今年はASEAN各国が選挙イヤー。選挙の後は、再び上昇トレンドへ
このところ新興国の中でも、特に株価が好調なASEAN(東南アジア諸国連合)市場。個人消費とインフラ投資の拡大によって長期上昇トレンドが期待できそうだが、短期的には選挙絡みの調整局面もありそうだ。現地在住の専門家に直撃取材!


公共インフラ投資と中間所得層の拡大が高成長をもたらしている

日本株復活の陰に隠れて忘れられがちだが、ASEAN株の相場もこのところ絶好調だ。インドネシアとフィリピンではインデックスが過去最高値を更新し続けており、タイのSET指数も1997年に発生したアジア通貨危機前の最高値に迫る勢いである。

しかも、各国市場の平均PER(株価収益率)は13〜18倍台と、過熱とはいえない水準だ。今後も上昇は続くのだろうか?「長期的には上昇トレンドが継続する可能性が高いと思います。ただし、短期的には政治的リスクによる調整も起こりうるので注意が必要です」と語るのはマレーシアでASEAN市場をウオッチしているフィリップキャピタルマネジメント(マレーシア)の潘力克さん。



ASEANの国々では今年から来年にかけて総選挙や大統領選挙などがめじろ押し。直近では今年上半期中にマレーシアで総選挙が、5月13日にはフィリピンで中間選挙が、来年はインドネシアで大統領選挙が実施される予定だ。「特にマレーシアでは、2年前から解散・総選挙が噂されながら現政権が先延ばししてきたせいで、好調なタイ株やインドネシア株とは対照的にマレーシア株相場は低調に推移してきました。しかし、議会は今年で任期満了となるため、早ければ上半期中に総選挙が行なわれるのは確実です。選挙前後は一時的に株価が調整する可能性がありますが、その後は政局不安の重しが取れて、マレーシア株も再び上昇トレンドに乗るのではないでしょうか」(潘さん)

フィリピンについても、5月の中間選挙の影響で最高値更新の勢いが一時的にそがれる可能性はあるが、ファンダメンタルズ自体は好調なので長期的には上昇トレンドの持続が期待できそうだという。「マレーシアやフィリピンのほか、インドネシア、タイなど、ASEAN諸国の中でもある程度経済成長が進んだ国国は、大型の公共インフラ投資を積極的に行なっており、長期的な高成長要因のひとつとなっています」と潘さん。

これらの国々がインフラ建設に力を入れているのは、ASEANの中でもまだ成長が遅れている国々の追い上げに対抗するためだという。「ベトナムやカンボジア、ミャンマーなどの成長が遅れている国々は、低賃金を武器に外資導入を進めています。中位クラスの国々は賃金では勝ち目がないので、道路や鉄道、港湾などのインフラを整えることで外資を呼び込もうとしているのです」

経済発展に伴う中間所得層の増加も、公共投資の拡大と並んでASEAN経済の成長を支えている要因だ。

そのASEAN全体の成長の恩恵が受けられるという点ではシンガポールにも注目したいと潘さんは指摘する。「シンガポールの企業は、世界中の国々でビジネスを展開しています。シンガポールのインデックス自体はそれほど上がっていませんが、個別の企業を見ると、ASEANでビジネスを展開している企業ほど大きな株価の上昇が見込めると思います」

「中間所得層の増加」というキーワードから、潘さんが注目するのは以下の3銘柄。いずれも株価や業績は好調で、将来性も高いそうだ。

マレーシア・ビルディング・ソサエティー
主にマレーシアの公務員向けに住宅ローンを提供している金融機関。

所得が保障されている公務員の毎月の給与からローン返済額を自動的に天引きする仕組みを採用しており、貸し倒れリスクとほとんど無縁であることが強み。

マレーシアでは国民の約10人に1人が公務員であり、市場規模が大きいことや、経済成長とともにマイホーム需要が拡大の一途をたどっていることなどがプラス材料。直近の株価はインデックスを大きくアウトパフォームしている。配当利回りが高いことも魅力。

スーパーグループ
シンガポールに本社を置く大手食品メーカー。インスタント麺、インスタント飲料の製造・販売が主力で、ASEAN各国に製品を輸出している。

中間所得層が増加の一途をたどっているASEANでは、コーヒーの消費量が増えているが、レギュラーコーヒーよりも価格が安く手軽なインスタントコーヒーの人気が高く、同社の製品はASEAN全域で愛されている。今後、ミャンマーやカンボジア、ベトナムなど経済成長が遅れている国々の個人所得が向上すれば、新たな需要が生み出される期待が大きい。

ピュアゴールド・プライス・クラブ
フィリピンでスーパーマーケットやハイパーマーケットを展開する小売り大手。

全国35都市と33市町村に計145店を持ち、2013年には181店に拡大する計画。積極的な出店攻勢で急成長を遂げている。

同社の店舗は、食品中心の品ぞろえをしていることが強み。フィリピンのように中間所得層が拡大し始めている経済発展段階では、ぜいたく品よりも食料や日用品の消費が大きく伸びる傾向があり、その恩恵を受けやすい。2012年は2ケタ増収・増益を達成するなど業績好調だ。

※株価、指標は2013年4月8日現在。為替は1リンギット=約32円、1シンガポールドル=約79円、1フィリピンペソ=2.39円

潘力克(Phua Lee Kerk)
フィリップキャピタルマネジメント(マレーシア) チーフストラテジスト

スミス・バーニー(現ソロモン・スミス・バーニー)、ベアリング証券(現ING ベアリング)、ビッカーズバラースなどの著名金融機関の日本、シンガポール、マレーシアオフィスで23 年間にも及ぶ勤務経験がある金融のスペシャリスト。世界銀行、ユネスコ、国連工業開発機関など、国内外の会議やセミナーにも出席している。



この記事は「WEBネットマネー2013年6月号」に掲載されたものです。