横浜丸中青果株式会社

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横浜丸中青果株式会社

あんざい・こうすけ●横浜市場センター株式会社(出向) 外販事業部 営業推進第一グループ 主任。2008年入社。明治学院大学法学部卒業。就職活動では、過去の経験を通してやりたい仕事を探そうと考えた。学生時代にスーパーの青果部でアルバイトをしていた経験から現社に興味を持つ。地元である横浜の市場に携われるため、「地域に愛される商品を提供できる」と感じたことが入社の決め手に。

■ 総菜メーカーの担当となり、野菜の調達に奔走! お客さまの要望で新たな商品企画も手がけた

祖父が青果店を営み、幼いころに市場を見学した経験もある安齋さん。学生時代にスーパーの青果部でアルバイトをした際、「自分で手配した商品を、消費者に届けたい」と感じ、地元・横浜の市場に携われる現社に入社した。入社後の研修で市場の見学をした際には、「ここで働くんだ!」というワクワク感を味わったという。
「入社当初はスーパーに商品を卸す仕事ができると思い込んでいました。しかし、僕の配属された部署は、コンビニで販売するサラダや総菜などをつくるメーカーがお客さま。商品をダイレクトに消費者に届ける仕事ではないため、最初はがっかりしましたが、『みんながコンビニで手に取るサラダや総菜の材料を手がけている』と知り、スケールの大きさを再確認しました」

 

入社1年目は先輩の補佐をし、がむしゃらに仕事を覚えていった。お客さまであるメーカーの発注をオンラインシステムで受け、データを確認した後に仕入れ部署に商品の発注をかける。そして翌日に到着した商品の品質をチェックし、配送手配まで手がける仕事だ。
「会社の事務所は市場内にあり、エレベーターを降りればすぐに市場です。現場に下りて野菜をチェックし、品質が良くないものを発見したらそこからが大変! 野菜は工業製品と違い、日によって品質の良し悪しがありますし、特に、レタスなどの葉ものは外側の葉が枯れやすいんですよ。大量生産を行うメーカーにとっては、扱いに手間がかかるものはNG。外側の葉をむけば中身に問題がなくても、すべて返品になってしまうケースもありました」

 

商品に問題があれば、すぐに代替えの商品を手配しなくてはならない。仕入れ先の農協に片っ端から電話を入れ、それでも調達できない場合は、ほかの卸業者を頼ったり、市場から直接集めたりしなくてはならないのだという。
「入社1年目は、取引したことのある仕入れ先もまだ少ない状態でした。先輩に仕入れ先を教えてもらい、何件も電話をかけ、すべてダメだと言われてしまったことも。市場で調達しようとしても、相場の状況に左右されて仕入れ値が高騰する可能性もありますし、ほかの卸業者に頼めばそのぶん仕入れ値も高くなる。予算内におさめなければ赤字になってしまうので、半日かけて駆けずり回り、自ら車を走らせてメーカーまで届けることもありました」

 

一方、安齋さんは毎朝、市場に出向いて、野菜の産地や時期ごとの品質の変化などを学ぶ努力も重ねた。
「アルバイト時代には、産地のことなど気にもしていませんでしたが、同じ品目の野菜でも、季節に応じて産地が切り替わるもの。1年の中でどう産地が切り替わり、時期によってどう品質が変化するかという知識まで身につけなければ、とても商談などできない。まだまだ勉強が足りないと感じ、自分の目で確認することを大切にするため、できるだけ市場に出向くよう心がけました」

 

入社2年目の夏、安齋さんは冷やし中華のメーカー担当を任されることになる。最初の商談に出かけた時は、緊張でいっぱいだったという。
「1人で行ってこいと言われ、車で向かう道中はずっとドキドキで(笑)。それでも、先輩に同行した時のことを思い出しながら、手探りで話を進めていきましたね。最初の商談は、冷やし中華に必要なきゅうり、トマト、ネギなどの見積もりを見せ、お客さまの許可を取るという商談でしたが、毎日100ケースから200ケースも取り扱うため、気を引き締めていきました」

