【インタビュー】eコマースのかたちを変える最注目の次世代eコマースプラットフォーム『Origami』代表取締役CEO 康井義貴

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取材・文: 編集部 ポートレイト: 三宅英正 英語翻訳: Oilman

 




ファッション業界人からも投資家からも、熱い視線を集める話題騒然の新 e コマースプラットフォーム『Origami (オリガミ)』。『Origami』は SNS 要素をもった e コマースサイト。iPhoneで『Twitter』のように自分が興味をもったブランドやショップをフォローして、気に入った商品をワンタップで購入できるサービスだ。『Origami』はいわゆるソーシャルコマース型のサービスで、『Origami』上で趣味趣向が近い友達をフォローしておけば、その友達が購入した商品や、「いいね!」をした商品情報が、自分のタイムラインにも流れ、思いがけずステキな商品との出会いがある。

すでに、3.1 Philip Lim (3.1フィリップリム)、A BATHING APE ® (ア ベイシング エイプ)、A.P.C (アーペーセー)、BEAMS (ビームス)、CIBONE (シボネ)、CLASKA (クラスカ)、HEAD PORTER (ヘッド ポーター)、HYSTERIC GLAMOUR (ヒステリック グラマー)、MACKINTOSH (マッキントッシュ)、Marni eyewear (マルニ アイウェア)、MoMA DESIGN STORE (モマ・デザイン・ストア)、NARS (ナーズ)、rag & bone (ラグ&ボーン)、SASQUATCHfabrix. (サスクワッチファブリックス)、THE NORTH FACE (ザ・ノース・フェイス)、VANQUISH (ヴァンキッシュ)、White Mountaineering (ホワイトマウンテニアリング)、代官山蔦屋書店、森美術館、吉田カバンなど、名立たるブランド、ショップ、アート・ギャラリーが参加をしている。

 

今回、本サイトではそんな話題のサービス『Origami』を運営する、株式会社Origami の代表取締役 CEO の康井義貴氏にサービスがローンチする2ヶ月前にロングインタビューを敢行していた。まだマンションの一室でエンジニアたちが開発中のコードを打ち込んでいるその横で、『Origami』が描く未来のeコマースについて語ってもらった。

 



- まず、はじめに康井さんのバックグラウンドを教えてください。

カナダのトロントで生まれ、トロントとニューヨークで育ち、11歳のときに日本に帰国しました。それからも日本を拠点としながらシドニーで学んだり、ニューヨークやシリコンバレーで働いたりと、転々としています。もともとこの世界に入ったのは16歳の時にeコマースのビジネスを始めたのがキッカケです。19歳から投資業を始め、当時はプライベート・エクイティ・ファンドで投資分析の仕事をしていました。その後、Lehman Brothers (リーマン・ブラザーズ) で M&Aアドバイザリーの仕事、そして前職が米国、中国、日本の3拠点で投資を行うDoll Capital Management (ドール・キャピタル・マネジメント) というシリコンバレーの大手ベンチャーキャピタルに在籍していました。まだ創業間もないベンチャー企業に億単位の投資をして、経営を支援し、会社を大きくするという仕事です。そして昨年、『Origami』を立ち上げました。

 

- 『Origami』をはじめようと思ったキッカケを教えてください。

先ず、マクロの観点からいうと、いま日本のeコマース市場は約10兆円規模で、年間成長率が10% - 15%くらい伸びていると言われています。ただ、スマートフォンの出現によって約120兆円のオフラインの小売市場とオンラインのeコマース市場の境目が殆どなくなろうとしています。そこがいま、とにかくおもしろく絶好のタイミングなんです。



そして、このスマートフォンの一体何がスゴいかというと、モバイルできるデバイスの中に「消費者」と「ビジネス」が繋がり、オンライン、オフラインの境がなくなったというコトに本質的な革新があります。従来のPC時代の体験をスマートフォンの小さい画面に当て込む「スマホ化」とか「スマホ対応」という言葉が流行っていますが、今後、より本質的なパラダイムシフトが起こります。スマートフォンを使えば、タクシーに乗っていても、道を歩いていていても、商品の購入ができますよね。つまりは、当然、技術的には実店舗にいても、スマートフォンを使って商品の購入ができます。ただ、自分がその場にいるので商品が発送される必要がなく、その場で商品を受け取ることが可能です。つまりモバイルコマースはeコマースの新しい形なだけでなく、今後決済のソリューションにもなっていくわけです。マクロの観点から、モバイルコマースは今後確実にスケールする成長産業ということです。けれど、それに対してソリューションが全然提供されてこなかった。

もう一つは、これまでブランドやショップにとって、非常に限定的な形でeコマースが展開されてきたことです。折角いいプロダクトを扱っているのに安売り競争に晒されて、テクノロジーのベネフィットを得られなかった人たちがすごく多い。やはり素晴らしいプロダクトを扱っているのだから、きちんと顧客とブランド、ショップがリレーションシップを構築できるプラットフォームがあるといい。私が知っている限り、そういったソリューションを提供しているサービスは海外にも数少ないです。

 

 

- 日本のeコマース市場は、現在どのような状況なのでしょうか?

