国内金価格が、円安の恩恵を受けて5000円を突破!
FRBの量的緩和策の拡大を背景に上昇していた金市場だが、2月下旬には緩和策拡大への警戒の声が高まり1600ドル割れまで下落。その要因としてFRBが政策を元に戻す出口戦略に大きなリスクが潜んでいるといわれている。


円建ての国内金価格が、円安効果をフルに享受する形で上昇している。一方、ドル建ての国際金価格は低迷が続き、2月下旬には2012年8月以来となる1600ドル割れまで売られた。

価格下落の背景には、米国FRB(連邦準備制度理事会)内部でQE3(量的緩和第3弾)など、現行の量的緩和策の規模縮小、あるいは早期終了を唱える声が高まっていることにある。

これまで金価格は、「ドルのばらまき」によるFRBの量的緩和策のもとで上昇してきた。それはドルの価値を薄め、インフレの可能性を高めるものだった。

米国経済は住宅市場の底打ちなど、ここに来て明るさが戻りつつあり、株価の上昇とともに楽観論も広がってきた。景気回復に確かな道筋が見えたなら、過度の緩和策は将来の災い、すなわちインフレのもとということだろう。だが、懸念されるのはそれだけではない。

過去4年にわたり、日本円で200兆円を超えるドルを新規に印刷し、金融機関の保有する米国債などを買う形で市場にマネーを供給してきたFRBの資産規模は、リーマン・ショック前の3・5倍、3兆ドルもの規模に膨らんでいる。なかでも米国債の保有だけで1兆7400億ドル(約160兆円)だ。

しかも2013年1月から米国債を毎月450億ドル(約4兆円)買い付ける追加策に乗り出し、失業率が6・5%を下回るまで超低金利政策を続けるとしている。達成は早くて来年以降とみられ、その場合、FRBの米国債保有額は年内に2兆2000億ドルにもなる。これは現時点で、米国債の最大の保有国である中国を1兆ドルも上回る規模だ。

景気回復が進み、滞留したカネがうごめき始めるとインフレの芽が出る。それを正常に戻すには保有する米国債を市場で売却し、資金回收を図ることになる。圧倒的保有者のFRBが売るとなれば、誰もが「われ先に」と売りに走るだろう。債券価格が下がると、長期金利は上がり、景気にはマイナス要因となる。

しかも、FRBは長期債の保有に絞って買いを進めてきたため、インフレの可能性が出た場合、急に動けば債券価格が急落し、銀行が含み損を抱えるばかりか、FRB自体も損を出しかねない。つまり、「大きすぎて動けない」わけだ。この事態をFRB内部では恐れる声が高まっている。だが、これは金市場の関心事でもある。



亀井幸一郎(KOICHIRO KAMEI)
マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表

中央大学法学部卒業。山一證券に勤務後、日本初のFP会社MMI、金の国際広報機関WGCを経て独立し、2002年より現職。市場分析、執筆講演など幅広く活躍中。




この記事は「WEBネットマネー2013年5月号」に掲載されたものです。