出世レースに敗れた。モチベーションをどう保つべきか −超訳「人間キリスト」の言葉【3】

聖書は古の書物ではなく、私たちの生活にも優れた示唆を与えてくれる……。大ベストセラー『超訳 ニーチェの言葉』の著者が、職場や家庭でのビジネスマンの尽きぬ悩みに、独自解釈した聖書の言葉で応える。

モチベーションには2種類ある。自分の内側から湧き出てくるモチベーションと、外側から与えられるモチベーションである。仕事が楽しいとか面白いというのは内的なモチベーションで、これは長続きするので仕事を成功に導きやすい。

しかし、鼻先にニンジンをぶら下げるような外的なモチベーションは長続きしない。もっとたくさんのニンジンが欲しい、もっと美味しいニンジンが食べたい、とエスカレートしていくから、どこかで壁に突き当たったり、失敗する。

出世競争は組織という枠組みでの他者との競争である。「出世競争に勝ちたい」というのは外から与えられたモチベーションでしかない。誰かに勝ちたい、人を負かしたいと思ったら、必ず失敗する。勝つこともあるかもしれないが、いつか誰かに負かされるのである。

出世にこだわる「頑なな心」を捨て、内的なモチベーションを見出さなければ、先々、いい仕事をするのは難しいだろう。

旧約聖書のエレミア書は、紀元前6〜5世紀に活躍した預言者エレミアの著作を集めたもの。ユダ王国の堕落と滅亡を体験したエレミアは、預言を伝えるために活発に活動したが、誰にも受け入れられず、迫害を受けてばかりいた。エレミアの預言の正しさが実証されたのは、彼の死後のことだった。

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聖書の言葉

主のために割礼をせよ。
割礼とは、性器の包皮を
切り取ることではない。
おまえの心を固く包んでいる
皮を切り去ることだ。
いつまでも神に向かわない
おまえの頑なな心を
包んでいるものを切り捨てよ。

エレミアの書 第4章

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■職場の人間関係がうまくいっていない。
上司・部下とどう接すればいいか

組織も1つの体と同じである。それぞれに役割がある。誰かの役割を軽んじることはできない。そう思えば、役割に軽重があるとは考えなくなるだろう。

組織内の人間関係においては、それぞれの役割の重要性を理解して相手を重んじること。そして相手の瑣末なクセや性癖にとらわれることなく、組織として一体となれるよう、つながりをはかっていかなければならない。

上司や部下とどう接するべきか。新約聖書の「ローマ人への手紙」にこんな言葉がある。

「どんな人に対しても、悪に悪を返さぬように。悪を受けても善を返してあげるように」(ローマ人への手紙 第12章)「もうやめなさい、互いに裁くのは」(ローマ人への手紙 第14章)

怒りは一切を破壊する。正確な批判ではなく、そこに相手への侮蔑が一滴でも含まれていれば、数十年の友情でさえ破壊されてしまう。

なぜ怒るのかといえば、「相手が悪い」という判断を下してしまうからだ。

しかし、果たして相手こそ悪いと裁いていいのだろうか。自分が相手のすべてを知っていて、神のように裁く権利があると思っていいのだろうか。

相手に対して感情的に悪を返すだけならば、状況は悪化する一方である。必要なのは、相手も自分も今の状態から、よりいい方向に変わることだ。そのための一手は、自分から進んで優しさを与えることである。

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聖書の言葉

体には頭、手、足、それぞれの
ものがある。それぞれが
ばらばらなのではなく、
それらすべてで1つの体となる。
だから、頭が足に向かって、
あるいは手が尻に向かって、
おまえが必要ではないと
言うことなどできない。
弱い部分、劣っているように
見える部分こそ体にとって必要なのだ。
そして、体には切れ目などない。
みな緊密につながっている。
それゆえに体は1つなのだ。

コリント人への第一の手紙 第12章

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※フェデリコ・バルバロ訳『聖書』に準拠

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作家 白取春彦
青森県青森市生まれ。ベルリン自由大学で哲学・宗教・文学を学ぶ。哲学と宗教に関する解説書の明快さには定評がある。著書に『超訳聖書の言葉』『超訳 ニーチェの言葉』『この一冊で「聖書」がわかる!』などがある。

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(作家 白取春彦 小川 剛=構成 小原孝博=撮影)