日本では、15年程前にeコマースが始まりました。実は、eコマースの基本的な仕組みは15年経った今も、殆ど変わっていなく、未だに巨大な自動販売機のように商品が陳列されています。先ずサイトにいくと検索ボックスがあり、欲しい物を検索ボックスに打ち込むと、そのキーワードの候補がでてきて、その中で比較・検討して購入するというフローです。なので、欲しいモノが分かっていない人にとって、こうしたサイトにいっても商品を購入するまでの流れが確立されていないのです。インターネット上の買物は、8割の目的買いと、2割のインパルス・ショッピング (衝動買い) で構成されています。一方、実世界では、個人消費のうち、殆どの場合ある特定の商品が欲しくて外に出かけるのでなく、自分の好きなブランド、ショップの好みがあり、さらに自分の好きな場所があり、ショッピングを行っています。8割のインパルス・ショッピングと2割の目的買いで構成されているんです。つまりオンラインとオフラインでは、8/2の購買行動のバランスが逆転してしまっているんです。本質的にテクノロジーというのは実世界の経験をより豊かにするためのツールですが、非常に偏った形でeコマースが展開され続けているのが本市場の現状です。

また、ブランド、ショップの担当者の方も、5年くらい前まではeコマースをやらないスタンスの方が大多数で、それがこの5年で大きく変化しました。さすがにeコマースは重要な戦略です、となってきている。でもブランドがこれまで何をしてきたかというと、ウェブ制作会社にお金を払って自社のeコマースサイトを作ったのはいいのですが、なかなかトラフィックが集まらない。そして、既存の顧客しかサイトにアクセスしてくれない。どうやったら新規顧客開拓、獲得が行えるのかと考え、大手のオンライン・ショッピングモールに参加しようか、と。けれど、ブランドのクオリティーコントロールができないし、プライシング(料金体系)のハードルが高く、また折角の実店舗が全く活かせない。様々な点で、既存のサービスにブランド、ショップの担当者は不満を抱えていることが分かりました。

 

2/3ページ: ユーザーが一日に使える時間というのは限られている中で、『Origami』が選ばれる理由とは?

 



- そこに『Origami』が登場するんですね。

私たちが何をやっているかといいますと、いろんなブランド、ショップに『Origami』上でアカウントをつくっていただき、購入できる商品を登録してもらっています。そしてユーザーの方には自分の好きなブランドをフォローしてもらい、その人だけのネットワークを作ってもらいます。よって、ハイエンド•ブランドが好きな人と、ガジェットが好きな人、コスメが好きな人、それぞれ全く異なる商品情報が自分のタイムラインに流れてくる仕組みになっています。『Twitter』みたいな感覚に近いかもしれません。それぞれユーザーが個々人のネットワークを作り上げていくので、ブランド、ショップにとっては横並びを気にする必要はありません。

例えば、私がブランドAをフォローすると、Aの情報が自分のタイムラインに流れてきて、ワンタップ・ツータップですぐに商品を購入することができます。そして私がAの商品に対して「Like」をタップすると、友達のフィードに私が「Like」した商品が流れます。それはAの観点からすると、私が広告にすり替わって新規顧客開拓をおこなったことになります。もちろん友達もその商品をワンタップ・ツータップで購入することができ、Aをフォローすると、今後その情報が自分のタイムラインに流れてくるようになります。






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そこで『Origami』がユニークなのが「ロケーション(位置情報)」のレイヤーをオーバーラップさせている点です。Aに実店舗があれば、『Origami』の地図上にもAの店舗があり、そこにトラフィックが集まるような設計をしています。私がAの店舗で実際にチェックインをしたり、写真を撮ったりすると、その情報が友達のフィードに流れて、友達がその情報をタップすると『Origami』上のAの店舗ページに飛ぶようになっています。そして、そこに商品が並んでいます。このようにユーザーが作るコンテンツが集客装置になり、店舗のページにユーザーが集まるようになっています。そこに人がたくさん集まると当然商品が売れ始めるので、ブランド、ショップは商品数(SKU)を増やします。すると、実店舗の商品とOrigami上の商品が次第に重複していきます。ここにコマースの未来があります。いままでの e コマースというのは、実店舗は洋服を試着するためだけの場所で、インターネットに戻ってディスカウントで購入するといった状況を生み出してしまいました。テクノロジーが実店舗から顧客を引き離してしまった。『Origami』はその真逆の発想で、いかにテクノロジーを使って実店舗に顧客を集客するか、ということを考えて設計しています。

