化粧品編

写真拡大

業界トレンドNEWS

化粧品編

■ 消費者ニーズは低価格品と高付加価値品に二極化。国内市場の深耕と、新興国市場への展開が成長の鍵に

経済産業省の「生産動態統計」によると、2012年における化粧品の国内出荷額は1兆4034億円。リーマン・ショック前の07年(1兆5107億円)に比べ、7.1パーセント縮小した。化粧品は日用品としての要素が強く、比較的安定した業界とされるが、人口減少などによって国内市場は縮小傾向だ。また、07年に580円だった製品1個あたりの単価は、12年には517円にまで下落した。特に目に付くのは、従来ボリュームゾーンだった「中価格帯(2000〜5000円程度)」の化粧品の売れ行きが鈍くなっていること。消費者のニーズは、2000円以下の低価格品と、5000円以上の高付加価値品に二極化しつつある。

 

低価格品がターゲットにしているのは若者層だ。主にドラッグストアやコンビニなどの販売チャネルで販売されており、スキンケアなど特定の機能に特化して低価格を実現。また、「すべてのメイクをお湯で洗い落とせる下地」など、新しい化粧習慣を提案する商品が各社から発売され、需要の拡大に寄与している。なお、この価格帯には異業種からの参入も活発。例えば、医薬品メーカーであるロート製薬は、「肌研(ハダラボ)」ブランドでヒット商品を生み出している。

 

一方の高付加価値品は、百貨店や専門店などに販売員を置き、きめ細かなカウンセリングをしながら販売するのが特徴。この分野で特に注目を集めているのが、加齢対策を目的として作られた化粧品だ。うるおいを与え、肌にツヤとハリを出すことが主なコンセプト。ここ数年、購買力の大きな中高年女性から人気を集めており、今後、さらに成長することが予測されている。なお、この分野でも異業種からの参入がある。例えば、富士フイルムの「アスタリフト」は、その代表格だ。

 

各化粧品メーカーは、生き残りをかけて新商品を投入。シェア拡大に努めている。しかし、国内市場は右肩下がりである上に、新規参入企業が増えて競争は激化。将来有望な販売チャネルとしてネット販売が期待を集めているが、現在のところ、既存のチャネルを脅かすほどではない。そこで各社は、海外市場への進出に力を注いでいる。特に目立つのが、アジアを中心とする新興国での取り組み。08年に起きたリーマン・ショック後、化粧品の輸出額は一時落ち込んだが、10年以降は再び増加。12年は中国における反日デモの影響でマイナス成長となったものの、海外進出は今後も加速する見通しだ。例えば資生堂は、すでに海外売上比率が40パーセントを突破。11年から始まった中期経営計画でも、グローバル化をさらに進める方針を打ち出した。また、ポーラ・オルビス ホールディングスは「長期ビジョン」の中で、20年までに海外売上比率を20パーセント以上に引き上げることを目標としている。

 

こうした動きに伴い、グローバル体制の構築に向けた構造改革も盛んになっている。各社は、国内の開発・生産拠点を再編成したり、海外拠点を強化する取り組みを強化したりすることに注力しているところだ。また、グローバル人材の育成も、各社にとって大きな焦点となるだろう。

 

■ 押さえておこう <化粧品の輸出額は、長い目で見ると増加傾向にある>

2007年
1101億円(対前年比10.8パーセント増)
2008年
1181億円(対前年比7.2パーセント増)
2009年
1148億円(対前年比2.8パーセント減)
2010年
1347億円(対前年比17.3パーセント増)
2011年
1370億円(対前年比1.6パーセント増)
2012年
1325億円(対前年比3.2パーセント減)

※財務省「貿易統計」から化粧品の輸出額を抜粋。12年の輸出額は07年に比べて2割以上伸びている。

 

■ このニュースだけは要チェック <海外展開に関連した動きが活発>

・資生堂が、15年3月に鎌倉工場を閉鎖すると発表。同工場で生産している製品は、掛川工場、大阪工場と、増強予定のベトナム工場に振り分ける。サプライチェーンをグローバルな規模で改革し、競争力を高めるのが狙いとみられる。(2013年1月31日)

 

・コーセーが、インドの医薬品メーカーであるエルダー社と合弁会社を設立することで合意したと発表。付加価値の高い化粧品づくりと技術力が強みのコーセーは、インドで強力な販売網を持つエルダー社と提携することで、現地での浸透を目指している。(2013年3月6日)

 

■ この業界とも深いつながりが<販売チャネルとの結びつきが強い>

百貨店
利益率の高い高価格帯商品を販売するためには、重要なチャネル

ドラッグストア
低価格品の販売チャネルとして重要な役割を果たしている

コンビニ
低価格品を中心に売り上げが増加。今後、存在感が増しそうだ

 


■ この業界の指南役

日本総合研究所 研究員 千葉岳洋氏

 

一橋大学社会学部社会問題・政策課程卒業。専門は、国際会計、経営管理・グループ経営改革、グローバルマーケティング、グローバルサプライチェーンマネジメント。製造業を中心として、グローバルを共通テーマに、マーケティング・会計・業務改革などを幅広く手がける。米国公認会計士。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか