出版業界が陥る
プリズナーズ・ジレンマ(囚人のジレンマ)

 2006年夏に9年と11ヵ月勤めていたアクセンチュアを辞め、ボストンコンサルティンググループ入社以来、19年半の経営戦略コンサルタント生活に別れを告げました。爾来、7年。14冊の本(と2本のDVD)を世に出すことができました。今年はこの4月27日に出た『経営戦略全史』のほかに、5月14日発売予定の『親と子の「伝える技術」』が控えているので、2009年以降は毎年3冊のペースです。

 まさか、こんなに本を書くことになろうとは、まったく思ってはいませんでしたし、最近は娘にも「お父さん、あんなにイロイロ書いて、ネタ尽きないの?」と心配してもらってもいます(笑)。

 でも出版業界全体をみると、本はもっともっと溢れています。こんなに出版不況なのに、いや、不況だからこそ出版社は過去、市場縮小に対抗すべく、企業努力として出版点数を増やし続けてきました。結果として、書籍の新刊点数はここ十年強で1万点も伸び、2012年には年間7万8000点を数えました。

 しかし、書店は毎日200点もの新刊書籍を捌き切れるわけもなく、一部のベストセラーを除けば、本が店頭に列ぶ期間はどんどん短くなっています。書店員は嘆きます。「出版社も本を乱造しないで、もっとじっくり絞り込んでつくってくれればいいのに」。

 でも、出版社側にそんなことができるわけもありません。自社だけが絞り込んでも、他社が出し続ければ同じことですし、出したうちのどれが当たるかなんて自分たちにだって読めないのですから。これこそ典型的なプリズナーズ・ジレンマ(囚人のジレンマ)です。出版社みんなで協調して絞り込んだほうがいいとわかっていても、他の出版社の「裏切り」が怖くて誰もその最善手を取れず、全員が出版数を増やす最悪の状況に落ち込むという。

 結局、2000年以降これまで、書籍の単価は1200円から1100円に落ち、書店からの返品率は40%で高止まり、市場規模は9700億円から8013億円へと激減(*1)しました。

*1 2012年現在の電子書籍市場規模は700億円程度にすぎない(インプレス推定)。

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