私たちはあくまでショッピングモールをやるわけではなくて、eコマースのインフラを作っています。登録料や月額費なども一切なく、実際に商品が売れたときにのみコントリビューション・マージンをいただいているので、ブランド、ショップの皆様にとっても、非常に低いエントリー・バリアでスタートできます。ブランド、ショップの登録も https://origami.co/jp/business から、簡単に行えます。安売り競争で勝負するためのインフラではなく、ブランド、ショップと顧客が長期的な関係性を構築していくためのeコマースのインフラをご提供しています。

 

 

- 商品の在庫はどのよう仕組みになっているのかも教えてください。

ブランド、ショップによっていろいろな使い方をしていただきたいと思っています。実店舗の在庫を『Origami』と繋げたいとおっしゃってくださるブランド、ショップもありますし、eコマースの在庫と連携させたいとおっしゃってくださっているブランド、ショップもあります。あるいは今季の春夏コレクションで流行りそうなアイテムだけを掲載することでバイラルを生み、新しい顧客を獲得していくといった使い方をするブランド、ショップもあります。管理画面はみんな同じですが、どういうスケールアップをするかはブランド、ショップの皆様にお任せしています。ブランド、ショップのことを一番理解している人たちは当然ブランド、ショップご本人なので、私たちでこういう使い方をしてください、というお願いをするつもりはありません。それぞれブランド、ショップの戦略にあった使い方があるので、私たちはあくまでインフラとして『Origami』をご提供し、各ブランド、ショップの皆様に最大限にご活用いただければと思います。




 

- さまざまなアプリやサービスが提供されている一方で、ユーザーが一日に使える時間というのは限られています。その中で『Origami』が選ばれる理由とはずばりなんでしょう?

おっしゃる通り、ユーザーの時間というのはまさに取り合いです。例えば、eメールというのはいままで人がコミュニケーションするときのツールとして使われてきましたよね。あらかじめ、ある人に対して情報を発信しようと思って「To」に誰かのメールアドレスを入力して送信する時代がありました。それはいまでもなくなっていませんが、『Facebook』などの出現によってそれがいま変わってきています。最初はeメールだけでコミュニケーションをとっていた人たちも、いまはみんな『Facebook』でコミュニケーションを行っています。なぜかというと、『Facebook』というのは予め自分の好きな友達、関心のあるコミュニティーやブランドとネットワークが繋がっているからです。何か目的があって『Facebook』に行くわけではなく、自分の興味のある空間の中で情報をとりたいと思っているので集まってくるんです。今、eコマースの世界も、同様のシフトが起きようとしています。いままで『楽天』や『Amazon』に行く人というのは、買いたいプロダクトが決まってからサイトに行って、欲しいものを検索して購入していました。しかしこれからeコマースでも、自分の好きな友達や、興味のあるブランド、ショップの情報が一カ所に集まるインフラをまずつくって、その中で欲しいモノを見つけて購入する時代がきます。それが『Origami』なんです。

 

3/3ページ: 「起業家にとって、仕事は、職業ではなくライフスタイルです」

 






- 『Origami』のチーム構成を教えてください

業界のリーダーが集まっています。ビジネス統括のマッキーは、元M&Aの弁護士、レコードレーベルの立ち上げや、ファッションブランドのコンサルティング、INSEAD MBAを取得後、『Origami』に参画。テクノロジー統括の野澤は、幼少期からコーディングを始め、学生時代にIPA主催の未踏ソフトウエア創造事業でスポンサーを受け、ネイキッドテクノロジーを共同創業。一昨年、『mixi (ミクシー)』に会社を売却後、『Origami』に参画しました。その他にも、『LINE (ライン)』の初期メンバーや、シリコンバレーのトップエンジニアを米国より採用しています。要するにプロダクトをスケールした経験がある人材をとにかく集めています。また、日本では高度なデザインができ、かつ、コードもかけるマルチなデザイナーは非常に稀少ですが、投資家時代からずっと気になっていたデザイナーを口説き参画してもらいました。いま、『Origami』には最高のチームが揃っています。結局は、それが一番重要です。

 

 

- 『Origami』の名前の理由は?

