店の訪問とは別に店長に激励や褒め電話をよくする。10人とか15人とかまとめて集中的に架電する。きちんと一覧表にして架電するごとにチェックしているのだが、どうもチェックが甘いらしい。一度電話した店長に次の日にまた掛けて一字一句同じ内容の話をしたらしい。店長からGMに伝わって僕に伝わった。全く記憶になかったので、その時は社長伝説の捏造だと思って歯牙にもかけなかった。

ところが、ところが客観的に逃れられない状況が出来した。IRのときのハイヤーのなかで事件は起こった。アテンドしてくれた証券マンと弊社役員と僕がタクシーに同乗していた。時間に余裕があったので店長へ激励の電話。チェックリストを見ながら架電。今日は調子よく繋がる。続けざまに3件繋がったので気分を高揚させながら次の店へ。また繋がった。今日はほんとによく繋がる。早口で激励して満足気に電話を切って煙草に火を。

―今日も元気だ。煙草が旨いー
 
「社長の都市伝説は本当だったんですね」
「何が」
「今の電話5分前にもしていましたよ」
「そんなことないよ。ちゃんとチェックしてるし。ほら」
 
チェックリストには架電済の証しである×印がしっかり付けられていた。
「おかしいと思ったんですよね」
証券マン。ハイヤーの運転手も不埒にも笑っていた。

ban_kaicho1

■プロフィール■ 

菊地敬一
ヴィレッジヴァンガード創業者。

1948年北海道生まれ。
賞罰共になし。
原付免許、普通自動車免許、珠算検定6級 保持。
犯歴前科共になし。

大学卒業後、書店勤めを経て、39歳で独立。
名古屋で、遊べる本屋『ヴィレッジヴァンガード』を創業。
独自のセレクトとPOP、ディスプレイで
「変な本屋or雑貨屋」としての地位を確立し,
396店舗を展開するに至る。