5月から三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行のメガバンク3行は、住宅ローンを引き上げた。固定型では、最も借り入れるユーザーが多い10年固定型ローン金利(最優遇金利)が、4月は1.35%だったが、それを0.05%引き上げて1.4%になる。

 メガバンクの10年固定型の過去最低金利は、昨年12月の1.3%だった。それが今年1月に1.35%となり、しばらく横ばいの動きが続いていたが、4月にスタートした日銀による異次元の金融緩和を受けて、逆に上昇に転じてしまった。日銀の黒田東彦新総裁は、市場金利を引き下げ、個人の住宅購入や企業の設備投資を後押しすることを目的として、強力な金融緩和を実施したわけだが、それが裏目に出た格好となった。なぜ、このような状態となったのか?

 住宅ローンの金利は、金融市場の動向によって、銀行が毎月決めている。5月の金利が上がった理由は、4月の長期金利が上昇してしまったためだ。10年固定型は10年物長期国債の金利をベースに決められている。10年物長期国債は、4月下旬では0.6%前後の動きが続いていたが、これは、3月下旬の0.5%台と比べると小幅に上昇した水準。その分が、0.05%の引き上げとしてストレートに住宅ローン金利に反映されたといえる。0.05%といえどもバカにはできない。4000万円借り入れれば、初年度の利息は2万円増える。毎年減ってはいくが、30年間払い続ければ大きな違いになる。

 実は、日銀の金融緩和が実施された直後である4月上旬時点では、長期国債の金利は0.4%台で推移していた。そのため、4月上旬段階では、5月の住宅ローン金利は引き下げられるという見通しが有力だった(実際、日本経済新聞でも「住宅ローン金利引き下げも」という観測記事が出ていた)。それが、5月にかけて前述のように長期国債の金利が上昇したことで、金利は引き上げられることになったのだ。

■銀行ごとに10年超の借り入れ期間の金利に差が生じている理由

 しかし、すべての住宅ローン金利が上昇に転じたわけではない。銀行ごとに違いが出ている。例えば、ソニー銀行は、5月から、期間15年以上の固定型を引き下げた。住宅ローンの15年固定型は、0.045%引き下げて1.936%と同行の過去最低水準となった(0.9%優遇適用金利)。変動金利も0.022%引き下げて1.099%となっている。

 メガバンクでも、みずほ銀行は、15年固定型は1.9%、20年固定型は2.1%と据え置いたが(「全期間重視プラン」の最優遇金利)、三菱東京UFJ銀行は、15年固定型は0.05%引き上げて2.05%に、20年固定型は0.1%引き上げて2.65%とした(「ぐんとうれしい住宅ローン」の最優遇金利)。

 ここにきて、10年超の借り入れ期間の金利に差が生じているのは、ひとえに各行の10年を超える長期ゾーンの資金調達および資金運用動向によるものといえる。もともと、住宅ローンの借り入れ需要が薄く、資金の調達手段も限られる期間だけに、マーケットのの厚みが乏しい。日銀の強力な金融緩和を受けて、各行の対応にバラツキが出たものと推測される。10年を超える住宅ローンを検討している人は、要注意だ。

 そして、変動金利や、2年、3年固定型など期間の短い固定型を検討している人は、考え直すことをオススメする(当然、いま変動金利で借りている人、借り換えを検討している人も含む)。その理由は、この先ローン金利は下がったとしても、昨年12月あるいは今年4月並みがせいぜい、だと想定されるからだ。むしろ、1年程度以内に、本格的な上昇に転じてしまう可能性がある。日銀の異次元の金融緩和が継続しても、だ。

 次回、その背景について、詳しく解説したい。

(文/松岡賢治)

マネーライター、ファイナンシャルプランナー/シンクタンク、証券会社のリサーチ部門(債券)を経て、96年に独立。最新刊に『人生を楽しむマネー術』(共編著)。