勝利で語る王者の背中(Photo by Chris CondonPGA TOUR)

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“第5のメジャー”プレーヤーズ選手権を制したのはタイガー・ウッズだった。今季4勝目、通算78勝目を挙げ、サム・スニードの史上最多勝利数82にあと4つと迫ったことは言うまでもなく驚異的だが、それ以外に、今大会でのタイガーの勝利には3つの大きな意義があった。
タイガー・ウッズ、準メジャーで今季4勝目!ツアー通算78勝
まず1つはマスターズで付いてしまった悪いイメージを見事に払拭したことだ。マスターズでドロップ処置を誤り、翌日になってルール違反に問われながら2打罰のみで失格を免れた出来事は、最終決定はマスターズ委員会が出したものではあったが、「タイガーはルールを正しく理解していなかった」「確認作業を怠った」「自ら失格を申し出なかった」など、タイガー自身に対するさまざまな批判の声も巻き起こし、ゴルフ界の王者にグレーな影を落とした。
マスターズ後、初の試合出場となった今大会で見事に勝利を飾ったことで、タイガーは周囲から上がっていたあれやこれやの声を封じ込め、「やっぱりすごい」の一言に変えてしまった。勝てば官軍。勝負の世界は、そういうものなのかもしれない。
そして2つ目の意義は、決して得意ではないコースを制したということだ。タイガーに限らず、選手には相性のいいコースや大会というものがあり、同時に相性の悪いコースや大会もある。それはタイガーとて同じで、今季すでに挙げていた3勝は、ファーマーズインシュアランスオープン(トーリーパインズ)、キャデラック選手権(ドラール)、アーノルド・パーマー招待(ベイヒル)と、いずれも得意コースだった。
一方、今大会は過去わずか1勝しか挙げておらず、TPCソーグラスは決して得意コースではなかった。が、今年は初日に初めて60台で回り、4日間すべてにおいて好プレーを披露しながら勝利を掴んだ。不得意コースでも勝ったという事実は、百戦錬磨のタイガーにとっても大きな自信になったはず。その自信は今後のメジャー制覇に対して好影響を与えるはずだ。
そして3つ目の意義は、どんな状況、どんなムードの中でも勝利する姿を世界に示したことだ。
嫌なムードとは、セルヒオ・ガルシアとの確執のこと。3日目の2番ホール(パー5)でガルシアが第2打を打とうとしたとき、タイガーが5番ウッドをバッグから抜いて2オン狙いの姿勢を見せたことでギャラリーが上げた歓喜の声がガルシアのスイングを阻害したとして、「同組の相手が先にショットしようとしている状況をタイガーは気遣うべきだった」とガルシアがタイガーを批判。
タイガーも応酬し、「セルヒオはすべてを正しく把握していない。セルヒオはすでに第2打を打ったとマーシャルから言われたからこそ僕は5番ウッドを抜いた」。雷雨中断後は凍りついた雰囲気中で2人はプレーを続け、最終ラウンドは同組にこそならなかったものの、互いに牽制し合う空気と周囲の注目は胸の中に残っていたはずだ。
「タイガーは一緒にプレーしたい選手ではない。彼はツアーで最もナイスガイなんてもんじゃない。お互い嫌いな間柄だ。僕らは2度と一緒にプレーしないほうがいい」と公言したガルシアは、優勝争いの終盤、浮島グリーンの17番(パー3)で2度も池に落とした末、「7」を叩き、18番でも池に入れて、8位へ転落。「なんだか僕が悪者みたいに思われている感じだ。僕は犠牲者なのに……」と、プレーは振るわなかったのに、口だけは最後の最後まで達者だった。
しかし、ガルシアに対して何も言わずに最終ラウンドに入ったタイガーは、黙々と勝利を目指し、意義ある優勝を達成。表彰式では、最初はあまり晴れやかな表情を見せていなかったが、「世界一のベストプレーヤー」と紹介された途端、頬を緩め、笑顔になった。
優勝会見で今季4勝の快進撃は驚きかと問われると、「驚き?ノー!(未勝利だった間)僕のキャリアはすでに終わりだと多くの人が思っていたことだろう。でも僕は終わらない。常に向上を目指し、実際、年々向上している」きっぱりと、そう言い切ったタイガーに反論できる者は皆無だ。マスターズでのルール違反問題に対しても多くを語らず、最終日はガルシアとの確執に対しても沈黙を守り、優勝の二文字ですべて黙らせる。
勝てば官軍。沈黙は力なり。タイガーの勝利は、そんなフレーズを訴えかけてきた。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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