスルーする瞬間が訪れます。仕事に関する知識や経験が積み重なるにつれ、仕事の勘所やおもしろさに気づいて、自分なりに工夫できるようになる。周りから実績を評価されることで、自信にもつながります。

とはいえ、ブレークするまでの道のりは長く苦しいものです。なかなか成果が出ないと、「こんな仕事に何の意味があるのか」と迷いが生ずることもあるでしょう。もっと楽な道があるのではと、ほかに目移りすることもあるかもしれません。けれども考えてもみてください。

マリナーズのイチロー選手が、「自分はなぜ野球をやっているのだろう」などと考えていたら、あれだけのヒットは打てないはずです。迷う暇があったら、目の前の仕事に全力を尽くす。誰もがそうやって続けていくうちに、自分の強みに気づき、強みを伸ばしていくのです。

どんなことでも、一流になるまでには最低でも10年は必要だといいます。逆にいえば、10年間コツコツと続ければ、誰でも一流になれる可能性はあるということです。地道な継続の末にブレークスルーを経験できるかどうかが、「稼ぐ人」と「稼げない人」の分かれ目だといえるでしょう。

ただし1つ注意したいのは、継続と固執は違うということです。継続することは大切ですが、自分の方向性が間違っていたり、やってきたことが失敗だったとしたら、その状況に固執するのは賢明ではありません。冷静に状況を見極めて方向転換する柔軟さが必要です。そのような場合にも、前項で述べたような目的意識がしっかりしていれば、「ここで損をしても方向転換すべき」という適切な判断ができるはずです。

■集中して取り組んでいるか、将来性はあるか

守備範囲は広いけれども平凡な成績の人と、ある特定の分野で社内ナンバーワンの人とでは、後者のほうが高い評価を得るのがビジネスの世界です。「稼ぐ人」には何かしら「得意分野」があり、その得意分野に一貫して時間と労力を投資することで、誰にも負けないくらい深い知識とノウハウをもっています。

大手保険会社に勤務後、ファイナンシャル・プランナーとして独立したある女性経営者もそんな1人です。彼女は顧客ターゲットを医師に絞ることで、大きな成功を収めました。顧客を医師に絞ったのは、資産保有額の高い医師が優良顧客であることのほかに、多忙な医師に代わって資産管理を行うニーズが必ずあると考えたからです。顧客を絞り込んだ彼女の狙いは的中しました。

加えて彼女の戦略が優れていたのは、成功したあとも拡大路線を取ることなく、自分の強みに特化したビジネスを続けたことです。従来からの既存顧客を大切にすることで、質の高いサービスを提供し続け、顧客からの高い支持と安定した収益を得ています。医師専門という自分の強みに絞り込むことで、得意分野をさらに深掘りし、稼ぎ続ける仕組みへと深化させていったのです。

こうした一貫性を支えるのは、目的を超えた「使命感」といってもいいかもしれません。目的とは、たとえば彼女の場合、「医師専門のファイナンシャル・プランナーとして国内ナンバーワンを目指す」というものかもしれません。

ファイナンシャル・プランナーとして成功することで、自分の人生をより豊かにすることも立派な目的といえるでしょう。一方で使命感とは、「誰かを幸せにするためにこの商品を売る」「自分の能力を社会に役立てたい」といった思想的なものです。「自分はどう生きるか」の価値観にも深くかかわってきます。

使命感にもとづく仕事や勉強は、継続性や実現性において多大な威力を発揮します。多少の失敗や挫折に遭ったとしても、「誰かのため」という使命感があれば、簡単にあきらめることはありません。また、周囲を巻き込んだり協力を仰ぎたい場合にも、使命感にもとづく仕事や勉強であれば理解も得やすいでしょう。使命感があればこそ、ブレずに、やるべきことに集中できるのです。

■コストパフォーマンスを考えているか

コストパフォーマンスとは、「投資したお金と時間に対して、どれくらいの成果を生むことができたか」という費用対効果です。仕事であれ勉強であれ日常のあらゆる行動は数値化され、分析されることでコストパフォーマンスの向上が図られていきます。

ところが「稼げない人」には、自分の行動を数値化して分析するという習慣がありません。たとえば、アフター5は英語を勉強すると決めていたのに、思うように進んでいないとします。自分の行動を数値化して分析する習慣がない人は、毎日をただなんとなく過ごしてしまうので、「稼ぐ人」との差はますます広がっていきます。

コストパフォーマンスを改善するためには、現実を直視することから始めなくてはなりません。そこで私が勧めるのは、自分の日常生活を細大もらさず書き出してみることです。家計簿とともに、1日の時間を何にどれだけ使ったのかを記す「時間簿」もつけてみるとよいでしょう。次に、その記録をもとに時間とお金の使い方を客観的に分析します。

もしかすると英語の勉強が進まないのは、会社帰りに無駄な飲み会が多く、勉強に十分な時間を割いていないからかもしれません。あるいは、ハギレ時間を工夫すれば、まとまった時間を捻出できることがわかるかもしれません。数値を通して現実を分析することで、改善の糸口が見えてきます。

普段の時間やお金の使い方が分析できたら、今度は、それらをどのように使えばコストパフォーマンスが上がるかを考えます。その際に意識したいのが、「予算思考」ではなく「投資思考」で考えることです。予算思考とは、財布の中身を気にしながらお金を使うこと、つまり節約して貯めることに重点を置く考え方です。小金は貯まるかもしれませんが、大きなリターンを得ることはありません。

一方の「投資思考」は、「稼ぐ人」に多く見られる思考パターンで、貯めるよりも「何に使うか」を常に考えます。プロフェッショナルな知識や技を身につけるためには身銭を切ったり、人との縁をつなぐためには会食費も惜しみません。

生きたお金の使い方をすることで、より大きなチャンスにつなげることができる。「稼ぐ人」になるには、ときには思い切った投資も必要です。

(オフィシャル代表取締役 江上 治 構成=前田はるみ)