クランクアップを迎えた「楽隊のうさぎ」

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吹奏楽に励む中学生たちの姿を瑞々しく描いた中沢けい氏の人気小説を映画化する「楽隊のうさぎ」の撮影現場が5月6日、メインロケ地である静岡・浜松市雄踏文化センターで報道陣に公開された。主人公の両親役を演じる鈴木砂羽と井浦新が見守るなか、吹奏楽部顧問役・宮崎将による指揮のもと、総勢31人の吹奏楽部員らが渾身の生演奏に挑み、クライマックスとなるコンクールシーンの撮影でクランクアップを迎えた。

2000年に刊行された原作は、新潮文庫の100冊や夏の課題図書に選定されるなど、中高生を中心に愛読されている。引っ込み思案の中学生・奥田克久が、吹奏楽部に入部したことで音楽の魅力に引き込まれ、先輩や同級生らと切磋琢磨しながら心身ともに成長していく姿を描き出す。

物語の舞台となる浜松のミニシアター「シネマ・イーラ」が中心となり、主人公の克久役をはじめ、吹奏楽部のメンバーら中学生キャストを地元のオーディションで選出するなど、市民参加型で製作されている。クランクアップを迎えたこの日は、約400人のエキストラがホールの客席を埋めつくす緊迫した空気のなか、吹奏楽部員役の面々が映画オリジナル楽曲の生演奏を披露した。

「私は猫ストーカー」「ゲゲゲの女房」で知られる鈴木卓爾監督は、浜松近くの磐田出身で「10代の頃は映画を見るために浜松まで電車に乗って行っていた。音楽は小学校の頃からダメな方で、浜松はその頃の自分の記憶が重なる町。吹奏楽が盛んな浜松を舞台に、今の時代を生きている中学生たちにも見てもらえるような映画を作りたいというのがモチベーションになっている」と語った。中学生たちの成長を描くため、昨夏の現場から10カ月ぶりの撮影となったが「みんな内側も外側も、ものすごく成長している。克久は身長が10〜15センチくらい伸びたんじゃないか。画がつながるかどうか分からない(笑)。他の部員たちもいわゆる部活の音じゃない、そういうところまで仕上がってる」と驚きの表情。中学生役のほとんどが演技経験のない子どもたちだが、「できるだけ生の姿を撮りたいなと思った。健気に生きる、ひたむきに生きるということ。そんな風に映画のカメラが彼らをちゃんと映せていて、皆さんに見てもらった時にはね返って響いてくるはず」と手応えを感じていた。

克久の母親・百合子役を演じる鈴木は、「キツキツに縛るのではなく、子どもの意思を尊重する自由で優しいお母さんという印象。実生活は母ではないので、息子をもつ母の気持ちを想像しながら演じ、目の前で成長していく姿を見るのはとても幸せなことだと思った」。父親・久夫役の井浦は、「昨日クランクインして初めて克久に会った。久夫の仕事は1〜2カ月くらい家を空けることもある設定なので、なかなか会う時間がない中で息子の成長をどんどん感じる。そういう関係なので、初めましてが昨日というほどよい緊張感を生かしながら、息子の笑顔を作っていくようなちょうどよい距離感を大切にしたい」と語った。

現場を見学した中沢氏は、自著の映画化に「ちょっとドキドキしている。吹奏楽部は架空のものだったけど、このホールに来て“演奏会”という看板が立ってるのを見て、本当にやるんだって。現場は生き生きとしていて、撮影を見ていると引き込まれる。自分の作品を映画化される感じがしなくて、それが見ていてとても面白い。非常に不思議」と話した。

「楽隊のうさぎ」は今冬、東京・渋谷のユーロスペースほか全国で公開。

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