カンボジア日本人商工会の近藤秀彦会長【撮影/木村文】

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朝日新聞のマニラ支局長などを経て2009年に単身カンボジアに移住、現地のフリーペーパー編集長を務めた木村文記者が、カンボジアの経済成長を阻む問題点についてレポートします。

日系企業はカンボジアとどう向き合っていくのか

「日系企業進出元年」といわれた2011年以来、カンボジアへの進出ブームが続いている。近隣国のミャンマーが民主化路線に転換した際には、「お株を奪われるのでは」との声もあった。しかしフタを開けてみれば、ミャンマーよりもインフラ整備が進み、外資に対する規制もゆるいことなどから、カンボジアは日系企業の進出先として定着しつつある。

 一方で新たな課題も持ち上がっている。なかでも深刻なのは労働問題だ。カンボジア政府は3月末、縫製・製靴業セクターの最低賃金を月61ドル(約6000円)から80ドル(約8000円)へと引き上げた。国内では、この最低賃金引上げを含む労働環境の改善をめぐり、ストライキも多発した。

 日系企業はカンボジアとどう向き合っていくのか。今年4月に新しく就任したカンボジア日本人商工会(会員数134)の近藤秀彦会長(パナソニックカンボジア駐在員事務所長)に聞いた。

最低賃金引上げの及ぼす影響は?

――最低賃金は2000年の45ドルから07年には50ドル、10年には61ドルと上昇しました。今回の引き上げは、日系企業の進出に影響があるとみますか。
 
 カンボジアの最低賃金は、金額的には周辺諸国の最低賃金よりもまだ低く、『安価な労働力』という面では、カンボジアの競争力がすぐに削がれるわけではないと思います。しかし、急激で、度重なる賃上げは、進出しようとしている企業の意欲を抑制し、カンボジアの経済発展を鈍化させる懸念があります。

――今回の最低賃金引上げの背景には、急増する労働争議がありました。カンボジア国内の日系企業でも発生しているのでしょうか。
 
 今現在は平静に戻りましたが、今回の引上げのきっかけのひとつが、ベトナム国境にあるバベット地区での労働争議でした。バベットのあるスバイリエン州はカンボジア国内でも貧しい農業地帯でしたが、ベトナムのホーチミン市に近いことなどから、経済特別区(工業団地)が複数開発され、日系企業も多く進出しました。

 ところがここで、日系以外の外国企業が労働法を守らずに操業したことから争議が発生しました。今年2月には2万人規模の抗議行動にふくらみ、一部は暴徒化するなど治安が悪化。現地の日系企業はそのあおりをうけ、一時は工場の操業を停止せざるを得ない状況にまでなりました。

 バベット地区の日系企業からの相談を受け、私を含むカンボジア日本人商工会の代表が、労働問題を担当する労働省や社会福祉・退役軍人・青少年更正省の大臣らと面会しました。

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