ジブリ新作『風立ちぬ』主役声優にエヴァ監督 庵野氏 - 役者にはない存在感

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宮崎駿監督手がける、7月20日公開のスタジオジブリ最新作『風立ちぬ』の主人公・堀越二郎の声優に人気アニメ『ヱヴァンゲリヲン』シリーズで知られる庵野秀明監督が抜てきされ、主人公声優に初挑戦することが明らかになった。両監督のタッグは『風の谷のナウシカ』以来、約30年ぶり。

宮崎監督は、主人公に”1:早口である 2:滑舌がよい 3:凛としている”の3つをイメージしており、適任者を探し会議を重ねる中で、同じくスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーより庵野氏の名前が候補に挙げられたという。1984年公開の『風の谷のナウシカ』で巨神兵シーンを描いて以来、宮崎監督を師と仰ぐ庵野氏は、声優と聞き「最初から断ることはできない」とオーディションへの参加を決意。そして、実際に声を聞いた宮崎監督から満面の笑みで「やって」と直々の依頼があり、自身初の主人公声優に挑戦することになった。

庵野氏はある日突然、鈴木プロデユーサーより「二郎の声をやってほしい」と電話で告げられ「まぁ無理だろう」と思っていたのものの「無理とはいえ宮さん(宮崎駿監督)から是非にということでしたし、まずはオーディションをして本当にいけるかどうか確認してみようということになりました」とひとまずオファーを受け、オーディションに臨んだという。オーディション直後には、宮崎監督がしばらく見たことのないような満面の笑みで「やって」と一言。庵野氏は「”これはやるしかないんだろうな”と思ったのが正直なところです。できるかどうかは別にして、やれることはやりますけれど、そこまでです、ということで引き受けました。ダメだったときは、僕を選んだ鈴木さんと宮さんが悪いんです(笑)」とはにかみながら、オファー時の様子を振り返っている。

そして、スタジオジブリにて4月中旬から始まったアフレコ収録の序盤では、庵野氏が「難しい」を連発。通常は離れたブースで指示を出す宮崎監督がスタジオに降り、庵野氏の真後ろから声をかける形でアフレコはスタートした。宮崎監督から「うまくやろうとしなくていい。いい声だからでなく、存在感で選んだのだからそれを出さなくてはならない」とのアドバイスがあり、その一言を聞いた庵野氏は外国語や声を張るシーン等にも果敢に取り組み、人を背負うシーンでは実際に手を後ろに回して声を出すなど、体も動かしながら調子をつかんでいった。また同じセリフを、リズムを変えて何度も繰り返しながら「この練習部分も(録音を)回しておいてくださいね」とお願いし、「今の中で使えるものがあると思います」と自らOKを出すなど、日ごろは演出をつける”監督”らしい発言も随所に飛び出し、宮崎監督は「監督が二人いるみたいでややこしいな」と笑みを浮かべる一幕も。

そのほか宮崎監督からは、主人公の半生を描くゆえに年齢が変化していく様子を「まずは20代、語尾を上げ、明るく高い声で」、二郎が冷静にみんなを諭すシーンでは「三船敏郎のように」という注文も。庵野氏は、4日間に渡ったアフレコ収録を通じ”二郎”という役どころをつかんだようで、ヒロインとの愛をささやくシーンにいたっては現場に居合わせた全員が息をのむほどの完成度の高さを見せての一発OK。宮崎監督の満足の笑みが光る現場だったという。

アフレコ収録を通して庵野氏は「主役は初めてなので、シーンが多すぎてどこも大変だなあという印象です。もともと宮さんにオーディションで言われたのが『寡黙な男でセリフはそんなにないから』ということで。それを信じて引き受けたのですが、絵コンテ見たらびっくりですよ。ずっとしゃべりっぱなしだし、歌はあるわ、フランス語もドイツ語もあるわで、完全にだまされた!」と主人公声優という大役の重さをひしひしと感じている様子。役作りに関しては、素人ということで意図的に行わず「素のままぶつけて宮崎さんが気に入ればいいし、違えば直していこうと思っていました。役柄についてはあまり説明がなく、注文もそんなにありませんでした」と話している。