図1/「やらなくていいこと」をはっきりさせる

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どんな仕事でも、つい安請け合いして後悔したことはないだろうか。また、あれもこれもと余計な作業に手を出して、これまた後悔したことは? そんな仕事のムダを撲滅し、究極のできる人になるための秘訣とは。

仕事はチームでするものです。そして組織のリーダーであれば、リーダーにふさわしい重要な仕事に集中しなければなりません。

仕事のおおよそ8割については「やらない」、すなわち人に任せるべきだというのが私の持論です。やらなくてもいい仕事とは、たとえば図1に示した7種類です。誰しも思い当たることがあるのではないでしょうか。

実は私自身、33歳で会社社長だった夫と結婚するまでは、ビジネスとはまるで縁のない生活を送っていました。ところが結婚から間もなく28歳年上の夫が病気で倒れたため、経営の「ケ」の字も知らないまま、突然、夫の会社を3億円の借金ごと引き継ぐことになったのです。

しかし経営の定石などなに1つ知らないのですから、社内は混乱し業績も急降下、私自身も病気で倒れてしまうというどん底に落ちました。

なぜそうなってしまうのだろうと真剣に考えました。そこで思い至ったのが、組織で仕事をするためには「やらない=人に任せる」ことが大事であるという真理です。そのためには「断る」「捨てる」ことも必要です。会社の責任者である私は、そうして捻出した時間を新商品の考案や販路を広げることに注ぎ込み、結果、会社は息を吹き返したのです。

そのうちに、業績好調の秘訣をぜひ教えてほしいという依頼が舞い込んだので、他社のコンサルティングをするという仕事も始めました。また、講演や本の執筆、テレビ出演なども引き受け、あれよあれよという間に、主婦時代には思いもしなかったところへたどり着きました。

■アポの時間設定は自分で主導権を握る

では、どうやったら自分の時間を増やし、本来の仕事に集中することができるのでしょうか。それにはまず、「時間の使い方」を洗い出すことです。

仕事には大きく分けて2種類あります。相手があって自分だけでは動かせない仕事と、自分の裁量で調整できる仕事です。

相手のある仕事は、先方と当方との予定をすり合わせることからはじまります。とくに相手が得意先の場合、この段階で先方の意向を気にしすぎて、自分のペースで予定を立てられないということがままあります。たとえば「次の商談はいつにしますか?」と問われて、「来週ならいつでも結構です」と答えてしまう。これは絶対に避けなければいけません。

一見すると相手を尊重しているようですが、その時点で時間を確定できないということは、「うちとの仕事をさほど重要とは考えていないのではないか」「この人は暇なのではないか」と誤解されるおそれもあるからです。

それ以上に問題なのは、先方に「時間の手綱」を委ねてしまうために、主体的なスケジュールづくりができなくなるということです。もちろん現実には、日程に選択の余地がないこともしばしばです。

しかし、調整が可能なら、時間の手綱は自分で握るようにするべきです。自分のスケジュールに余裕があるように見えても、「火曜日の14時から15時、または水曜日の11時から12時のいずれかでいかがでしょうか?」と提言する。このように、あえて2、3の候補日・候補時間を選び打診するのです。

そうすることで、仕事について真剣に考えているというアピールができますし、当日までに資料整理をしておくなどの目安が立てやすいという利点があります。

もっと大きいのは、時間の手綱を自らが握ることで、相手のある仕事を「自分の裁量で調整できる仕事」に変えることができるということです。

そうなれば、効率的なスケジュールづくりを進めればいい。たとえば週のうち月曜日から水曜日は外出する日、それ以後は社内でミーティングや事務処理をこなす日、などと決めていくのです。

こうして大まかにまとめられれば、仕事の中身は自然と濃密になっていきます。いまの時代は、1人当たりのやるべき仕事が増えていますから、そうしないと間に合わないというのが現実です。

逆にスケジュールの主導権を仕事相手に委ねてしまうと、関連性のある仕事が週のあちこちに飛び石のように散らばります。移動の手間なども加わるため、これでは仕事の密度が薄くなってしまいます。時間の手綱を握らなければいけない、というのはそのためです。

さて、以上の考えにより、仕事を効率的にこなすことができるようになったとします。そのうえで、よくよく考慮すべきなのは「その仕事は本当に自分がやるべきなのか」ということです。

あなたは自分がやるしかないと思い込んでいるかもしれませんが、本当にそうでしょうか。誰かに任せることで、その誰かを育てることができるかもしれません。また、本来なら最優先すべきことを差し置いて、無理に時間を割いてその仕事に充てているとしたら、周囲に迷惑をかけているおそれさえあるのです。そこを見極めることが大事です。

