いくらノンビリ屋といっても、夫は内心これをどう思っているのだろう。本音では男のプライドがいたく傷つき、情けないような気持ちになっているのではないか。D子としては彼の人柄に惹かれて結婚したわけだから、夫が薄給であることに不満はなく、足りない生活費を自分が支出することにも異論はない。好きな仕事を自由にやらせてもらっているのだから満足だ。

現在のD子はたまに夫と外出しても、必要な代金を自分の財布から出すことが多い。

その結果か、夫はこのところ以前にも増して無欲になってきた。飲食店に入ってもあまり食べ物や飲み物を自分から注文せず、デパートに買い物に行っても、「俺は特に欲しい物がないから大丈夫」と関心を示さない。二人の貯金で購入した車も、気づくとD子ばかりが使用しており、夫が自分の用事で乗ることなどほとんどない。二人の貯金で車を買ったというのは、夫のプライドに配慮したD子の方便であり、本当はD子の貯金で買ったことに夫は気づいているのか。だからこそ、遠慮しているのか。

D子は自分の収入で二人の生活を支えれば支えるほど、財布は痛まずとも胸が痛むようになってきた。共働きの夫婦は、収入のバランスが重要なのだろう。妻が夫よりも高収入の場合、厄介なのは男のプライドかもしれない。そして、妻がそれを必要以上に気にしてしまう場合もある。

現在、D子は夫の本音を知りたくて、悶々とする日々を送っているという。