夫が殺人者と知らずに愛し続けたデボラを演じたウィノナ・ライダー/写真:JUNKO

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『エイジ・オブ・イノセンス 汚れなき情事』(93)、『若草物語』(94)でアカデミー賞にノミネートされ、アンジェリーナ・ジョリーが第72回アカデミー助演女優賞に輝いた『17歳のカルテ』(99)で製作総指揮を務めたウィノナ・ライダーがカムバック!

【写真を見る】新作『The Iceman』で殺人者の妻役に体当たりで挑んだウィノナ・ライダー

アンソニー・ブルーノの原作「氷の処刑人」を映画化した新作『The Iceman』で、マイケル・シャノン扮する実在のコントラクトキラー(マフィアとの契約で働く殺し屋)のリチャード・ ククリンスキの妻で、従順で儚げながらも夫を信じ、愛し続けるデボラに体当たり演技で挑んだウィノナが、同作のインタビューに応じてくれた。

死体を凍らすことからアイスマンと呼ばれたククリンスキは、100人以上を殺して1986年に逮捕されたが、一度家に帰れば妻デボラや子供たちと一緒に日常生活を送る良き家庭人で、デボラは逮捕まで夫のやっていることに気付いていなかったと主張している。

これについて、ウィノナは「実在の人物だけど、私たちがわかっているのは、ククリンスキのインタビューと少しの文献から得た情報だけなの。断片的な情報だけでデボラを演じることは、ある意味、ちょうど良かったわ。マイケルから少し話を聞いたり、夜に家で彼のインタビューを見たりもしたけど、ドキュメンタリーではないし、全部その人物を知って、そのとおりに演じるよりも、監督や脚本から自分なりのデボラを演じられることは、かえって良かったと思っているの」。

「デボラが、夫が殺人に手を染めていたことを知っていたかどうかは別として、私の個人的な意見では、何か危ないことをしていることは、薄々気が付いていたと思っているわ。デボラは家で、たまにククリンスキから暴力も受けていたけど、普段はとても優しいし、何より愛されていたのよ。それに、子育てや毎日の生活に忙しかったし、1970年代のニュージャージーの郊外はお金持ちの集まりだったから、デボラは汚いお金とわかっていても、ある種、そういうリッチで安定した自分の生活が好きで、手放したくなったんだと思う。彼女はちょっとだけ真実に向き合う勇気がなかったのね。弱さを持っている人間を演じるのは、とても面白いわ」と、自らが演じたデボラについて分析している。

当初、この役は『ダークナイト』(08)のマギー・ギレンホールに決まっていたそうだが、スケジュールがずれ込んだことでマギーが妊娠し、ウィノナにこの大役が回ってきたという経緯がある。しかし、アリエル・ブロメン監督が「ある意味、ウィノナでラッキーだった」と語り、マイケル・シャノンが「20年間、スターだった人で、彼女の出演作はたくさん見ているので、夫婦を演じるなんて、最初はとても緊張したんだ。いつも相性が良いとか言われると思うんだけど、初対面で次の日には(映画の中で)結婚していたりするわけだから、何とも言えないよね。でも、ウィノナは、何となく壊れやすくて、守ってあげなくちゃと思わせる何かを醸し出しているから、自然にそういう演技ができた。実際には、とても芯の強い人だと思うけどね」と語るように、背が高く、がっしりしたマギーとは対照的に、黒いスーツを着て、赤いマニキュアをつけた目の前のウィノナは、背も小さくて華奢だ。そして、確かにどこか不安げで危なげで、支えてあげなくては、と思わせる雰囲気を出している。

しかし、実際には、とてもしっかりした意見を持ち合わせているウィノナは、「デボラは被害者なんかじゃないわ。ご主人に守られることが心地良かったのね」と断言。一方で、もし愛する人が殺人者で、自分がそれに気付いたら、妻としてどうするかとの問いには、「私には、夫もいないし子供もいないから想像でしかないけど、殺人者からちゃんと別れられる強さを持ち合わせている人間でありたいとは思っているわ。でも、私は完璧な人間じゃないし、周囲にも、守られている状態が好きで、ご主人の飲酒とか浮気とかで悩んでいながら、シングルマザーになりたくないとか、働きたくないっていう理由で、離婚しない人たちもいるわ。だから難しい問題よね」と答え、まさに弱さと強さを兼ね備えたデボラそのものという感じだった。

ウィノナと言えば、現在、恋人アンバー・ハードとの話題で持ちきりのジョニー・デップが頭に浮かぶ人も多いだろう。実力派女優として知られてきたウィノナも、ジョニーとの婚約を破棄した後は、万引き事件などを起こし「壊れてしまった」感がある。しかし、ここ数年は『スター・トレック』(09)、『ブラック・スワン』(10)、『フランケンウィニー』(12)と順調にキャリアを回復させている。

「私はラッキーだと思うわ。ハリウッドでは女優としての賞味期限があって、それが切れたらそこに居続けることは大変なことなの。ましてや役を選ぶなんて、とても難しいわ。でも、『ブラック・スワン』(10)では、ダーレン・アロノフスキー監督や大ファンのナタリー・ポートマンと共演できたの。あの時は、ナタリーがサポートしてくれて、素晴らしいアンサンブルの作品が出来上がったからね。私は今の自分の人生が好きだし、いただいた役を堅実に演じていきたいわ」と語ってくれたウィノナ。

41歳という年齢を謙虚に受け止め、同作ではベッドシーンで華奢な身体には似合わない巨乳を披露してくれたウィノナの演技への評価は高く、女優として完全復活を果たしたと言えそうだ。

今後は出演作も目白押しで、ジェームズ・フランコと共演する『Homefront』(全米2013年公開予定)、ジェシカ・アルバ、ソフィア・ベルガラ、アントニオ・バンデラスそしてレディ・ガガも出演する『Automata』(全米2014年公開予定)では主役に抜擢されており、女優人生後半戦のさらなる活躍が楽しみだ。【取材・文/NY在住 JUNKO】