TPP(環太平洋経済連携協定)の交渉参加にあたり、日本の農業が破壊されると反対派は主張する。しかし、反対派が本当に守りたいのは日本の農業ではない。

「役所と既得権団体である農協が日本の農業を補助金漬けで支配しているだけ」と話すのは、政策工房社長の原英史氏だ。

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 農協支配から抜け出し、自力で活路を見出す農家が増えれば、TPP交渉参加はむしろチャンスと捉えられる。日本の農産品を輸出していく可能性も広がろう。

 農業コンサルタントとして各地を飛び回る岡本重明氏をはじめ、地力のある農業者にはTPP推進の立場を取る人が少なくない。

 ただ、岡本氏は「日本のおいしいコメなら輸出できるはず。TPP参加で儲かる農業に変わる」といった単純な論法にも批判的だ。むしろいかに付加価値をつけるかが重要であり、そのために「六次産業化」が鍵になるとする。

 例えば、日本のコメは現状では一俵(60kg)あたり1万3000円程度。これを海外のコメと比較して、どこまで競争できる水準に引き下げられるか、というのがTPPの議論ではよく争点になる。

 ところが岡本氏に言わせれば、コメがおにぎりになった途端、価格水準は全く変わる。

 コンビニなどで売っている1個100円程度のおにぎりはコメの量にすると約40g。コメの値段にしたら10円に満たない。具材代が別途かかるにせよ、10円程度で最終商品が作れるとなれば、価格競争力は一気に上がる。

 原材料の状態でそのまま売るだけでは農業者の利益は小さい。加工して付加価値を高めて販売する「六次産業化」が日本の農業の活路となり得るというわけだ。他にも観光農園を作って産地に人を呼び寄せる、産地レストランを作ってその場で調理して提供する……といった試みにも可能性がある。

 最近では農林水産省も「六次産業化」を唱え、補助金制度を色々と用意している。だが、本当に必要なのは補助金ではない。官の干渉をなくし規制を緩和することだ。例えば現在の農地法では、農地の中に加工施設やレストランなどを作ることが制約される。「農地は農業以外に使うな」ということだ。だが現実には荒野と化している耕作放棄地が山ほどある。

 こうした点を正し、知恵を出せば新しいチャレンジができる環境を作らない限り、補助金など役に立たない。

※SAPIO2013年5月号