その?時〞に備えてどんな対策手段があるのか(後編)
いざ相続となってから多額の納税額に困らないために、今からできることはたくさんある。本誌編集部員Mに、プロが対策方法を指南!

同じ土地に居住用と事業用の建物が。結果は増税!
CASE-2 佐藤和則さんの場合(仮名、東京・新宿区)
不動産相続額 推定1億3460万円
次は、編集部Mの友人・佐藤和則さんのケース。母と一緒に実家の建築業を経営しているが、その場所がなんと東京都新宿区。305.96?の土地に母が住む母屋と作業場の建物の2軒が建っている。長男の和則さんは作業場の3階に妻と住む。そのほかの相続人には結婚した長女がおり、嫁ぎ先には持ち家がある。このケースで最大の注目点は建物が2軒あること。長男がすべて相続した場合、現行では約286?の土地が「小規模宅地等の特例」の対象となる。土地全体は特例の対象にならないが、基礎控除が7000万円あるため相続税はゼロになる。ただし、改正後は「小規模宅地等の特例」の対象面積が拡大し、土地全体が特例の対象になるものの、基礎控除の減額があるため相続税が発生してしまう。

対策? 「小規模宅地等の特例」が相続税軽減のカギ!
長女が効率的に相続する手だては“家なき子”になること
「小規模宅地等の特例」が相続税軽減のカギを握っているのは佐藤家も同じ。しかし、長男がすべて相続して長女が黙っているわけがない。法定相続割合通りに折半で分けると、持ち家があり小規模宅地等の特例が使えない長女には600万円以上の相続税がもろにかかる。これを避ける対策としては、長女の持ち家を売却して、いわゆる“家なき子”になるのが手っ取り早い。ただし、適用を受けられるのは居住用部分のみ。事業用部分は適用外となる。これに対し、長男は居住用・事業用両方で小規模宅地等の特例を受けられるため、大きなメリットを享受できる。事業用部分は長男が100%相続するように調整するのが望ましい。

「小規模宅地等の特例」だけじゃない!ほかにもこんな手段がある!
対策? 貸付事業用地の利用で評価額が50%減額に!
これまでMが母親と同居するという前提で考えてきたが、同居できない事情があるなら、その土地でアパート経営をする、あるいは母親の住居そのものを賃貸するという方法もある。この場合、Mが土地を相続すれば、その敷地の200?まで評価額が50%減額される。これにより、1億760万円の土地評価額は7567万円に減り、賃貸収入も得られるようになる。

対策? 今からでも遅くはない!生命保険に加入する
土地や預金と違い、生命保険には「500万円×法定相続人数」という非課税枠がある。Mの例で見ると、母親の保険金は300万円。非課税枠は1000万円なので、あと700万円の余裕がある。この場合、よく使われるのが終身保険700万円に一時払いで加入。受取人を姉にして、合計1000万円分を姉に相続してもらうというもの。土地の相続はM、預金と保険を姉が相続する。

対策? 最後の手段!?養子縁組の奥の手で減額!
あまりお勧めできないが、意外と使われる相続対策が相続人の数を増やすこと。具体的にM家でいうと、姉の子(つまり被相続人の孫)を母親と養子縁組させることで、法定相続人を3人に増やす。これで、基礎控除は「3000万円+(600万円×3人)」となり、4200万円から4800万円に増やせる。相続税が発生するかどうかのきわどい場合に有効といえる。ただし、M家の場合、養子による対策は1人までしかできない。

林 裕二(YUJI HAYASHI)
税理士

林税理士事務所代表。CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。東京経済大学経済学部卒業後、都内会計事務所を経て2000年に独立。著書に『税理士が教える決算書からわかる「最強割安株」』(インデックスコミュニケーションズ)など。




この記事は「WEBネットマネー2013年5月号」に掲載されたものです。