次に、少子高齢化に向かう日本が抱える問題の解決には移民政策によるしかないのですから、移民政策に対してもう少し前向きに取り組むことが必要ではないかと思います。

3つ目は、現下の激動する国際情勢においてさまざまな事柄を適切に判断すべく、戦後GHQに押し付けられた現行憲法の改正に踏み切るということ、また憲法改正とともに、戦後数年以内につくられたような時代錯誤で生産性上昇の障害となっている法律を根本的に見直すことです。後者の具体例としては、「農地法」や「漁業法」などが挙げられますが、そうした我々の血税をずっと無駄遣いし続けてきた「天下り・わたり」先の根拠法等々、あらゆるものを根本的に見直し、法体系そのものを抜本的に変えていくべきだと思っています。ドイツの財政学者アドルフ・ワグナーの言う「国家経費膨張の原則」(=経済発展とともに政府の活動範囲は拡大し、国家経費は膨張していくという原則)に従って増え続けてきた日本の国家経費は、この「天下り・わたり」システムを裏づける根拠法を切り捨てて修正を加える中で大幅に節減できるのではないかと思います。

安倍総理には、ぜひとも潜在成長率上昇をもたらす前記3点を着実に遂行してもらいたいと思う次第です。

北尾吉孝(きたお・よしたか)
SBIホールディングス代表取締役執行役員社長

1951年、兵庫県生まれ。74年、慶應義塾大学経済学部卒業後、野村證券入社。78年、英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。野村證券で事業法人三部長等を経たのち、95年にソフトバンク入社、常務取締役。99年、ソフトバンク・ファイナンス社長。現在、インターネット総合金融グループを形成するSBIホールディングスの代表取締役執行役員社長。『何のために働くのか』(致知出版社)など著書多数。「face book」にてブログを執筆中。




この記事は「WEBネットマネー2013年5月号」に掲載されたものです。