４月２６日、アメリカ軍制服組トップのデンプシー統合参謀本部議長が来日し、小野寺防衛相と会談。緊迫する北朝鮮情勢に強固な同盟関係で対応することを約束した。

すでにアメリカは、北朝鮮との戦闘を想定した軍事演習を韓国と実施。さらに特定のターゲットを空爆や陸上兵力などでピンポイントに先制攻撃する作戦「サージカル・ストライク」を計画しているとの情報もある。

仮にアメリカが北朝鮮の暴走を危険視し、金王朝を崩壊させるべく先制攻撃を行なった場合、どのような事態が予想されるか。軍事評論家の宇垣大成氏は「中国の出方が重要なポイントになる」という。

「もし米軍が空爆に成功しても、そのすぐ後に中国が介入して北朝鮮軍部を抑え込まない限り、結局は戦争になる可能性が高い。北朝鮮と国境を接する中韓とアメリカの間で、ポスト金正恩体制の“青写真”を明確に描いておかなければなりません」

元時事通信社ワシントン支局長の小関哲哉氏は、関係諸国の思惑を踏まえて次のようなシナリオを予測する。

「金王朝の除去というアメリカの意向を考えると、中国がポスト金正恩の隠し玉として温存している長兄・金正男（キム・ジョンナム）の復権はあり得ないと思います。かといって、中東の『アラブの春』のような無秩序な民主化も、韓国による早急な併合もおそらくないでしょう。中国もロシアも朝鮮半島が統一されてアメリカの同盟国になることを望んでおらず、韓国としても貧しい北朝鮮との早急な統合で大きな負担を抱え込むリスクをためらっているからです」

小関氏が続ける。

「最も可能性が高いのは、北朝鮮が独立国の地位を保ち、一部で騒乱が起きたとしても国連の管理下で民主化を図るという方向です。４月１１日に潘基文（パン・ギムン）国連事務総長がオバマ米大統領と会談した後、ＣＮＮに出演して韓国語で北朝鮮に対話を呼びかけたのも、その伏線だったとみることもできる。統一するかしないかは、半島に住む人たちが国際情勢を見定めて長期的に決めるべき問題でしょう」

だが、たとえ戦争が回避されたとしても、体制が変わった直後は周辺諸国を巻き込んで大きな混乱状態に陥る可能性が高い。元韓国国防省北朝鮮分析官で拓殖大学客員研究員の高永�戞淵灰ΑΕ茱鵐船腑襦忙瓩呂海ν渋�する。

「当分は集団指導体制の過渡期となり、多くの人民が脱北するでしょう。中国に３０万人以上、韓国に約２０万人、そして日本にも１０万人程度の難民が押し寄せると推測します」

これらはあくまでシミュレーションに過ぎない話だが、北朝鮮が挑発行為を止める気配が一向にない以上、「アメリカの先制攻撃→金王朝の崩壊→難民の大量発生」というシナリオは、ますます現実味を帯び始めている。

（取材・文／本誌軍事班［協力／世良光弘　小峯隆生］）

■週刊プレイボーイ１８・１９特大合併号「米軍の金正恩爆殺計画 サージカル・ストライク作戦の全貌」より