一番よくないのは「忙しいから部下に仕事を頼む」という姿勢です。相手は敏感に「自分はたまたま暇そうに見えるから任されたのか」と思います。これでは部下のモチベーションは上がりません。

そうではなく、「私を成長させようと思って仕事を与えてくれた」と思わせなければいけません。それには「なぜ特定の相手にその仕事を振るのか」についての納得できる理由が必要です。

たとえば「○○さんは学生時代にデザインを専攻していたね。その知識や感覚が生かせると思うから、今度の仕事を担当してほしい」と言うのです。言外には「あなただから任せるんですよ」というメッセージが込められています。

ですから、どんなに小さな組織であっても、リーダーたるものは常にメンバーの個性を把握しておかなければいけません。何が得手で何が苦手か、何を言われると喜ぶかということを、漠然とでいいから日ごろから注意深く見ておくのです。そうしないと、いざ仕事を任せるときに「理由」が出てこなくて困るでしょう。
外部へ仕事を発注するときも同じです。単に「おたくは料金が安いから」だけでなく、「仕事が丁寧で安心できる」と一言添えれば、相手は意気に感じて頑張ってくれるでしょう。人は誰でも「頼りにされる」ことが好きなのです。

経験の浅い部下に仕事を任せるときは、寄り添うようなアドバイスや指導が必要です。私の場合は、仕事を任せるとき、まず最終的な到達地点を具体的にイメージできるよう説明し、納期を定めてスタートダッシュをかけ、次に中間地点で状況把握をするようにしています。腰の重い社員もいますから、中間地点に達しても、ほとんどできていないということもままあります。

そのときには、叱るのではなく「できない理由」を解きほぐして、ゴールまで伴走するように心がけます。できない理由は技量不足のこともあれば、優先順位のつけ方に問題があることも。近ごろ目立つのは、完璧な仕上げを目指すあまり、堂々巡りをしているというケースです。

こういう完璧主義の部下には「100%の出来で持ってこなくてもいいからね」と言うことにしています。プレッシャーを取り除き、気軽にやってもらったほうがうまくいくからです。内心では「7割の完成度でいい」と思っています。

就職難のいま、正社員採用をされるような人は、多くが真面目で優秀です。だからこそ完璧主義に陥り、煮詰まってしまうのですが、緊張を解いてあげると見違えるように実力を発揮します。

■言ってはならない!「やれません」「無理です」

多忙の原因の1つは、仕事の絶対量が多すぎるということです。引き受けなくてすむ仕事なら断ればいいのです。図2に、私自身の「断る基準」を示しておきました。もちろん、断るにしても「どう断るか」がとても大事です。

そもそも仕事の依頼などの場合は、すっぱりと断ることができません。正面切って断ればカドが立つ、すなわち人間関係にひびが入ると考えてしまうからです。たしかに「嫌です」「やれません」とぶっきら棒に言われれば、誰だっていい気持ちはしないでしょう。しかしそれは「断り方」が悪いからであって、「断ること」自体は感情とはあまり関係ありません。

つまり、結果は断ることになっても、最初の応答や結果に至るプロセスがそれほどネガティブでなければ、実は相手に恨まれることなどないのです。

「断るための前提は、断らないこと」

私はこう逆説的に表現しています。最初から「できません」と突き放すのではなく、まずは相手の話をしっかりと聞き、条件を詰めていくなかで妥協点を探っていくのです。それでも無理とわかったときに「今回はできません」となるのです。

とはいえ、絶対にやりたくない仕事やたとえ仕事といえども関わりたくない人もいるはずです。そんなときも、無下に拒絶したりするのではなく、たとえば次のような方便を使うといいでしょう。

「そのお仕事には大変興味があり、挑戦したく思います。しかし私(当社)ではまだまだ力不足で、ご迷惑をおかけすることになると思います」

つまり、相手を立てながら、自分を下げることで断るのです。こういう場合に限らず、人に何かを伝えるときにたいへん役立つキーワード集を図3に示しました。これらの言葉をさりげなく駆使して、図4のように相手の立場を理解しつつ断ることが大事だと思います。肝要なのは、どのような相手とでも「繋がりを完全に遮断する」ような断り方をしてはいけない、ということです。

仕事は常に流動的です。将来どんな事態が起きるかは誰にもわかりません。一度は断った相手に対して、翌週には一転、「ぜひお願いします」と泣きつく可能性だってあるのです。

だから、取り付く島もないような断り方、つまり最初から「やれません」「できません」「無理です」と決めてかかるとか、断る理由として「忙しい」「予算がない」という、相手を一顧だにしないような言葉を使うのは、絶対に慎まなければなりません。そこからは何も生まれず、細い糸のような繋がりも切れてしまうのです。