 

毎週1回の商談を重ね、2〜3カ月後には仕入れ先の産地の提案なども行うようになっていく。そしてある時、メーカー側から「“なめこそば”をつくりたいけれども、市場に流通しているような小さなパックではなく、大きな袋単位で発注できないか」という相談を受けることに。
「市場にはない商品なので、産地と直接やりとりするしかないと思い、早速、引き受けてくれそうな農協を探しました。何度も電話で産地とのやりとりを重ね、サンプルの作製を依頼。お客さまの容器に対する要望なども聞きながら改善し、ようやく商品化に結びつけることができました。新しい商品の企画・提案に携われたことをうれしく思いましたが、半面、自分1人の力ではなく、上司にずいぶん助けてもらったので、『自分はまだまだだな』と実感しましたよ」

 

やがて、商談や提案を重ねるうち、お客さまが自分宛てに電話で相談してくれるようになり、信頼される喜びを感じるようになったという。
「『こんな相談がある』『こんなことで困っている』と真っ先に電話してきてくれるので、担当として認めてもらえているんだという手応えを感じられるようになりました。仕事のやりがいが少しずつわかりはじめた時期でしたね」

 

翌日の出荷に向けて、仕入れた野菜を手に取って状態をチェック。問題があるときは、仕入れ部署の担当者に使えない旨を伝えた後、代替えの商品を探すために奔走する。また、量販店バイヤーと一緒に現場を歩いて商品や市場状況を説明することもある。

■ 独自の発想で新規開拓に成功! 念願の量販店担当となり、合計110店舗に野菜を卸すやりがいを実感

入社2年目の終わりごろ、部署全体の売り上げを伸ばす目標が掲げられ、「一人ひとりが新規顧客を開拓するように」という通達が。
「どんな方法でもいいとのことでしたが、飛び込み営業をしたこともないし、そもそも新規開拓の営業方法がわからず、『どうすればいいんだろう』と考え込みました。そこで、思いついた方法が、外食企業のホームページを片っ端からチェックし、問い合わせメールで自社についてのアピール文を送るというものでした。何件も送り続けた結果、運良く2件の返事があり、商談に持ち込むことができたんです。自分のメールに反応してくれたことが、すごくうれしかったですね」

 

返事をくれたのは、和食チェーンとラーメンチェーン。最初のアポイントでは、自社について上手にアピールできず、同席した部長にフォローしてもらってようやく商談成立に結びつけられたという。
「上司に『商談では、まず自社の説明ができるようにしておけ』と言われ、自分はできると思っていたんですが、実際には緊張でスラスラと話すこともできなかった。営業の難しさを実感しましたね。商談成立後は、取り扱う品目の選定や価格の決定から、配送や納品方法などの物流、お客さまの発注システムをこちらの受注システムと連動させる仕組みまで、一から組み立てていきました。既存の配送ルートと組み合わせ、コストを抑える方法を考えたり、受注システムの連動について社内のシステム部に開発をお願いするなど、今まで経験したことのない仕事に携わる面白さを実感! 3カ月もの準備期間がかかりましたが、大きな達成感を得ることができました」

 

この出来事をきっかけに、安齋さんは同じ部署内の外食担当チームに異動することになる。居酒屋やレストランのチェーン、テーマパークのレストラン事業部などを担当すると同時に、新規開拓も手がけていくことになった。
「自分で新しい顧客をつかんだ経験で、大きな自信がつきましたね。それまでは『最後は上司が何とかしてくれる』という甘えがありましたが、『自分がつかんだ以上、自分のお客さまなんだ』という強い責任感が芽生え、何事においても自分から積極的に動くように。担当チェーン以外の飲食店の視察も自ら行い、外食産業の流行を取り入れたメニューにからめて新しい野菜も提案。自分の視野が広がり、いろんな角度から提案していける面白さを感じるようになりました」

 