Entrepreneurship (起業家精神) の体現です。実は私個人として、起業家育成支援のNPOも取り組んできたのですが、『Origami』は、まさに起業家精神を反映しているんです。はじまりは、常に正方形の一枚の紙きれですが、どんな形にもなっていく。下手な人が折ったらぐちゃぐちゃな形になってしまいますが、ちゃんと技術を持った人が折ったら素晴らしいアートへと変化します。まさにスタートアップの世界も一緒です。初めは創業者の想いからはじまり、そこに集まった人たちやそれぞれの取り組み方によってどんな形にもなっていく。それが哲学的にすごく好きなんです。また「折り紙」は日本語ですが、世界中でその言葉を知らない人はいないんです。世界中どこでも通用する会社にしたいという意味も込めて『Origami』です。

 

 

- 『Origami』はグローバルでも通用するサービスを目指していると思いますが、これまで日本ではなかなかグローバルで認められるサービスが生まれてこなかったという現状があります。それに対して、『Origami』がおこなっていることがあれば教えてください。

言語の問題は当然あります。私たちの社内は全て英語ですが、やはり英語を話せない人が「グローバル」といってもなかなかグローバル化が難しいのが現状です。また、単純にサービスやアプリを作って英語化したから世界で通用するかといったら、そんな簡単な話でもありません。現地にオペレーションチームを作って真面目に両拠点を持ってやっていかないといけない。私たちも米国にチームがありますが、米国のマーケットの方が競争は激しいので、日本のベンチャーが単純にサービスを英語化して戦えるマーケットではありません。いま米国の『Origami』をリードしているスタッフもニューヨーク出身で、元々コロンビア大学博士課程でMBAの学生にコマースやソーシャルネットワークの授業をしており、現地のビジネスを良く理解しています。インターンの学生も、ハーバード大学やコロンビア大学のMBAを集めているのですが、彼らも皆、現地の強いローカルネットワークを持っています。米国流のビジネス展開をして、初めて同じ土俵にたつ。日本のベンチャー企業で、それいったオペレーションを行っているところが少ないのかもしれませんね。

 

 

 

- KDDI、DACが『Origami』のインベスター、 Conde Nast がメディアパートナーに決まっていますね。

そうですね。KDDI社、DAC社に投資家として入っていただいており、まだ具体的には申し上げられないですが、今後さまざまな業務提携を発表していきます。また、Conde Nast 社の『VOGUE JAPAN』、『GQ JAPAN』、『WIRED』等によるエディトリアルコンテンツを提供し、メディアとコマースの新しいカタチのご提案を行います。





 

 

- 最後に、康井さんにとって起業家に求められる素質とは?

起業家にとって、仕事は、職業ではなくライフスタイルです。いい仕事をする一番の方法は好きなことを仕事にすることです。そして、24時間働く。非常にシンプルです。

その中で、CEOにとって大事なコトは大きく3つあると思っています。「人を引っ張る力」と「お金を引っ張る力」と「大きい仕事引っ張る力」。そして何より大事なのが、一番はじめの「人を引っ張る力」です。これは投資家としても同じで、私も色々な成功した会社や失敗した会社を見てきましたが、成功した会社であればあるほど、やっぱりその創業チームがものすごく強いです。投資家としても、特に気をつけて見てきたものが2つあって、1つはマクロマーケット。つまり大きい波に逆らっても絶対に勝てないので、マクロを正しく読んで、その波に乗る形で事業を展開しているかどうかということ。それが前提にあり、その上で一番大事になってくるのがやはりチームです。いかに優秀な人たちを引っ張ってこれるか。ベンチャーの世界は変化が激しく、ビジネスモデルやビジネスドメインですら日々変化していきますが、唯一変わらないものはチームです。いいチームがいる会社というのは本当に爆発力があります。いい人を集めると、いい投資家も集まってきますし、もちろん事業もどんどん展開できます。そこに尽きるかと思います。

 

Origami App Store
URL: https://itunes.apple.com/jp/app/origami/id622474053?mt=8&ign-mpt=uo%3D4

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康井義貴 (やすい・よしき) 株式会社Origami 代表取締役CEO。1985年、トロント生まれ。幼少期をトロント、ニューヨークで過ごす。16歳でeコマースビジネスを立ち上げ、シドニー大学、早稲田大学卒業後、米投資銀行Lehman BrothersでM&Aアドバイザリー業務に従事。その後、シリコンバレーを拠点とするベンチャーキャピタルDCM (Doll Capital Management) にて、日中米スタートアップの投資分析および投資先企業の経営戦略/支援に従事。2012年、Origami創業。