一度名刺交換しただけの相手から、アイデアのヒントをもらえることもある。(写真=PIXTA)

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現代文明を生きる私たち。ビジネスにおいて、またプライベートにおいても、「ネットワーク」が大切なことは改めて言うまでもない。

世界を覆うインターネットは、文明を駆動するネットワーク。加えて大切なのが、人と人との結びつき。ソーシャル・メディアが登場する前から、私たちは、さまざまな形で絆を培ってきた。

ネットワークには、お互いに助け合ったり、情報を共有したり、協力して仕事をしたりといった機能がある。さまざまな条件の下で、ネットワークがどのように働くかを解明する研究が、近年注目されている。

ネットワークの意義を解き明かすうえで1つの鍵になるのが、「弱い結びつき」の役割。自分自身のビジネスのチャンスを広げ、プライベートを充実させるためにも、「弱い結びつき」を大切にしたい。

「弱い結びつき」とは、どこかのパーティーで1度会ったことがあるとか、偶然にすれ違ったというような、まだ確固たるものになっていない関係性のことである。

一方、「強い結びつき」とは、家族や親友、会社の同僚、長年通っている趣味のサークルのように、何度も繰り返し会って、お互いによく相手を知り、共感する気持ちも深い関係性のことである。

ネットワークの働きを考えるときに、「強い結びつき」が重要な役割を果たすことはわかりやすい。苦しいときや不安なときは、「強い結びつき」が、自分の挑戦を支える「安全基地」となってくれる。「強い結びつき」の絆は、私たちが生きるうえで欠かせない。

その一方で、顔や名前くらいは知っている、という「弱い結びつき」も、ネットワークの働きを考えるうえで大切な意味を持つ。その理由は、ネットワーク全体の構造を考えるとわかる。

社会の中には、さまざまなグループがある。住んでいる地域や、職種、さまざまな志向性によって、異なるグループが共存している。

みんなが知っているヒット・ソングがなくなってしまった、と言われて久しい。好きな歌、流行っている歌がグループごとに違う。このような状態は、文明の多様性の表れであると同時に、1つの問題でもある。

それぞれのグループの中では、お互いのつながりが強いが、異なるグループ同士になると、ほとんど交流がない。このような状態が続くと、社会全体に広がるような流行が起こりにくいし、新しいアイデアも伝わらない。

「強い結びつき」は、社会の中の同じグループの仲間同士をつなぐものであることが多い。すでに共有されている情報や価値を深めることには役立つが、それ以上の広がりにつながらない傾向もある。

だからこそ、「弱い結びつき」が大切になる。「弱い結びつき」でつながっている相手は、自分が普段活動しているグループとは違うグループにいる人の場合が多い。その人の持っている情報は、自分の世界を広げてくれるだろう。

社会全体に浸透するようなヒットを仕掛けるという視点からも、あるいは、ひとりの人間としての幅を広げるという観点からも、「弱い結びつき」を大切にしたい。

時間に余裕があるときに、自分の「弱い結びつき」の「整理」「棚卸し」をしてみよう。何かの会合で知り合ってそのままになっている、気になる「あの人」に1度連絡をとってみよう。

「弱い結びつき」が橋渡しとなって、あなたの世界が広がり、ヒットのきっかけがつかめるかもしれないのだ。

(茂木 健一郎 写真=PIXTA)