そして入社4年目、安齋さんはスーパーなどの量販店をお客さまとする営業推進一グループに異動することとなる。神奈川県内の量販店チェーンを担当し、合計110店舗に商品を卸し、多ければ数千ケースもの野菜を扱うこともあるという。
「これまでとスケール感が違い、大量の商品を動かすやりがいがありますし、入社当初からやりたかった仕事なのですごくうれしかったです。ところが、1カ月ごとに取引商品の価格を決めるメーカーや外食チェーンとは違い、量販店の場合は毎日価格を決めていかねばならない難しさがあった。日々の相場に左右されながら、大量の商品を調達していく大変さがありますし、競合他社との価格競争は厳しく、また、『この仕入れ値で大丈夫だろう』と想定していても社内の仕入れ担当から無理だと言われるときもある。お客さまはもちろん、社内とも交渉しながら、その間をつないでいく難しい仕事だと感じます」

 

また、変動する相場の中、商品が安くなった瞬間を狙って大量に買い付け、特売用のスポット商品として売り込む仕事も並行していくため、自分自身の相場感覚も試されるという。
「前日に50円だったものが、翌日には30円になることもありますから、それを買い付けてどう売り込むかを考えます。春は葉もの、初夏には薬味となるような野菜など、季節によって売れるものは違いますし、相場の先を見据えて、翌週にはどの産地のどの商品が安くなりそうかを予測することも大事。産地の担当者と密に連絡を取ったり、市場に出て状況を確認するなど、常に情報収集をしています」

 

入社4年目の夏には、ほうれん草が市場から消える事態が発生し、100ケースもの注文に応えようと奔走したこともあった。しかし、「だからこそ、この仕事は面白い」と安齋さんは語る。
「あの時は、仕入れ先の農協との付き合いも親密になっていたので、『何とかお願いします!』と頼み込んで、どうにか都合してもらえました。日ごろから、商品が余ってしまってどうしようもないと困っていたら、なるべく買い上げて量販店に卸すなど、信頼を積み重ねてきたからこそ、事態を収拾できたと思います。相場が一定じゃない野菜を扱うことには、大変さも難しさもつきまといますが、だからこそ、日々に変化があり、ドラマがある! 時に奔走したり、喜んでもらったり、助けられたり、そんなさまざまな出来事を経験できることが、この仕事の醍醐味(だいごみ)ですね。今後の目標は、『お客さまから必要とされる人間となること』。取引先としっかり連携しながら、消費者にいいものを届けていく。そんな野菜のプロフェッショナルを目指して頑張りたいと思います」

 

受注データを見ながら、仕入れ部署に発注をかける。取り扱い総量は、通常でも数百ケース、セール時などは数千ケースにものぼり、多ければ50品目を扱う。それぞれの野菜の相場チェックも毎日欠かさない。

安齋さんのキャリアステップ

STEP1 2008年4月 研修時代(入社1年目)

入社後、本社にて一週間の座学研修を受け、ビジネスマナーなどを学んだ。その後、横浜市中央卸売市場 本場と南部市場のそれぞれの現場にて、営業担当者の仕事を手伝いながら全体の流れを学んだ。「幼いころに鎌倉の小さな市場を訪れたことがありましたが、運び込まれる荷物の量が予想以上に多くてびっくり。値段交渉などのやりとりをする声で活気にあふれる現場を見て、ワクワクしました!」

STEP2 2008年 営業推進二グループ・業務加工チーム時代(入社1年目)

コンビニ向けの総菜商品をつくるメーカーを担当する部署に配属。配属当初は、オンラインの発注表を見間違い、1行ずつずれた内容のまま仕入れ部署に発注をかけるという大失敗も経験。「注文商品が届かない」「頼んでいない商品が届いた」などのクレームの嵐に真っ青になったという。「自分1人ではどうにもできず、上司や先輩も巻き込んで、新たに商品を用意して届けに行きました。以来、細かなチェックにも注意を払い、先輩にも一度チェックしてもらうなどの体制を取るようになりましたね」。配属1カ月後に、コンビニチェーンに向けたバナナの受発注も任せてもらえることに。バナナダイエットがブームとなった時期で、大量の発注を受けたものの、市場からはバナナが消えている状態だった。商品を探して走り回ったがどうにもならず、発注をセーブしてもらえるようにお願いしたという。また、入社2年目で冷やし中華のメーカーを担当した際には、「ネギの緑色の部分が枯れているからすべて返品にして」と言われ、必死で事態を収拾したことも。「1年目で場数を踏んでいたこともあり、自分の判断で商品をすべてそろえることができました。いつのまにか成長していたんだなと感じましたね」。

