安倍晋三首相の「アベノミクス」に、日銀の黒田東彦総裁による「黒田バズーカ」が日本経済を活気づけていると言われている。ところが、これら「アベクロバブル」は遠からず終わりを迎えると大前研一氏は断じる。その理由とは?

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 安倍首相が根本的に理解していないのは、日本経済の低迷は構造的な問題である、ということだ。

 この20年間の日本の直接投資残高を見ると、対外投資(日本企業による海外への直接投資)は急増しているが、対内投資(海外の企業による日本への直接投資)はほとんど増えず、2011年末時点で対外投資(約9650億ドル)が対内投資(約2260億ドル)の4.3倍に達している。つまり、日本企業が海外投資を拡大する一方で、海外からは全く投資(すなわち雇用)を呼び込めていないのである。

 ところが、欧米先進国やNIEs(新興工業経済地域)を見ると、大半の国は対外投資と対内投資のバランスがとれている。隣に中国や東欧といった巨大な投資対象がある台湾やドイツなどを除くと、いずれも海外に対するのと同規模の投資を呼び込んでおり、シンガポールや香港では対内投資が対外投資を上回っている。どの国も対外投資を進めると同時に対内投資にも注力して海外から投資を呼び込んでいるのだ。

 企業が海外に出て行っているのに海外から投資を呼び込めていない日本は、当然ながら国内の産業が空洞化し、雇用は流出するばかりで創出されていない。

 実際、国内就業人口は1990年代後半から減少し、近年は6300万人前後になっている。これも主要国では日本だけである。他の国は製造業の就業者数が減っても、それ以上に非製造業の就業者数を増やしている。対内投資がなくて雇用が減っている異常な国・日本の景気が良くなるわけがないだろう。

※週刊ポスト2013年5月24日号