逆に言うと、そういう「細い糸」を大切にたくさん持ち続けることが成功へのカギだと思います。それこそ、本当の意味で人を大事にするということです。

そのような考えから、私は33歳で経営者になったころ、「仕事は絶対に断りません」と宣言しました。失笑を買うこともありましたが、実際にいろいろな依頼が相次ぎました。

しかし断らないといっても、全部の仕事を引き受けることはできません。そこで「断らずに断る」という技術を磨くことになったのです。

現実に断ってばかりいたら仕事はなくなります。そのとき限りで、次の依頼が来なくなるかもしれません。それを避けるためには、「笑顔で断る」ことができなくてはいけないのです。相手が笑顔になって、「しょうがないな」と思ってくれるような断り方を常に考えていました。

1つわかったことは、人は自分の話をきちんと聞いてくれた人のことは好ましく思うということです。ですから、結果として引き受けるときも断るときも、好意を前提にしたコミュニケーションを絶やしてはならないのです。

一方、すべてを引き受けるのではなく、適切に断ることができれば、むしろ自分の評価を上げることもできるということに気がつきました。理由さえしっかりしていれば、断ったのに「あの人はしっかりしている」と感心されたりするのです。

自分に軸がなく、何でも安請け合いして結局、約束を守らない八方美人型の人よりも、断り方を心得ている人のほうが、相手からの評価もずっと高いということを知っておくべきだと思います。

■成果を上げるには「捨てる」しかない!

効率的に時間を使うには「捨てる」ことも重要です。ポイントは「8割整理・2割整頓」です。

会社再建に奮闘していたころ、私は意識的に「成果を出しつつ輝き続けている人」を観察してみたところ、この人たちは整理整頓が上手だということに気がつきました。「整理」とは捨てること、「整頓」とは残ったものを元の場所に戻すこと。そして、これらの人たちをさらに観察すると、整理整頓の対象は、行動、情報、時間、思考、人間関係の5種類となりました。整理すべきことの比率を求めると、おおよそ8割。つまり彼らは8割を捨てていたのです。

では、何を基準に「捨てる」のでしょうか。私は人からの頼まれごとでパンクしそうになっているときに、「8秒ルール」と呼ぶ自分なりの規則を決めました。

たとえば、仕事に関して必要な情報が入ってきたとき、その情報がMOST(最大限に必要)かMUST(絶対になくては困る)である場合は、瞬時に判別して取り置きます。問題なのは、そこまで重要ではないが、無視はできないというときです。

その場合は、次のような“呪文”を唱えて8秒以内に捨てることにしたのです。

すなわち「アクティブに行動しないと成果は出ない」「抱えているものが多いと行動できない」「アクティブになるには捨てるしかない」……。

最初に手をつけるといいのは、デスクまわりの整理整頓です。そもそも探しものに時間をとられているようでは、ビジネスマンとして失格です。詳細は図5に示しました。必要書類などの収納場所を外出先から電話で明確に指示することができたら理想的です。

情報に関しては、とくに今日、変化のスピードが速いことに留意しなければなりません。情報収集に時間をかけているうちに、更新や改善が進み、場合によっては古い情報は無用になってしまうのです。ですから、メモやファイリング、記事のスクラップなどに時間をかけるのは無駄であると思います。私は最初から8割を捨てるつもりで情報を集めています。

一番難しいのは、人間関係を「捨てる」ことです。先に「細い糸を繋げておけ」と申し上げました。それと矛盾するようですが、仕事上、マイナスになる人間関係なら捨てたほうがいいでしょう。

「マイナスになる」とは、その繋がりを持っているために自分自身の評価が下がってしまうというもの。たとえば、居心地がいい、気心が知れているからという理由でつきあいを続けるのは、プライベートならともかく、こと仕事においては自分の成長を阻害する要因になります。ときに緊張や心労を伴いますが、自分より能力や力量が高い人たちと交わることが成長には欠かせません。ですから、冷たいようですが、慣れ合った関係は仕事においては解消するほうがいい場合があるのです。

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健康プラザコーワ、ドクターユキオフィス代表取締役
臼井由妃
1958年、東京生まれ。結婚後、癌に倒れた夫の後を継ぎ、健康器具販売会社の社長に就任。独自のビジネス手法で年商23億円の優良企業に成長させる。会社経営やコンサルタント・講演業務の傍ら、理学博士号・MBA・行政書士・宅地建物取引主任者などを短期間で取得した。

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(健康プラザコーワ、ドクターユキオフィス代表取締役 臼井由妃 構成=面澤淳市(プレジデント編集部) 撮影=市来朋久、飯田安国)