STEP3 2010年 営業推進二グループ・外食チーム時代(入社3年目)

居酒屋チェーンなどの外食企業を担当。自ら外食する機会を増やして飲食店の視察を続け、「どういう野菜を使っているんだろう」「こんなメニューがはやっているのか」などの気づきを提案に生かすことに。バーニャカウダが流行していた時期には、担当企業に「三浦半島の野菜を生のまま食べるバーニャカウダ」のメニューを提案したことも。最終的には採用にはならなかったが、さまざまな提案ができる仕事の面白さに気づくことができた。

STEP4 2011年 営業推進一グループ・スーパー担当時代(入社4年目)

入社4年目の春以降、グループ会社の横浜市場センター株式会社に出向(組織変更に伴い、所属グループ全体で出向)。安齋さんは神奈川県内の量販店チェーンの主担当に。全店で110店舗あるため、扱う商品の品目も総量も大幅に増えた。量販店バイヤーとは毎日電話でやりとりし、直接会う定期商談も週に1度行う。また、チーム内のメンバーの補佐も同時に行っている。「上司と一緒に産地に出向いて、野菜について直接教えてもらうこともあります。これまで、長野や茨城のレタス産地、栃木のいちご産地などを視察しました。まだ知らない品種もありますし、どんな環境でどう育つのかを直接知ることができ、勉強になりますね。ただ仕入れて売るだけでなく、生産者の気持ちを考えられるようになったと感じます。この仕事をするようになってから野菜の見方が変わりましたね! 今後、珍しい野菜の提案なども手がけ、いろんな品種を世の中に紹介していきたいです」。

 


■ ある日のスケジュール

6:30 出社。発注した商品の入荷確認など、事務作業を行う。
7:30 市場に出て、入荷品目や相場などの市場状況を確認。翌日の売り込み品目の選定も行う。
9:00 事務所に戻り、現場で確認した市場状況をもとに販売価格を変更。その後、量販店バイヤーに翌日に販売するスポット商品の売り込み電話で提案をした後、見積もりを作成。翌日販売分の発注書も作成し、各量販店にメール送信。
12:00 ランチタイム。事務所で同僚と弁当を食べる。
13:00 午前中に送信した発注書の返信を確認し、発注システムに入力。
15:00 量販店よりオンライン発注を受ける。これをもとに、社内仕入れ担当部署に向けた受発注業務を行う。その後、各量販店バイヤーに電話し、午前中に提案したスポット商品に対する発注結果の確認も行う。
16:00 各量販店からの最終受注処理を行い、その後、18時半ごろに退社。

プライベート

 

同期とは非常に仲が良く、月に一度は集まって飲むそう。また、お互いの誕生日をみんなで祝うことが恒例行事に。それぞれが違う部署にいるため、ヨコのつながりがあり、仕事について相談し合うこともあるという。

ペットのうさぎ、“とんすけ”。実家暮らしのため、母親が世話をしているが、帰宅後にかわいがることで癒やされるそう。
「野菜を食べさせる時、旬のものは食べるのに、季節を過ぎたものは食べないんですよ。そういうところも面白いんですよね(笑)」。

ロックが大好きで、月に1〜2回はライブに足を運んでいる。最近行ったのは、the GazettE(ガゼット)のライブ。
「小さなホールでのライブの方が好きですね。同じジャンルが好きな友人と一緒に出かけています。CDもよく買いますよ」。

 

 

取材・文/上野真理子 撮影/刑部友康