実は胃を傷つけているかも!? 腰痛など「痛み」の正しい対処法は?

写真拡大

季節の変わり目や急激な気温差のある日などに、腰や肩、膝などの痛みを感じる人もいるだろう。痛みが慢性的に続くと仕事や日常生活にも支障を来し、頑張りたい時に身体がついてこないということにも。

そこで、こうした痛みをどう対処すべきか、日本ペインクリニック学会の小川節郎代表理事(日本大学総合科学研究所教授)に伺った。

――そもそも痛みはどのようにして生じるのでしょうか?

小川教授「痛みは『疼痛(とうつう)』と言われることもありますが、大きく分けると3種類あります。『組織の損傷による痛み(侵害受容性疼痛)』、『神経の痛み(神経障害性疼痛)』、そして『心理社会的問題からくる痛み(心因性疼痛)』と言われるものです。慢性疼痛の患者は全国に2,700万人いると考えられており、高齢者のみならず40歳〜50歳代の働き盛りにも多い傾向があります。

ケガによる痛みや膝の痛みなどは「侵害受容性疼痛」と言われもので、筋肉や骨格のように特定の部位が損傷して発生した炎症が原因です。炎症による痛みの発生にはプロスタグランジンという物質が関係していますが、今日よく使用されている痛み止めには、プロスタグランジンを作る酵素を抑制する働きがあります」

――痛み止めにはどのようなものがあるのでしょうか?

小川教授「上記のような『侵害受容性疼痛』に対する痛み止めに関して言えば、腰や頭というような特定部位への痛みに合わせて薬を選ぶという訳ではありません。非ステロイド性抗炎症薬という薬を用いて、痛みの原因である炎症を抑えることが一般的です。

ですが、非ステロイド性抗炎症薬で注意したいことは、胃腸障害リスクが想定されるということです。炎症を引き起こすプロスタグランジンには、胃の粘膜を保護して血流をよくする働きもあります。

プロスタグランジンが減ると胃の粘膜が荒れるため、胃粘膜に傷つき胃潰瘍になったり、胃酸の影響で胃や十二指腸の粘膜が傷つき胃潰瘍や十二指腸潰瘍になったりする場合があります。医療機関で非ステロイド性抗炎症薬を処方された場合、胃薬も一緒に処方されることが多いのはそのためです」

――坂本長逸教授(日本医科大学大学院消火器内科学)らは、2012年12月に発刊された医学雑誌「Alimentary Pharmacology and Therapeutics」において、非ステロイド性抗炎症薬の種類によって胃や十二指腸などへの副作用の程度に差が現れると発表しています(※)

小川教授「この試験で用いられた非ステロイド性抗炎症薬は、比較的副作用が少ないと認識されているものですが、その中でも胃潰瘍などの副作用の程度は異なります。最近の傾向として、消化器系へのリスクが少ないという理由で、セレコキシブを痛み止めとして処方する医師も増えています。胃が弱いと自覚している人は、薬を処方してもらう際に『胃に優しいものがほしい』と伝えるといいでしょう。

ドラックストアなどで購入できる痛み止めもありますが、例えばセレコキシブは医師の処方が必要な薬です。また、痛み止めは実際に使ってみないと、どれが自分の身体に合っているか分からないものです。

自分が今までに体験したことがあるような種類の痛みであれば、使い慣れた薬を服用するでもいいかもしれません。ですが、そうでない痛みや1週間程度薬を服用しても改善しないようであれば、医師に相談することをお勧めします」

痛みの中には痛み止めの作用で症状の悪化に気付かないものもあり、加えて、胃が弱いなどと自分の体質を正しく認識できていない人も多い。慢性疼痛患者の中には、痛みの原因と薬の効能がマッチしておらず、結果、自分には効かない薬を服用しているというも患者も少なくないという。

根本的に痛みを改善するためにも、自分が使っている痛み止めを見直し、専門医にかかることも検討してみるといいだろう。

※試験は40〜74歳の健康なボランティア189人を対象に行い、非ステロイド性抗炎症薬であるロキソプロフェン群(1回60mg、1日3回)とセレコキシブ群(1回100mg、1日2回)を各76人、プラセボ群(偽薬)を37人と3つの群に分け、14日間投与して比較。投与後の胃・十二指腸潰瘍の発生頻度は、ロキソプロフェン群27.6%、セレコキシブ群1.4%、プラセボ群2.7%だった